25.抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント

【2026年更新】ベクティビックス(パニツムマブ)について。費用・効果・副作用、大腸がん治療における投与方法と自己負担額

パニツムマブの(ベクティビックス)の主な副作用と特徴


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ベクティビックス(パニツムマブ)とは

こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。

ベクティビックス(一般名:パニツムマブ)は、大腸がん治療に使用される分子標的薬の一つです。この薬は、がん細胞の表面にあるEGFR(上皮成長因子受容体)に結合することで、腫瘍の増殖を抑制する働きを持っています。

特徴的なのは、ベクティビックスが完全ヒト型モノクローナル抗体であることです。

同じ作用機序を持つセツキシマブ(アービタックス)がヒト/マウスキメラ型であるのに対し、ベクティビックスは完全にヒト由来の抗体であるため、アレルギー反応(インフュージョンリアクション)の発症率が比較的低いとされています。

投与経路は点滴静注で、血管外漏出による皮膚障害のリスクは低く、催吐リスクも最小とされています。ただし、代謝経路については現時点で不明とされています。

どんながんに使われるのか

ベクティビックスは、RAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発の結腸がんおよび直腸がんに対して使用されます。

投与方法としては、単剤投与のほか、FOLFOX療法(フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン)やFOLFIRI療法(フルオロウラシル+レボホリナート+イリノテカン)との併用が行われます。

RAS遺伝子検査の重要性

ベクティビックスによる治療を受ける前に、RAS遺伝子(KRASおよびNRAS遺伝子)の変異の有無を検査することが必須となっています。

RAS遺伝子は、細胞の増殖などに関わるタンパク質をコードしています。大腸がん患者さんの約半数でRAS遺伝子変異が認められますが、変異がある場合、抗EGFR抗体薬による治療効果が期待できないことが多くの研究で明らかになっています。

RAS遺伝子変異検査では、KRAS遺伝子およびNRAS遺伝子のそれぞれcodon12、13、59、61、117、146の変異を検出します。この検査は保険適用となっており、大腸がん患者さんにおける治療方針の決定として、RAS遺伝子検査とBRAF遺伝子検査の2項目包括点数として算定されます。

最新の知見:原発巣の位置と治療効果

2022年に発表された国内のPARADIGM試験の結果により、RAS遺伝子野生型で原発巣が左側(下行結腸、S状結腸、直腸)の大腸がん患者さんに対する一次治療として、ベクティビックスとmFOLFOX6の併用療法が、ベバシズマブ(抗VEGF抗体薬)との併用療法と比較して、全生存期間を有意に延長することが明らかになりました。

左側大腸がんでは、全生存期間の中央値がパニツムマブ群で37.9か月、ベバシズマブ群で34.3か月となり、死亡リスクが18%低下しました。この結果は世界的にも注目され、欧米のガイドラインにも反映されています。

さらに2024年に発表された研究では、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた解析により、治療耐性関連遺伝子異常を認めない患者さんでは、左側・右側いずれの大腸がんにおいてもパニツムマブの有効性が示されました。


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投与方法と投与スケジュール

投与量と投与時間

ベクティビックスの標準的な投与方法は以下のとおりです。

項目 詳細
投与量 1回6mg/kg(体重)
投与間隔 2週間に1回
投与時間 60分以上かけて点滴静注
(1回投与量1,000mgを超える場合は90分以上)
用量調節 患者さんの状態に応じて適宜減量

投与に際しては、0.2または0.22ミクロンのインラインフィルターを使用して投与します。また、投与前後には日局生理食塩液を用いて点滴ラインを洗浄(前後フラッシュ)し、他の注射剤や輸液との混合を避ける必要があります。

副作用発生時の用量調節

重度(Grade3以上)の皮膚障害が現れた場合、以下の基準で用量を調節します。

投与量 対応
6mg/kg 投与延期し、6週間以内にGrade2以下に回復した場合、6mg/kgまたは4.8mg/kgに調節
4.8mg/kg 投与延期し、6週間以内にGrade2以下に回復した場合、3.6mg/kgに調節
3.6mg/kg 投与中止

6週間以内にGrade2以下に回復しなかった場合は、ベクティビックスの投与を中止します。

重度(Grade3以上)のインフュージョンリアクションが現れた場合は、ベクティビックスの投与を中止し、以降は再投与しません。

ベクティビックスの費用(薬価)

2026年現在の薬価

ベクティビックスの薬価は以下のとおりです(2025年8月時点)。

製剤名 規格 薬価
ベクティビックス点滴静注100mg 100mg5mL1瓶 79,749円
ベクティビックス点滴静注400mg 400mg20mL1瓶 316,550円

例えば、体重60kgの患者さんに標準用量(6mg/kg)を投与する場合、1回あたり360mgが必要となります。この場合、100mg製剤4本(318,996円)または400mg製剤1本(316,550円)を使用することになります。

