前立腺がんの治療は、がんのリスクを低・中・高リスクとして総合的に評価したものをベースに、「患者の年齢」「患者の健康度」「患者の希望」などを加え、十分に医師と患者が話し合い、患者が納得したうえで決定します。
多くのがんの治療は「手術療法」「放射線療法」「化学療法」が柱となっており”三大療法”と呼ばれています。基本としてこれらを単独もしくは組み合わせて行うのが現代のがん治療です。
前立腺がんでは三大療法のほか、「ホルモン療法(内分泌療法)」が中心的な役割を担います。薬を使うので「化学療法」のひとつではありますが、抗がん剤よりもホルモン剤が使われる頻度が他のがんに比べてずっと高いのが特徴です。
そのほか、超音波を集中させてがんを焼灼する治療の「HIFU(高密度焦点式超音波療法)」も一部の施設で行われています。ただし、HIFUの場合はまだ臨床研究の段階にあります。
これらの治療のほかに、前立腺がんの場合には、「待機療法」とよばれる方法があります。実際に何らかの治療を行うわけではないので「療法」という言葉を使う必要性はないのですが、このような呼称が一般化しています。この「待機療法」は前立腺がんと診断されてもすぐに治療を必要としないケースで経過観察する、という意味です。
前立腺がんは70代、80代といった高齢の方に発見されるケースが多いですし、進行が緩やかなことが多いので、身体的な負担が強い手術や放射線などの治療をすぐにせず、しばらく様子をみて必要性に応じて対策を講じるわけです。
一方、最近の考え方として、50代など比較的若い人に悪性度の低い前立腺がんが発見されたケースには、より短いスパンで定期的な経過観察を行う「能動的経過観察(PSA監視療法)」というものがあります。
このときはPSA(前立腺特異抗原)値を定期的にチェックする以外に、1~2年おきに生検が行われます。
ただし、患者の中には「がんが転移して手遅れになるのでは・・・」と不安に思い、やるなら早くしたいと考える人もいます。
早期であればそれだけ選択肢が増えるので、どんな可能性があるのかよく確認してから治療法を選ぶことが大切です。
以上、前立腺がんのホルモン療法についての解説でした。
私がサポートしている患者さんでもホルモン療法を受けている方は多くいます。抗がん剤に比べて副作用が少なく、長く使える場合もありますが、体にダメージはありますし、「がんを治す薬」ではありません。
前立腺がんを克服するためには総合的なアプローチが必要です。