
余命宣告を受けた家族が直面する現実
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
親や配偶者が余命宣告を受けたとき、家族の立場からどう接すればよいのか、何をすべきなのかという相談を私は数多く受けてきました。
突然の宣告に動揺し、何も考えられない状態になるのは当然のことです。患者さん本人も家族も、この現実を受け入れるには時間が必要です。
私の経験から、余命宣告後の家族の対応について、医療的な面、精神的な面、実務的な面から具体的にお伝えしたいと思います。
余命宣告の根拠を具体的に確認する
まず最初に行うべきことは、余命宣告の根拠を明確に理解することです。
医学的な理由を確認する
命を失うには必ず医学的な理由があります。がんの患者さんがすべて同じ死因であるわけではありません。
部位や進行状況によって予測される経過は異なります。「なぜ、どういう理由で、どういう経過を辿って命を終えることになるのか」を医師に確認することが大事です。
例えば肝臓がんであれば「肝臓の腫瘍が進行して肝機能が障害され、それが高度になると肝不全となる」という理由です。
同じ肺がんでも、肺の進行が著しいことによって呼吸不全となる場合もあれば、転移した脳での進行が早く、脳圧が上がって呼吸不全を起こしたり、臓器への命令がきちんと下されずに臓器不全を起こす場合もあります。
余命宣告の信頼性を見極める
最近は倫理的な観点から、余命の話を積極的にしない風潮があります。正確に言い当てられるわけではないため「曖昧なことは口にしない」という考え方です。
いっぽうで「質問もしていないのに、一方的に余命宣告された」というケースも少なくありません。誰もが余命を知りたいわけではなく「余命の話なんかしてほしくない」と思う人もいるのですが、そのような配慮なく「余命を言いたがる医師」がいるのも事実です。
本当の末期で誰がみても1~3か月という状況ならまだしも、余命1年などかなり先のこと(どう転ぶか分からない状況)でも、言い切ってしまう医師がいます。
余命の算出方法を理解する
医師が余命を算出する際、一般的に用いられるのが「生存期間中央値」です。
これは同じ病気の患者さん群のうち、50%が亡くなるまでの期間を示すものです。例えば、ある治療を受けた患者さん100人を生存期間の短い順に並べたとき、ちょうど50人目の方が亡くなった期間が生存期間中央値となります。
つまり余命はあくまでも統計データを参考にした予測でしかありません。実際の生存日数とのズレが3分の1以内であれば「正しい」とされているほどです。
例えば実際の生存期間が120日だった場合、余命を80日~160日と予測していれば「この余命予測は当たっている」とされます。
セカンドオピニオンを検討する
きちんとした根拠や理由を説明されなかった場合や「なんだかよく分からない。本当かな?」と疑問に思った場合は、セカンドオピニオンを受けるなどして複数の医師の見解を確認することをお勧めします。
セカンドオピニオンを受ける際には、主治医に相談し、紹介状や検査結果のデータを準備してもらう必要があります。ただし、公的医療保険が適用されず全額自己負担となる点には注意が必要です。
医療的な対応をどうするか検討する
がんにおいて医療的な対応は大きく2つに分類されます。
1つ目は、がんに対する治療です。
2つ目は、苦痛を和らげたり症状を緩和したりするための治療です。
がんに対する治療の継続について
いわゆる手術、放射線、化学療法(薬物療法)の3つです。このうち手術と放射線は早期向けの局所治療ですので、実質的には化学療法をやるのか、やらないのかという判断になります。
余命の話が出ているほどですので、体調には様々な問題が起きているはずです。
そのなかで抗がん剤など副作用のある薬を使うと、副作用で起きる症状がプラスされるうえ、すでに感じている辛い症状が増悪する場合が多いです。
体調によっては医師から「この状況では投薬は無理だ」と言われることもあります。
しかし、投薬によって進行を抑えられる可能性というメリットが、体調悪化というデメリットを上回るという見立てになれば、投薬を実施するケースもあります。
判断はがんの部位や進行状況、薬が効く確率、年齢、全体的な体のコンディションなど様々な要素を踏まえて下すことになります。