2週間に1回の投与スケジュールであるため、月2回の投与となり、薬剤費だけで月額約63万円程度となります。これに診察料、検査料、その他の薬剤費などが加算されます。

保険適用と自己負担額

ベクティビックスは保険適用薬であり、一般的には医療費の3割(70歳未満の場合)を自己負担することになります。しかし、がん治療では高額療養費制度を利用することで、実際の自己負担額を大幅に軽減できます。


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高額療養費制度の活用

高額療養費制度は、1か月間(同じ月の1日から末日まで)に医療機関や薬局の窓口で支払った額が自己負担限度額を超えた場合、その超えた額が後から支給される制度です。

自己負担限度額(70歳未満)

所得区分 自己負担限度額(月額) 多数回該当
年収約1,160万円~
(標準報酬月額83万円以上)
252,600円+(医療費-842,000円)×1% 140,100円
年収約770~1,160万円
(標準報酬月額53万~79万円)
167,400円+(医療費-558,000円)×1% 93,000円
年収約370~770万円
(標準報酬月額28万~50万円)
80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
~年収約370万円
(標準報酬月額26万円以下)
57,600円 44,400円
住民税非課税世帯 35,400円 24,600円

「多数回該当」とは、直近12か月の間に3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに引き下げられる制度です。

具体的な自己負担額の例

例として、年収600万円(標準報酬月額28万~50万円)の患者さんが、ベクティビックス治療を含む医療費で月額100万円かかった場合を考えます。

通常の自己負担額(3割):300,000円
高額療養費制度適用後:80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円

実際の自己負担額は約8.7万円となり、残りの約21.3万円が後日払い戻されます。

多数回該当の場合は、自己負担額が44,400円まで軽減されます。

限度額適用認定証の活用

事前に加入している保険組合に「限度額適用認定証」を申請し、医療機関の窓口に提示することで、窓口での支払い自体を自己負担限度額までとすることができます。一時的な高額支払いを避けられるため、ベクティビックスのような高額治療を受ける際には事前の申請が推奨されます。

また、2021年10月からは、オンライン資格確認等システムを導入している医療機関では、健康保険証またはマイナンバーカードでの本人確認により、自動的に自己負担限度額までの支払いとすることが可能になっています。

主な副作用と対策

重大な副作用

ベクティビックスで注意が必要な重大な副作用は以下のとおりです。

1. 皮膚障害
2. 間質性肺炎
3. インフュージョンリアクション
4. 重度の下痢
5. 低マグネシウム血症

皮膚障害への対策

ベクティビックスの特徴的な副作用として、ざ瘡様皮膚炎、紅斑、爪囲炎、皮膚そう痒症、皮膚亀裂、皮膚乾燥、皮膚剥脱などの皮膚障害があります。

重要な点として、皮膚症状の強さと治療効果には相関があることが知られています。つまり、ある程度の皮膚症状が出ることは、薬が効いている可能性を示唆しています。しかし、症状が重度になると生活の質が低下するため、適切なスキンケアで症状の重症化を防ぐことが重要です。

皮膚障害の予防と管理には、保湿剤の使用、刺激の少ない洗浄剤の選択、紫外線対策などが推奨されます。症状が現れた場合は、ステロイド外用薬や抗菌薬の使用が検討されます。

低マグネシウム血症への対応

低マグネシウム血症は、抗EGFR抗体薬に共通した副作用です。ベクティビックス単独投与における国内臨床試験では、約30%の患者さんで低マグネシウム血症を含む電解質異常が認められました。

定期的な血液検査でマグネシウム値をモニタリングし、必要に応じてマグネシウム製剤の補充を行います。症状が重度の場合は、ベクティビックスの減量または中断が検討されます。

インフュージョンリアクションへの注意

インフュージョンリアクションとは、薬剤投与中または投与後に現れるアレルギー反応で、発熱、悪寒、呼吸困難、低血圧などの症状が出ます。

ベクティビックスは完全ヒト型モノクローナル抗体であるため、セツキシマブと比較してインフュージョンリアクションの発症率は低いとされています。そのため、セツキシマブと異なり、ベクティビックスでは前投薬(抗ヒスタミン薬などの予防的投与)は必須とされていません。

ただし、インフュージョンリアクションが起こる可能性はゼロではないため、投与中は注意深い観察が必要です。異常を感じた場合は、すみやかに医療者に報告することが重要です。

日常生活への影響と注意点

治療スケジュールと通院

ベクティビックスは2週間に1回の投与であり、投与時間は通常60分以上かかります。このため、月2回程度の通院が必要となります。点滴時間に加えて診察や採血の時間も含めると、半日程度の時間を要することが一般的です。

