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がんの支持療法とは何か
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
がんの治療を進めていく中で、がんそのものに対する治療と同じくらい重要なのが「支持療法」です。支持療法とは、がんの進行やがん治療にともなって生じる様々な症状、副作用、合併症に対して行われる治療のことを指します。
以前は「緩和ケア」という言葉が広く使われていましたが、緩和ケアは終末期の患者さんに提供されるイメージが強いため、現在では治療中の患者さんに対する症状緩和や副作用対策を「支持療法」と呼ぶことが一般的になってきました。
支持療法の目的は、患者さんがより快適に治療を継続できるようにサポートすることです。
抗がん剤治療を受ける際の吐き気や嘔吐を抑えたり、手足のしびれを軽減したり、感染症を予防したりすることで、患者さんの生活の質を保ちながら、予定されている治療を完遂できるようにします。
がん治療における支持療法の重要性
がん治療は年々進歩していますが、それに伴って治療の副作用や合併症も複雑化してきました。特に薬物療法(化学療法)では、投与する抗がん剤の種類や量が増えることで、患者さんの体に様々な負担がかかります。
支持療法が適切に行われないと、患者さんは治療の副作用に苦しみ、予定していた治療を中断せざるを得なくなったり、投与量を減らしたりすることになります。これは治療効果の低下につながる可能性があります。
反対に、支持療法が充実していれば、患者さんは予定通りの治療を受けられるため、がんに対する治療効果を最大限に引き出すことができます。つまり、支持療法はがん治療の成功を左右する重要な要素といえます。
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支持療法の具体的な手法
吐き気・嘔吐に対する支持療法
抗がん剤治療で最も一般的な副作用の一つが吐き気と嘔吐です。現在では、この症状をコントロールするための様々な制吐剤が開発されています。
代表的な制吐剤には、5-HT3受容体拮抗薬(パロノセトロン、グラニセトロンなど)、NK1受容体拮抗薬(アプレピタント、ホスアプレピタントなど)、デキサメタゾン(ステロイド薬)があります。
特に注目されているのがオランザピンという薬剤です。オランザピンは2017年に日本で「抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)」に対して保険適用となりました。高度催吐性リスクの抗がん剤に対しては、従来の3剤併用療法(5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾン)にオランザピン5mgを加えた4剤併用療法が標準的な予防的制吐療法として推奨されるようになりました。
2025年の臨床試験でも、オランザピンを上乗せした4剤併用療法は、従来の3剤併用療法と比較して、急性期と遅発期の両方で嘔吐完全抑制率が有意に高いことが示されています。
| 催吐性リスク | 推奨される制吐療法 |
|---|---|
| 高度催吐性リスク | 5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+デキサメタゾン+オランザピン |
| 中等度催吐性リスク(カルボプラチンなど) | 5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+デキサメタゾン(状況によりオランザピン追加) |
| 中等度催吐性リスク(その他) | 5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン |
抗がん剤投与前に予防的にこれらの薬剤を使用することで、吐き気や嘔吐の発生を効果的に抑えることができます。また、点滴時間を長めにしたり、大量の生理食塩水を一緒に点滴したりすることも、副作用軽減のための工夫として行われています。
末梢神経障害に対する支持療法
白金製剤(シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン)やタキサン系製剤(パクリタキセル、ドセタキセル)などの抗がん剤を使用すると、手足のしびれ、ピリピリ感、痛みといった末梢神経障害が起こることがあります。
この化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は、治療中だけでなく治療終了後も長期間続くことがあり、患者さんの日常生活に大きな影響を与えます。
2023年に改訂された「がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン」では、CIPNの治療として以下の薬剤が推奨されています。
デュロキセチン(サインバルタ)は、唯一ランダム化比較試験によるエビデンスがあり、CIPNの疼痛軽減効果が示されています。通常、1日20mgから開始し、1週間以上の間隔を空けて40~60mgまで増量します。主な副作用として眠気や吐き気があります。
プレガバリン(リリカ)とミロガバリン(タリージェ)は、神経の興奮を鎮めることで疼痛やしびれを緩和します。プレガバリンは1日150mgから開始し、段階的に300mgまで漸増します。ミロガバリンは副作用の発症頻度がプレガバリンより低いと報告されていますが、用量調節の幅は狭くなっています。
ただし、これらの薬剤は根本的な治療法ではなく、症状を軽減するための対症療法です。症状が強い場合は、抗がん剤の減量や中止を検討する必要がありますが、その際は治療効果と副作用のバランスを患者さんと十分に話し合うことが重要です。
| 薬剤名 | 作用機序 | 開始用量 | 主な副作用 |
|---|---|---|---|
| デュロキセチン | セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害 | 1日20mg | 眠気、吐き気、倦怠感 |
| プレガバリン | カルシウムチャネル遮断 | 1日150mg | 眠気、ふらつき、浮動性めまい |
| ミロガバリン | カルシウムチャネル遮断 | 製剤に準ずる | プレガバリンより少ない |
発熱性好中球減少症に対する支持療法
抗がん剤治療により骨髄の機能が低下すると、白血球の一種である好中球が減少します。好中球が減少した状態で発熱が起こることを発熱性好中球減少症(FN)といい、重篤な感染症につながる可能性があるため、迅速な対応が必要です。