緩和ケアについて理解する
「苦痛を和らげたり、症状を緩和したりするための治療」はひとことでいえば緩和ケアのことです。
終末期医療のイメージが強いですが、緩和ケアとは末期でも早期でも必要であればやるべき対処です。どんな状況であれ、必要なら(例えば痛みがあって、それを抑えるための鎮痛剤が必要など)実施するというものです。
「緩和ケア=すべてを諦める」みたいな世間的なイメージがありますが、単純に「苦痛を緩和できるならやるべき対処」だという考え方です。
余命宣告をされている状況では、がん治療は流動的ですが、緩和ケアは必要で不可欠な医療行為になります。
入院か在宅介護かの選択
比較的元気である程度日常生活を送れている場合は通院して行うことが可能ですが、そうでない場合は「入院」か「在宅での介護」のいずれかを選ぶことになります。
| 項目 | 入院のメリット・デメリット | 在宅介護のメリット・デメリット |
|---|---|---|
| メリット | 24時間、医療の管理下に身を置くことで、何かあれば必要な対処をすぐにしてもらえます。 | 患者さんの精神面では落ち着きが得られるというよい面があります。いっぽうで「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちを持つ人も多いので、ご本人次第の部分があります。 |
| デメリット | 入院が好きな人、病院の雰囲気が好きな人というのはまずいません。精神的には辛いことです。「なんとか自宅に帰りたい」という人も少なくありません。つまり精神的にはよい方向には向かない、という点がデメリットです。 | 家族の関係性にもよって気持ちの面でどう思うか差がありますが、対応をする家族の負担が大きくなることは否めません。常に気を配っていなければならない、食事に関して色々と制約がある、移動やお風呂、トイレなどの際に付き添ったり介助したりしなければならない、などです。 |
緩和ケア病棟への入院について
がん治療を続行する場合は、今通っている病院に入院することになりますが、末期状態で続行しない場合は「緩和ケア専門病棟」への入院になります。
これはどこの病院にもあるわけではありません。現在の病院にあればそこに入院することになりますが、緩和ケア病棟がなければ、別の病院を紹介されたり、探したりすることになります。
まずは主治医に相談して「緩和ケアのみ実施するとき、入院するとなったらどこの病院になりますか」と確認しましょう。
他の病院を紹介される場合は、早めにコンタクトを取って空きベッドの状況などを確認しておくことが重要です。どこの病院も受け入れ態勢に余裕があるわけではないので「今から入院したいです」といっても難しいこともあります。
在宅医療の体制確認
自宅で介護する場合は、医師や看護師に定期的に巡回してもらうことになります。地域によっては医師不足のため訪問医療ができないこともあります。
まずは在宅でのケアが物理的に可能かどうかを調べることになります。これも主治医や担当の看護師さんに確認してみましょう。
2025年の診療報酬改定では、在宅ターミナルケア加算および看取り加算の算定要件が緩和・拡充されるなど、在宅医療の充実に向けた制度整備が進んでいます。
ご本人が自宅にいたい、家族も積極的に介護したいということなら問題ありませんが、医療的な対応はどうしても不十分になることが多いので、限界までムリをしないで「この日々が続くと厳しい」となったら入院を検討するほうがよいと思います。
患者さんへの接し方
本人が余命宣告を知っているかどうか
まず本人が「余命宣告を知らない場合」「余命宣告を知っている場合」がありますが、最近は本人に黙っておく、というケースはまずありません。
例えば、医師や看護師に「余命のことは本人に知らせないでください」と秘密にすることを依頼しても、それは守れる約束とはいえないからです。
多くの患者さんと接する医療者は「この患者には黙っておく」「この患者にはいってもよい」などのルールを徹底することは現実不可能ですし、きちんと説明しないと「なぜこの医療行為が必要なのか」を伝えきれません。
そのため「本人が知らない」というのはイレギュラーなケースです。ですので「余命宣告を本人も知っている」ということを想定して接し方をお伝えします。
