がん闘病中には、腰痛が生じることがあります。ふだんは「ちょっと痛いな」で済むかもしれませんが、「骨への転移か」「がんの悪化か」などの不安を感じてしまう人もいるはずです。
この記事では、がん闘病中の腰痛について、何が原因で起きるのか?起きた場合の対処法や治療法はあるのか?について解説します。
※腰痛とは
腰痛は、触知可能な最下端の肋骨と臀部の間の領域に生じる疼痛のこと。有症期間により、急性腰痛(発症から4週間未満)、亜急性腰痛(発症から4週間以上3か月未満)、慢性腰痛(発症から3か月以上)と定義される。
がん患者さんに腰痛が生じる主な原因
腰痛の原因は様々であり腰痛の発生状況、痛みの性質・程度、随伴症状の有無、内臓部位との関係など、いろいろな方面からの観察が必要になる。
腰痛を生じると歩行時・座位時に苦痛があるばかりでなく、日常生活が不便になり、就床時にも痛みのために睡眠がとれないことがあり、心理的にも不安が強い。これが痛みを助長して全身の疲労を強めるので、疼痛の緩和とともに不安の軽減を図ることが重要になる。
がん(腫瘍)による腰痛
・ 脊椎・脊髄・馬尾のがん(原発性または転移性=骨転移)
・胃がん、胆嚢・胆管がん
その他の要因による腰痛
・手術や療養に伴う長時間の同一体位
・尿路感染などに伴う化膿性脊椎炎
・化学療法などに伴う免疫抑制状態で生じる可能性も。
・圧迫骨折
・腹部大動脈瘤など
【出現しやすい人】
・脊椎転移の半数を占める乳がん、前立腺がん、肺がん患者さんの骨転移
基本的な腰痛対策
・長期の安静は、筋力低下などを引き起こし、回復を遅らせる。痛みが緩和したら、すみやかに日常生活の生活行動に戻るとともに、医師・理学療法士と協力し、適度な運動を取り入れる。
・環境を整備し、外傷や転倒を予防する。
・コルセットの適応について検討する(コルセットは、骨折のリスクがあって可動域を制限する必要があるときや、疼痛部位への圧迫を避けて症状を和らげる必要があるときなどが適応となる)
・コルセットは、体重の支持や運動の制限に役立つが、不必要に長期間使用すると体幹の筋力が低下し、筋萎縮が生じうるため注意が必要。
・睡眠時の姿勢は大切であり、体圧を分散しながらも脊柱の生理的彎曲が保たれるような硬さのマットレスを選ぶ。
がん(腫瘍)による腰痛の詳細
・腰部周辺に分布する脊髄神経の知覚神経終末の刺激や、脊髄神経根そのものの圧迫刺激により、腰痛が生じる。
【リスク因子】
・がんの進行による脊髄神経の刺激
【治療とケア】
・腹部大動脈瘤など、緊急対応を要する腰~背部の痛みと判断される場合もある。強い痛みがある場合は速やかに医療者の診断を受けることが必要。
・急性腰痛、亜急性腰痛に対しては、短期的には温熱療法が有効。
・急性疼痛や慢性疼痛に対しては、保存療法あるいは手術療法が行われる
保存療法=コルセットや牽引など、痛み・炎症の軽減を目的として行うもの
薬物療法=非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、オピオイドなど
ブロック療法=局所麻酔薬や神経破綻薬、熱などによって神経の伝達機能の一時的・永久的に遮断することや、オピオイドなど鎮痛薬を硬膜外腔・くも膜下腔へ投与することで、鎮痛効果を得る。
運動療法=運動機能の回復・改善を目的として行うもの。
手術療法=保存療法に効果がみられず、麻痺・しびれにより日常生活に支障をきたす場合に限って行われる。主に、神経圧迫に対する除圧と、腰痛の固定を目的として行われる。