卵巣がんはお腹の中(腹腔内)全体に広がりやすい特徴があり、種を播いたような形で転移(播種性転移)していきます。卵巣がんでしばしは用いられる腹腔内化学療法(IP療法)とは、腹腔に直接抗がん剤を入れる方法です。
これによって腹腔内のがん細胞に直接抗がん剤を触れさせることができるので、治療効果が高いとされています。また、腹膜を通して抗がん剤が血管内に入り、他の部位のがんにも作用することができます。
IP療法は抗がん剤を点滴投与する方法に比べて、抗がん剤をより大量に投与できること、吐き気などの副作用が少ないなどの利点があります。なお、この治療法は手術で腫瘍をほとんど摘出できたステージ3期の方が対象となります。
具体的な方法
腫瘍の摘出が終わり、お腹を閉じる前にポートと呼ばれる薬液注入装置を皮層の下に埋め込み、ポートにつながった細い管(カテーテル)を腹腔内に入れて抗がん剤を注入します。
シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチンなどの抗がん剤を使用し、21日間隔で6~8コースを行うのが一般的です。
しかし、カテーテルをお腹に入れるので、感染症や腹膜炎、またカテーテルの閉塞、腸との癒着、腸管穿孔(穴があくこと)などの危険性があります。また高濃度の抗がん剤を注入するので、その刺激で腹痛、局所の炎症、腹膜の癒着、腎機能障害などの副作用もあります。
IP療法は、治療成績がよいという報告もありますが、現在、日本ではまだ推奨というところまできていません。副作用の問題や最適な薬剤の用量など、まだ解決すべき問題があります。安全で有効な治療法としての確立は臨床試験の結果が待たれるところです。
以上、卵巣がんの化学療法についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。