本人の希望を聞く
どう接していいか分からない、という相談を受けることは多いですが、そういったケースでは「本音で話していない」ということが多いように感じています。
接し方が分からない=本人がどう接してもらいたいか確認していない、といえるからです。
「なんだか、身内なのに気を遣ってしまい、こっちから何も言えない雰囲気がある」という心情も分かりますが、大事な時期ですので「本音できちんと向き合って話す」ことが何より重要なことです。
家族としては「これまでの人生の中でとても感謝していることや愛情を伝えること」が重要だと感じています。今まであまり口に出して言えなかったことをこちらからしっかり伝える、ということです。
そのうえで「どうしたい?本音で、本当のことを言って」と話せば、話してくれると思います。
希望は人によって本当に違います。いつ死んでもいいから、これはやっておきたい、これだけはやり続けたい、ということを伝えられることもあれば、なんとかやれる治療があれば受けたい、ということもあります。
本音を聞くことで「でも、うちにはこのくらいしか医療費には使えないからこれは難しい」など言いにくいことも言える雰囲気になります。
家族会議の開催
まずはしっかり話すことです。近い家族全員でしっかり集まって家族会議をされる方もいますが、そういう対応をするとお互いに共通認識ができます。
共通認識がズレてくればまた集まる、ということができればお互いに感情を損ねたりする可能性が少なくなります。
あるいは家族の代表者(わざわざ決めなくても序列があると思います)が代表して患者さんとしっかり話して、それを皆に伝える、というやり方をする人もいます。
日常的な接し方
誰かがつきっきりで側にいる、としても延々と会話しているわけではないはずです。患者さんはひとりでテレビをみたり、本を読んだり、そんな感じかと思います。
それでも本当にリラックスしているわけではなく、心の中では様々な葛藤や寂しさ、恐怖が巡っているはずです。
なので、せっかく家族と話す時間があるなら、病気のことやネガティブな話はあまりしたくなく、なにげない普段の会話や、ささやかな楽しい話題、笑顔になれるような軽い冗談などを楽しみたいはずです。
医療の予定など話すべきことは話すとしても「いつも通り」を心がけるのがよいと思います。
口に出さなくても「寂しさ」は強く感じている人が多いので、なにかあればマメに声をかけて少しでも話をするのが患者さんにとっては一番の癒しになります。
かける言葉の注意点
励ますことは大事ですが「頑張ってね」「いつか治るかもしれないね」「元気そうに見えるよ」など、本人の心を傷付けてしまう恐れがある言葉は避けます。
ご家族も余命宣告を受けた現実を受け入れにくいかもしれませんが、最も不安を抱えているのはご本人です。ご家族を残して先に逝くことに対し、辛さ、やり切れなさを感じることもあるでしょう。
励ましの言葉ではなく、寄り添うような言葉をかけたり、一緒に涙を流したりすることの方が、ご本人の気を楽にしてあげられるかもしれません。
現実的な困難さ
そうはいっても、すでに家族関係が悪化していたり、余命宣告をきっかけに患者さんが荒れて精神的に通常の対応ができない、ということもあります。
穏やかな時間を過ごせるとは限りませんし、現実は口でいうほど簡単ではありません。
そのような場合は、自分たちだけで抱え込まずに、友人に話を聞いてもらったり、心理カウンセラーに相談することも考えてみましょう。
家族が準備すべきこと
保険の確認
まずは本人が加入している保険会社に連絡をいれ、余命宣告を受けた旨と現状を説明しましょう。
保険の内容次第では、余命の迫った状況に対して入院費や医療費に対して保険金の適用を受けられる可能性があります。
もし余命半年以内と宣告された場合に事前に死亡保証金を受けられる「リビングニーズ特約」が設定されている保険があれば、そうした制度の利用を相談してみるとよいでしょう。
特約によって一部でも保険金を受け取ることができれば、医療費の支払いに充てたり、他の治療費として使えるでしょう。また、残された時間を有意義に過ごすために使うこともできるはずです。
エンディングノートの活用
いざ余命を迎える際には、エンディングノートを準備し活用するということができれば、家族にかかる負担がぐっと減ります。
