がん治療で放射線を照射するとき、照射の標的となる部分(計画標的体積)は、がん腫瘍の一時的な移動まで考慮に入れて決定します。
しかし実際の照射では、放射線のビームなどの調整の問題から、標的となる部分が完全に入る長方形を狙います。しかし、長方形に照射すると、その四隅には正常な組織が多く入ってしまいます。
そこで、正常な組織への照射を避けるため、その部分の手前に、たとえば鉛などの放射線を通しにくい物質を置き、放射線をさえぎるようにします。この照射範囲の設定と放射線を正確に当てる技術も最近大きく発達し、精度が格段に向上したため、正常な組織への"むだ撃ち"もたいへん少なくなりました。
さらに現在では、放射線発生装置に自由に変形できる"絞り"を設置する方法も登場しています。これは、放射線の照射範囲を、従来の単純な長方形でなく、がんの形に合わせて自在に変える技術です。
放射線を遮断する長方形の板を何枚も組み合わせ、それらを細かくずらしていけば、個々のがんの複雑な形に近づけることができます。これを「多段絞り」と呼びます。一方、かつての放射線治療では、X線を上下2方向のみから当てていました。しかしがんが体の深部にある場合には、X線は、がんの手前や背後にある正常な組織に一様に障害を与えてしまいます。
そこで最近では、上下2方向に加えて、左右2方向からもX線を照射して、がんにより多くの放射線を当てる方法がとられます。この手法をさらに発展させたのが、「回転照射」です。これは放射線の発生装置を回転させながら患者の体のまわりから照射し、放射線をがんに集中させるのです。
このとき、多段絞りを利用すれば、ビームの絞りの形を、ある方角から見たがんの形に正確に合わせることができます。そこで、装置の回転に合わせて絞りを変えながら、照射を行います。これはがんそのもの(原体)の形に合わせて照射できるので、「原体照射」と呼びます。
以上、放射線治療についての解説でした。
私がサポートしている患者さんでも放射線治療を受けている方は多くいます。手術に比べてダメージが少ないですが、再発のリスクや後遺障害のデメリットもあります。
がんと闘うためには総合的なアプローチが必要です。