大腸がんの薬物療法は、2000年以降、大きく変化しました。抗がん剤をいくつか組み合わせたり、アバスチンなどの分子標的薬の開発によって以前よりも腫瘍縮小効果が期待できるようになりました。とくに切除不能な再発・転移がんでは、以前は生存期間が1年未満でしたが、現在はおよそ3年とされています。
大腸がんの薬物療法は、次のようなときに行われます。
転移がある場合や再発した場合
がんがリンパ節や肝臓、肺など他の臓器に転移したときや再発した場合は、局所治療である手術では対応できないことが多く、広い範囲に効果を示す薬物療法が中心となります。
最近では手術前に薬物療法を行い、がんの範囲を小さくしてから手術を行い、身体的な負担をできるだけ軽減する手法も用いられるようになっています。転移臓器が肝臓だけ、あるいは肺だけの場合、可能であれば手術するケースが多いのも大腸がんの特徴です。
手術後に大腸がんが再発する可能性がある場合
手術でがんを肉眼的に取り切れたとしても、目に見えない小さながんが残っている可能性がある場合、手術後の再発を予防するために「術後補助化学療法(手術後の補助として薬を使うこと)」を行います。Ⅲ期およびⅡ期で再発の危険性が高い場合が対象となります。
がんが大きく手術不可能だが病変が局所にとどまっている場合
転移はないけれど、がんが大きくてすぐには切除が難しい場合は、がんを小さくするために手術の前に薬物療法や放射線療法を行うことがあります。
手術前の治療でがんが小さくなれば、手術が可能になることもあります。直腸がんでは手術前にTS-1の服用と放射線療法を併用する「術前化学放射線療法」も行われています。
以上、大腸がんの薬物療法についての解説でした。