膵臓がんで手術ができないと診断された場合、化学療法(抗がん剤など薬をつかった治療)を単独で行うか、放射線治療と組み合わせて行います。
化学療法では抗がん剤の効果を高めるため、膵臓に至る血管に直接抗がん剤を注入する「動注法」を施行する医療施設もあります。膵臓がんに対して、抗がん剤はこれまで代謝拮抗剤のフルオロウラシル(5-FU)が中心に用いられてきました。
しかし、この薬はそれほど治療効果が高くなく、がんが半分以下に縮小する割合(奏効率)は患者の10~20パーセントにすぎません。これに対して近年は、同じ代謝拮抗剤のゲムシタビン(ジェムザール)がおもに用いられるようになっています。
ゲムシタビンの奏功率はフルオロウラシルとそれほど変わらないものの、投与によって痛みが和らぐと報告されています。また、フルオロウラシルのみで1年以上生存する例はきわめてまれでしたが、ゲムシタビンを使用した場合、患者の約20パーセントが1年以上生存するとの報告があります。
膵臓がんに対してはこの他、フルオロウラシル系の混合薬剤TS1やプラチナ製剤のシスプラチン、植物アルカロイドのイリノテカン、新しい免疫療法薬のビルリジンなどが、単独、もしくは他の薬と組み合わせて使用されています。
また、血管新生阻害剤ベバシズマブも治療効果が期待されています。しかし、化学療法や放射線治療に患者の体が耐えられないと考えられるときは、黄疸の治療や痛みの治療が中心になります。
以上、膵臓がんについての解説でした。