日常生活上の注意

1. 皮膚の保湿とケアを継続する
2. 紫外線対策(日焼け止め、帽子、長袖の着用など)
3. 感染予防(手洗い、マスク着用など)
4. 下痢が起きた場合の水分補給
5. 体調の変化を記録し、医師に報告する

慎重投与が必要な場合

間質性肺疾患や肺線維症の既往歴がある患者さんでは、ベクティビックスの投与に際して慎重な観察が必要です。これらの疾患の既往がある方は、事前に医師に必ず伝えてください。

ベクティビックスとセツキシマブの違い

ベクティビックスとセツキシマブ(アービタックス)は、どちらも抗EGFR抗体薬であり、同じ作用機序を持っていますが、以下のような違いがあります。

項目 ベクティビックス(パニツムマブ) セツキシマブ(アービタックス)
抗体の種類 完全ヒト型モノクローナル抗体 ヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体
前投薬 必須ではない 必須(抗ヒスタミン薬など)
投与間隔 2週間に1回 1週間に1回
インフュージョンリアクション 比較的低頻度 やや高頻度

完全ヒト型であるベクティビックスは、一般的にインフュージョンリアクションの発症率が低いと考えられています。また、投与間隔が2週間に1回であることも、通院負担の軽減につながる可能性があります。

治療を受ける際の心構え

医師とのコミュニケーション

ベクティビックスによる治療を始める前に、以下の点について医師と十分に話し合うことが大切です。

1. RAS遺伝子検査の結果と治療適応
2. 期待される効果と治療目標
3. 予想される副作用とその対処法
4. 治療にかかる費用と経済的支援制度
5. 他の治療選択肢との比較

セカンドオピニオンの活用

大腸がんの治療は、病期や遺伝子変異の状況、原発巣の位置などによって最適な治療法が異なります。治療方針に迷いがある場合や、より詳しい説明を希望する場合は、セカンドオピニオンを求めることも選択肢の一つです。

多くの医療機関でセカンドオピニオン外来が設けられており、現在の主治医からの紹介状や検査結果を持参することで、専門医から意見を聞くことができます。

支持療法の重要性

ベクティビックスによる治療では、副作用を適切に管理しながら治療を継続することが重要です。皮膚障害、下痢、低マグネシウム血症などの副作用に対する支持療法を適切に受けることで、治療の継続性が高まり、結果として治療効果の向上につながる可能性があります。

治療期間と効果判定

ベクティビックスによる治療期間は、患者さんの状態や治療効果によって異なります。一般的には、一定期間投与を続けた後、CT検査などの画像検査で治療効果を評価します。

効果判定は、腫瘍の大きさの変化(縮小、安定、増大)によって行われます。腫瘍が縮小または安定している場合は治療を継続し、明らかな増大(病勢進行)が認められた場合は、他の治療法への変更が検討されます。

副作用が重度で治療継続が困難な場合や、効果が不十分な場合は、治療の中止や他の薬剤への変更が検討されます。

まとめ

ベクティビックス(パニツムマブ)は、RAS遺伝子野生型の進行・再発大腸がんに対する有効な治療選択肢です。特に原発巣が左側の大腸がんでは、最新の研究により一次治療としての有用性が確立されています。

治療にあたっては、RAS遺伝子検査による適応の確認が必須であり、高額な治療費に対しては高額療養費制度などの経済的支援制度を活用することで、自己負担を軽減できます。

副作用、特に皮膚障害については適切なスキンケアと早期対応が重要です。また、完全ヒト型抗体であることから、インフュージョンリアクションのリスクは比較的低いものの、投与中の注意深い観察は欠かせません。

参考文献・出典情報

ベクティビックス点滴静注400mgの基本情報|日経メディカル処方薬事典

医療用医薬品:ベクティビックス|KEGG MEDICUS

世界初RAS遺伝子野生型大腸がんに対する標準治療を確認|国立がん研究センター

RAS野生型大腸がんに対する抗EGFR抗体薬の最適な投与対象をリキッドバイオプシーにより特定|国立がん研究センター

大腸がんへのパニツムマブ併用療法が10年ぶりに全生存期間を延長|がん治療・癌の最新情報リファレンス

個別化医療|大腸がんサポートnavi|武田薬品

ベクティビックス点滴静注100mg・400mg|武田薬品 医療関係者向け情報

高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省

医療費の負担を軽くする公的制度|国立がん研究センター がん情報サービス

ベクティビックス(パニツムマブ)|がん情報サイト「オンコロ」

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本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

「腰がすこし痛むだけで、再発か?転移か?と不安で一睡もできなくなる」

「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

こんな苦しみに溢れています。

年齢を重ねると、たとえ健康であっても、つらいことはたくさんありますよね。

それに加えて「がん」は私たちから、家族との時間や、積み重ねたキャリア、将来の夢や希望を奪おうとするのです。

なんと理不尽で、容赦のないことでしょうか。

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