
カブとがん予防の関係について
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
カブは日本で古くから親しまれている野菜であり、春の七草の一つ「スズナ」として知られています。
近年、カブを含むアブラナ科野菜に含まれる成分ががん予防に関与する可能性が注目されています。この記事では、カブに含まれる栄養成分とがん予防との関係について、最新の科学的知見をもとに詳しく解説します。
カブの基本的な特徴と種類
カブはアブラナ科に属する野菜で、日本各地で栽培されています。主に東日本で栽培される洋種系と、西日本で栽培される和種系に分けられます。洋種系は寒冷地での栽培に適しており、葉に切れ込みがあり細かい毛が生えて横に広がる特徴があります。一方、和種系の葉は切れ込みがなく滑らかな表面をしています。
カブの旬は年に2回あり、3月から5月の春ものと10月から12月の秋から冬にかけての時期です。春ものは柔らかい肉質が特徴で、秋冬ものは甘みが強くなります。
カブの特徴として重要なのは、根の部分と葉の部分で栄養成分が大きく異なるという点です。根の部分は淡色野菜に分類されますが、葉の部分は緑黄色野菜に分類され、より多くの栄養素を含んでいます。
カブに含まれる主な栄養成分
カブには様々な栄養成分が含まれています。根の部分と葉の部分では含まれる成分が大きく異なるため、それぞれについて説明します。
根の部分の栄養成分
カブの根の部分には、デンプン質分解酵素であるジアスターゼ(アミラーゼ)が豊富に含まれています。この酵素は消化を助ける働きがあり、胃もたれや胸やけの予防に役立ちます。また、ビタミンCやカリウムなども含まれています。
根の部分に含まれる注目すべき成分として、アブラナ科野菜に共通するグルコシノレートがあります。カブには特にグルコナストルシンと呼ばれるグルコシノレートが含まれており、これがカブ特有の辛みの元になっています。
葉の部分の栄養成分
カブの葉の部分には、根の部分よりも豊富な栄養素が含まれています。特に注目される栄養成分を以下の表にまとめます。
| 栄養成分 | 含有量(葉100gあたり) | 主な働き |
|---|---|---|
| β-カロテン | 2800マイクログラム | 抗酸化作用、ビタミンAとして機能 |
| ビタミンC | 101mg | 抗酸化作用、免疫機能維持 |
| ビタミンK | 340マイクログラム | 骨の健康維持 |
| カルシウム | 274mg | 骨や歯の形成 |
| 鉄 | 2.4mg | 貧血予防 |
| 食物繊維 | 4.4g | 腸内環境改善 |
カブの葉は根の部分と比較して、カルシウムは約10倍、鉄は約10倍、ビタミンCは約4倍以上含まれています。また、β-カロテンは根の部分にはほとんど含まれず、葉の部分にのみ豊富に含まれています。
がん予防に関連する成分とその作用
カブに含まれる成分のうち、がん予防との関連が研究されている主要な成分について詳しく説明します。
グルコシノレートとイソチオシアネート
カブを含むアブラナ科野菜の最も特徴的な成分がグルコシノレートです。グルコシノレートは硫黄を含む化合物で、植物が害虫や病気から身を守るための防御機構として機能していると考えられています。
カブにはグルコナストルシンと呼ばれるグルコシノレートが主に含まれています。野菜を刻んだり噛んだりすることで細胞が壊れると、ミロシナーゼという酵素によってグルコシノレートが分解され、イソチオシアネートという物質に変換されます。
このイソチオシアネートには以下のような作用があることが研究で示されています。
1. 肝臓の解毒酵素の活性化:発がん物質を解毒する酵素の働きを高めることで、体内の有害物質を排出しやすくします。
2. 抗酸化作用:細胞を酸化ストレスから守り、DNA損傷を防ぐ働きがあります。
3. 抗菌作用と抗炎症作用:グルコナストルシンから生成される物質には、これらの作用が期待されています。
動物実験では、グルコシノレートを加熱調理して摂取することで肝臓の解毒作用が高まり、発がんを抑制する効果が認められたという報告があります。ただし、人での効果については、後述するように研究結果が一致していない部分もあります。
β-カロテンの抗酸化作用
カブの葉に豊富に含まれるβ-カロテンは、強力な抗酸化物質です。体内で必要に応じてビタミンAに変換される一方、そのまま抗酸化物質としても働きます。
β-カロテンの主な作用は以下の通りです。
1. 活性酸素の除去:がんの原因の一つである活性酸素を除去し、細胞の酸化的損傷を防ぎます。