FNは「好中球数が500/μL未満、あるいは1,000/μL未満で48時間以内に500/μL未満に減少すると予測される状態で、腋窩温37.5℃以上(または口腔内温38℃以上)の発熱を生じた場合」と定義されています。
FNの予防と治療には、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤が使用されます。G-CSFは骨髄中で好中球の増殖・分化を促進し、好中球数を増やす働きがあります。
2022年に改訂された「G-CSF適正使用ガイドライン」では、G-CSFの使用法として以下の3つが定義されています。
一次予防投与は、がん薬物療法開始後、好中球数によらず、FN発症を防ぐ目的で投与を開始するものです。FN発症リスクが20%以上の化学療法レジメンでは一次予防投与が強く推奨されます。
二次予防投与は、前コースの治療でFNまたは高度な好中球減少をきたした場合に、次コース投与後にFN発症を防ぐ目的で投与するものです。
治療投与は、FNまたは高度な好中球減少が確認された際の治療として投与するもので、感染関連の合併症リスクが高い場合に考慮されますが、一般的には推奨されていません。
特にペグフィルグラスチム(ジーラスタ)は、効能・効果が「がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制」となっており、がん種によらず予防投与が認められた最初のG-CSF製剤です。単回投与で効果が持続するため、患者さんの通院負担を軽減できます。
支持療法の効果とメリット
適切な支持療法を行うことで、以下のようなメリットが得られます。
第一に、患者さんの生活の質(QOL)が向上します。吐き気や痛み、しびれなどの症状が軽減されることで、日常生活を比較的快適に過ごせるようになります。
第二に、予定されているがん治療を完遂できる可能性が高まります。副作用が軽減されれば、治療の中断や延期、投与量の減量を避けることができ、治療効果を最大限に引き出すことができます。
第三に、重篤な合併症を予防できます。特に発熱性好中球減少症のような生命を脅かす合併症を予防することで、患者さんの安全性が向上します。
第四に、入院期間の短縮や医療費の削減につながる可能性があります。副作用が適切に管理されれば、入院の必要性が減り、外来での治療継続が可能になります。
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支持療法のデメリットと注意点
支持療法には多くのメリットがありますが、いくつか注意すべき点もあります。
まず、支持療法に使用される薬剤自体にも副作用があります。例えば、オランザピンには眠気や体重増加の副作用があり、糖尿病患者さんには使用できません。デュロキセチンには眠気や吐き気があり、車の運転を控える必要があります。
また、複数の薬剤を併用することで薬物相互作用が起こる可能性があります。特にNK1受容体拮抗薬は他の薬剤の代謝に影響を与えることがあるため、併用薬には注意が必要です。
さらに、支持療法のために追加の医療費がかかります。特にG-CSF製剤やNK1受容体拮抗薬は高額な薬剤であり、経済的な負担が増える可能性があります。ただし、高額療養費制度を利用することで、実際の自己負担額を軽減できる場合があります。
最後に、支持療法を行っても完全に症状を抑えられるわけではありません。個人差があり、十分な効果が得られない患者さんもいます。その場合は、治療法の見直しや他の支持療法の追加を検討する必要があります。
支持療法の今後の展望
支持療法は今後も進化を続けていくと考えられます。2025年現在、様々な新しい制吐剤や鎮痛剤の開発が進められており、より効果的で副作用の少ない薬剤が登場することが期待されています。
また、個別化医療の考え方が支持療法にも導入されつつあります。患者さんの遺伝子情報や体質に基づいて、副作用のリスクを事前に予測し、最適な支持療法を選択する試みが始まっています。
さらに、薬物療法だけでなく、運動療法や栄養療法、心理的サポートなど、包括的な支持療法の重要性も認識されてきています。これらを組み合わせることで、患者さんの全人的なケアが実現できると考えられています。
患者さんが知っておくべきこと
がん治療を受ける際は、主治医や医療チームと十分にコミュニケーションを取り、自分の症状や不安を率直に伝えることが重要です。
副作用が出た場合は、我慢せずに早めに医療スタッフに相談してください。適切な支持療法を受けることで、症状を軽減できる可能性があります。
また、予防的に投与される薬剤については、その目的や副作用について理解しておくことが大切です。特に発熱や感染症の兆候が見られた場合は、すぐに医療機関に連絡する必要があります。
参考文献・出典情報
1. 日本癌治療学会「制吐薬適正使用ガイドライン」
http://www.jsco-cpg.jp/antiemetic-therapy/guideline/
2. 日本がんサポーティブケア学会「がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン 2023年版」
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00781/
3. 日本癌治療学会「G-CSF適正使用ガイドライン 2022年10月改訂 第2版」
http://www.jsco-cpg.jp/g-csf/guideline/
4. 日本臨床腫瘍学会「発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン改訂第3版」
https://www.jsmo.or.jp/news/jsmo/doc/20231109.pdf
5. 日本がんサポーティブケア学会学術集会(JASCC25)「がん治療に不可欠な支持療法の最新エビデンス」
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/report/202506/589317.html
6. Ito Y, et al. J Clin Oncol 2018「オランザピンの制吐効果に関する第III相試験」
7. Smith EM, et al. JAMA 2013「化学療法誘発性末梢神経障害に対するデュロキセチンの効果」
8. 金原出版「がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン 2023年版」
https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307204712
9. 協和キリン「ジーラスタ医療関係者向け情報」