エンディングノートとは、いわゆる「終活」で使われる用語で、死後に家族に把握してほしいことを記したものです。
例えば、エンディングノートに記載すべきこととして、所有財産の目録リストや譲渡先・相続先について、知人友人の連絡先、加入しているサービスのIDパスワード、家族へのメッセージなどが挙げられます。
余命宣告について本人に伝わっている場合はもちろん、伝わっていない場合でも、入院が長引けば本人が死を意識することもありますので、さりげなくエンディングノートを作ってみることを提案し、手伝えることは手伝ってみるとよいでしょう。
やりたいことのリスト化
余命宣告を受けたご本人に、残りの時間でやってみたいこと、会っておきたい人、行ってみたい場所などを聞いて整理しましょう。
全て実現することは難しいかもしれませんが、ご本人の希望をできる限り叶え、残された時間を意義のあるものにしたいところです。
希望を聞きながらリストとして整理しても良いですし、エンディングノートを活用する方法もあります。
財産・相続の準備
余命宣告を受けたら財産を確認し、相続や遺言書の準備も始めましょう。誰に何を相続させるかを遺言書として残しておけば、相続のトラブルを防止できます。
遺言書には法的拘束力がありますが、エンディングノートには法的拘束力がないことには注意しましょう。
感謝の気持ちを伝える
大切な人に感謝の気持ちを伝える時間を作りましょう。
感謝を伝える方法はさまざまです。直接伝えるのが難しい場合は、手紙を書いたり、写真やメモリーアルバムを作ったりするのも良い手段です。また時間を共有することだけでも感謝を表現することにも繋がります。
感謝の気持ちを伝えることで、残された時間をより豊かで温かいものにすることができます。
介護保険・医療費の制度について
高額療養費制度の活用
医療費が高額になった場合、高額療養費制度を利用することで自己負担額を軽減できます。
所得に応じて自己負担限度額が設定されており、それを超えた分は払い戻されます。事前に限度額適用認定証を取得しておくと、医療機関の窓口での支払いが限度額までとなります。
介護保険サービスの利用
在宅介護を選択する場合、介護保険サービスを利用することで家族の負担を軽減できます。
訪問介護、訪問看護、デイサービスなど様々なサービスがあります。まずは地域の地域包括支援センターに相談し、要介護認定を受けることから始めます。
2025年の制度改定では、在宅医療と介護の連携がさらに強化されており、地域包括ケアシステムの構築が進んでいます。
心のケアとサポート
家族自身のケア
余命宣告を受けた時、あるいはご家族が余命宣告を受けた場合、悲しみ、怒り、不安など、さまざまな感情が湧き上がることがあります。
無理に感情を抑え込まず、ノートに書き出したり、信頼できる人に話したりするなど、自分なりの対処法を見つけることが大切です。
専門家への相談
医師や看護師はもちろんのこと、ソーシャルワーカー、社会福祉士など、さまざまな専門家に相談し、自身が抱える不安や疑問を訊ねてみることも重要です。
心理的なサポートが必要な場合は、心理カウンセラーやグリーフケアの専門家に相談することも検討しましょう。
親族への連絡
親族が余命宣告を受けたと聞いて、今すぐにも会いに行きたいと思うかもしれません。ただ、余命宣告を受けたばかりではご本人も同居する家族もまだ混乱しているかもしれません。
また「何かしてあげたい」「力になりたい」と思っても、それが必ずしもご家族や本人の希望することとは限りません。
まずは落ち着いて、ご家族に常に気にかけていること、必要な支援やお手伝いできることがあれば連絡してほしいこと、困ったら相談してほしいことを伝えましょう。
まとめ:家族としてできること
余命宣告を受けた家族として最も重要なのは、患者さん本人の意思を尊重し、残された時間を後悔のないように過ごすことです。
医療的な対応、精神的なケア、実務的な準備、それぞれにおいてやるべきことは多くありますが、焦らず、一つずつ進めていくことが大切です。
家族全員で気持ちを共有し、お互いに支え合いながら、患者さんにとって最善の選択をしていきましょう。
そして何より、今この瞬間を大切にし、感謝の気持ちを伝え、共に過ごす時間の質を高めることを心がけましょう。