2. 免疫機能の維持:粘膜や皮膚の健康を保ち、体の防御機能を支えます。
3. 細胞の老化防止:抗酸化作用により、細胞の老化を遅らせる効果が期待されます。
β-カロテンは脂溶性のビタミンなので、油と一緒に調理することで吸収率が向上します。
ビタミンCの抗酸化作用
カブの葉に含まれるビタミンCは、水溶性の抗酸化物質として最も活性が高い物質の一つです。ビタミンCには以下のような作用があります。
1. 活性酸素の無毒化:細胞や組織を酸化的損傷から守ります。
2. 免疫機能のサポート:白血球の働きを支援し、感染症への抵抗力を高めます。
3. コラーゲンの生成:皮膚や粘膜の健康維持に必要です。
ビタミンCは熱に弱く水に溶けやすい性質があるため、生で食べるか、短時間の加熱調理が栄養成分を保つのに効果的です。
食物繊維の役割
カブの葉には食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維は腸内環境を整え、便秘予防に役立つだけでなく、がん予防との関連も研究されています。
食物繊維の主な働きは以下の通りです。
1. 腸内環境の改善:善玉菌の増殖を促し、腸内環境を整えます。
2. 発がん物質の排出促進:便通を改善することで、腸内の発がん物質と接触する時間を短縮します。
3. 免疫機能の調整:腸内環境の改善を通じて、全身の免疫機能にも影響を与えます。
アブラナ科野菜とがん予防に関する研究結果
カブを含むアブラナ科野菜とがん予防の関係については、多くの疫学研究が行われています。ここでは主要な研究結果について説明します。
肺がんとの関係
いくつかの疫学研究では、アブラナ科野菜の高摂取が肺がんのリスク低下と関連していることが報告されています。オランダ、アメリカ、フィンランドで行われた前向き研究では、アブラナ科野菜を週4回以上摂取するグループで肺がんリスクの低下が認められました。
ただし、すべての研究で一貫した結果が得られているわけではありません。一部の研究では関連が見られなかったことも報告されています。これは、遺伝的要因がグルコシノレートの代謝に影響し、個人によって効果が異なる可能性が示唆されています。
結直腸がんとの関係
アブラナ科野菜の摂取と結直腸がんのリスク低下との関連も研究されています。一部の研究では、アブラナ科野菜の摂取量が多いほど結直腸がんのリスクが低下する傾向が認められています。
胃がんとの関係
国立がん研究センターが実施した研究では、男性において野菜全体と緑黄色野菜の摂取量が最も多いグループで、胃がんリスクが有意に低いことが示されました。摂取量が多いほどリスクが低い傾向が認められています。
その他のがんとの関係
前立腺がんや乳がんなど、ホルモンに影響されやすいがんとアブラナ科野菜の関係も研究されていますが、現時点では明確な予防効果を示すエビデンスは限定的です。研究結果に一貫性がなく、今後のさらなる研究が必要とされています。
野菜摂取とがん予防に関する重要な知見
国立がん研究センターが実施した大規模な研究では、日本人約20万人のデータを分析し、野菜・果物の摂取量とがん罹患リスクの関係を検討しました。この研究の重要な結果として、野菜や果物の摂取量によって全がんの罹患リスクは統計学的に有意な変化を示さなかったことが報告されています。
これは野菜が無意味というわけではありません。以下の点に注意が必要です。
1. 特定の野菜のみでなく、多様な野菜を摂取することが重要です。
2. 野菜・果物は循環器疾患の予防には明確な効果が認められています。
3. 野菜には様々な栄養素や植物性化学物質が含まれており、健康維持に相乗的に役立つ可能性があります。
4. バランスの取れた食生活全体が、がん予防において重要です。
国立がん研究センターが推奨するがん予防法
国立がん研究センターは、日本人を対象とした研究をまとめ、「日本人のためのがん予防法」を提示しています。これは「5+1」と呼ばれ、以下の6つの要因に気をつけることが推奨されています。
| 項目 | 推奨内容 |
|---|---|
| 1. 禁煙 | たばこは吸わない、他人のたばこの煙を避ける |
| 2. 節酒 | 適度な飲酒量を心がける |
| 3. 食生活 | 減塩する、野菜と果物をとる、熱い飲食物は冷ましてから |
| 4. 身体活動 | 無理のない範囲で身体を動かす時間を増やす |
| 5. 適正体重 | 太りすぎ、痩せすぎに注意する |
| 6. 感染予防 | ウイルスや細菌の感染予防と治療を行う |
研究によると、これら5つの健康習慣(感染を除く)を実践する人は、0または1つしか実践しない人に比べて、男性で43%、女性で37%がんになるリスクが低くなることが示されています。
野菜の摂取は「食生活」の一部として推奨されていますが、特定の野菜のみに焦点を当てるのではなく、バランスの取れた食生活全体が重視されています。
カブの効果的な摂取方法
カブに含まれる栄養成分を効果的に摂取するためのポイントを説明します。
根と葉を両方活用する
カブは根と葉で栄養成分が大きく異なるため、両方を活用することで栄養バランスが向上します。葉の部分には根の部分よりも豊富なビタミンやミネラルが含まれているため、捨てずに料理に使うことが推奨されます。
調理方法による栄養成分の変化
グルコシノレートは加熱することで肝臓の解毒作用を高める効果があることが分かっています。一方、ビタミンCは熱に弱いため、葉を生で食べるか短時間の加熱が効果的です。
β-カロテンは脂溶性のビタミンなので、油と一緒に調理することで吸収率が向上します。葉の部分を油炒めや胡麻和えにすると良いでしょう。
塩分の摂りすぎは胃がんのリスクを上げることが知られているため、漬物にする場合は塩分濃度に注意が必要です。
新鮮なカブの選び方
良いカブを選ぶポイントは以下の通りです。
1. 肩が盛り上がっているものを選ぶ:肌が白く光り、肩が張って丸く肥大しているカブは新鮮です。
2. 葉付きのものを選ぶ:葉柄がまっすぐに立ち、弾力があって折れにくいものが良質です。
3. 表皮の状態を確認する:淡い緑色の表皮で、葉脈の間隔が均一なものを選びましょう。
白がくすんで肌荒れがあるもの、割れているものは避けた方が良いでしょう。
がん予防における食生活の位置づけ
カブを含む野菜の摂取はがん予防の一要素ですが、それだけに頼ることは適切ではありません。以下の点を理解することが重要です。
1. 単一の食品や栄養素だけでがんを予防することはできません。
2. バランスの取れた食生活全体が重要です。
3. 食生活以外の要因(禁煙、節酒、運動、適正体重など)も同様に重要です。
4. 定期的ながん検診による早期発見も不可欠です。
研究結果が示すように、野菜・果物の摂取とがん全体の罹患リスクとの間に明確な関連は認められていません。しかし、特定のがん(胃がんなど)では野菜摂取によるリスク低下が報告されており、また循環器疾患の予防効果は明確に認められています。
したがって、カブを含む野菜を日常的に摂取することは、総合的な健康維持の観点から推奨されます。
まとめ:カブとがん予防の関係
カブにはグルコシノレート、β-カロテン、ビタミンC、食物繊維など、がん予防に関連する可能性がある様々な成分が含まれています。特にアブラナ科野菜に特有のグルコシノレートは、肝臓の解毒酵素を活性化し、抗酸化作用を持つことが研究で示されています。
アブラナ科野菜の摂取と肺がんや結直腸がんのリスク低下との関連が報告されていますが、すべての研究で一貫した結果が得られているわけではありません。また、野菜・果物全体の摂取とがん全体の罹患リスクとの間には、明確な関連は認められていないのが現状です。
重要なのは、特定の野菜だけに期待するのではなく、バランスの取れた食生活を心がけることです。カブは栄養豊富な野菜であり、根と葉の両方を活用することで、様々な栄養素を摂取できます。
がん予防には、食生活だけでなく、禁煙、節酒、適度な運動、適正体重の維持、感染予防など、総合的な生活習慣の改善が必要です。また、定期的ながん検診による早期発見も重要な予防策となります。
カブを含む多様な野菜を日常的に摂取し、健康的な生活習慣全体を整えることで、がんのリスクを低減し、総合的な健康維持につながることが期待されます。
参考文献・出典情報
- アブラナ科の野菜 | Linus Pauling Institute | Oregon State University
- 科学的根拠に基づくがん予防 | 国立がん研究センター がん情報サービス
- がん予防法の提示 2024年8月19日改訂版 | 国立がん研究センター がん対策研究所
- 野菜・果物と胃がんのリスク | 国立がん研究センター がん対策研究所
- 日本人における野菜・果物摂取と全がん罹患リスク | 国立がん研究センター がん対策研究所
- がんを防ぐための新12か条 | 日本対がん協会
- グルコシノレート | Wikipedia
- 抗酸化ビタミン摂取と肺がん罹患リスクの関連について | 国立がん研究センター
- 抗酸化ビタミン | 厚生労働省 e-ヘルスネット
- がん予防のための食事とは | 健康長寿ネット

