こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
神奈川県内で受けられる高精度放射線治療について、最新の情報をお伝えします。サイバーナイフやトモセラピーといった体への負担が少ない治療法から、重粒子線・陽子線といった最先端の粒子線治療まで、神奈川県には多様な選択肢があります。
神奈川県における高精度放射線治療の全体像
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
神奈川県は、日本国内でも有数の高精度放射線治療施設が集積する地域です。特に注目すべきは、重粒子線治療施設と陽子線治療施設の両方が稼働している点です。これは東京都を含めても限られた環境であり、患者さんにとって幅広い治療選択肢が提供されています。
高精度放射線治療は、がん細胞に集中的に放射線を照射することで、周囲の正常組織へのダメージを最小限に抑える治療法です。通院治療が可能なケースも多く、日常生活を続けながらがん治療を受けられることが大きな特徴となっています。
サイバーナイフ治療が受けられる施設
サイバーナイフは、ロボットアームを用いた定位放射線治療装置で、脳腫瘍だけでなく体幹部のがんにも対応できます。治療中の患者さんの動きを自動追尾するシステムにより、高い精度での照射が実現されています。
茅ヶ崎中央病院 サイバーナイフセンター
所在地:神奈川県茅ヶ崎市茅ヶ崎中央
茅ヶ崎中央病院では、サイバーナイフによる定位放射線治療を提供しています。多方向からの放射線照射により、周囲の正常組織への被ばくを軽減しながら病変部へのピンポイント照射を実現しています。治療は通院で受けることができ、1回の治療時間は20分から1時間程度です。
健康保険が適用される治療で、定位照射の場合は照射回数に関わらず10割負担で63万円となります。3割負担の方の場合、実際の負担額は約19万円となり、さらに高額療養費制度を利用することで自己負担を軽減できます。
新百合ヶ丘総合病院 高度放射線治療センター(サイバーナイフセンター)
所在地:神奈川県川崎市麻生区古沢都古255
新百合ヶ丘総合病院のサイバーナイフセンターでは、脳腫瘍や頭頸部がんに加えて、肺がん、肝臓の腹部リンパ節転移、胃がん腹部リンパ節転移、卵巣がん骨盤内再発、再発乳がん、膵臓がんの手術後残存などに対する治療実績があります。
同センターでは、2日から5日程度の分割治療が可能で、従来のガンマナイフでは困難だった径2.5cm以上の大きな脳腫瘍や、視神経や脳幹などの重要組織の近傍にある脳腫瘍の治療も行えます。治療は基本的に外来通院で実施され、1回の治療時間は約30分程度です。
済生会横浜市東部病院
所在地:神奈川県横浜市鶴見区下末吉3-6-1
2011年4月にサイバーナイフを導入し、脳神経センター、呼吸器センター、消化器センターと連携して治療を行っています。この病院の特徴として、脳や頭頸部よりも肺、縦隔へのサイバーナイフ実施が多いという実績があります。
がん細胞へのピンポイント照射が可能で、脳や頭頸部だけでなく肺、肝臓、膵臓、前立腺、腎臓など幅広い部位のがんに使用実績があります。1回から5回程度の外来通院で治療ができるため、仕事や家事など普段の生活との両立が可能です。
その他の放射線関連設備として、リニアック装置や位置決め用X線/CT装置を備えています。早期の前立腺がんに対しては、ヨウ素125永久刺入密封小線源療法も実施しています。
新緑脳神経外科 横浜サイバーナイフセンター
所在地:神奈川県横浜市旭区市沢町574-1
脳神経外科を標榜していますが、体幹部へのサイバーナイフ実施も可能です。適応としているがんの部位は、脳腫瘍、悪性リンパ腫、頭頸部がん(咽頭がん、喉頭がん、口腔がん、鼻腔・副鼻腔がん、聴器がん)、肺がん(原発性、転移性)、肝臓がん(原発性、転移性)、前立腺がんなど多岐にわたります。
トモセラピー治療が受けられる施設
トモセラピーは、強度変調放射線治療(IMRT)と画像誘導放射線治療(IGRT)を組み合わせた装置です。CT装置のように患者さんの周りを回転しながら放射線を照射するため、複雑な形状の腫瘍にも対応できます。
湘南鎌倉総合病院
所在地:神奈川県鎌倉市岡本1370番1
2010年に神奈川県初となるトモセラピーを導入し、現在は2台体制で年間300名以上の患者さんの治療を行っています。治療前に毎回CT撮影を行うことで、腫瘍および周囲の正常臓器の位置を確認し、治療計画通りになるよう体の位置を微調整します。
コンピューター制御によって放射線の形状と強度を複雑に変化させながら360度方向から照射することで、放射線を腫瘍に集中させ、周囲の正常臓器への照射を最小限に抑えます。
治療部位として多い順に、骨腫瘍・骨転移、乳がん、前立腺がん、脳・脊髄腫瘍、悪性リンパ腫、子宮がん、肺がん、食道がん、膀胱がんなどがあります。1回の治療時間は10分から20分程度で、通常は1日1回、週5日間の照射を数回から数十回に分割して行います。
前立腺がんに対しては小線源治療も可能です。その他の放射線関連機器として、320列マルチスライスCT、3.0テスラMRI、小線源治療装置などを設備しています。2025年2月には小線源治療装置が更新され、組織内照射が可能となりました。
北里大学病院
所在地:神奈川県相模原市南区北里1-15-1
トモセラピーのほか、高精度外部照射ライナック機器であるトゥルービームを設備しています。がんの部位や病変の状態などによって機器を使い分けて治療にあたります。外部放射線治療装置としてトモセラピーなどを設置し、高精度な画像誘導放射線治療(IGRT)を提供しています。
重粒子線治療施設
神奈川県立がんセンター 重粒子線治療施設「i-ROCK(アイロック)」
所在地:神奈川県横浜市旭区中尾2-3-2
電話:045-520-2222(代表)、045-520-2225(重粒子線治療電話相談窓口)
i-ROCKは、Ion-beam Radiation Oncology Center in Kanagawaの略称で、2015年12月に治療を開始しました。日本で5か所目となる重粒子線治療施設であり、がん専門病院に併設された世界初の重粒子線治療施設です。2025年3月時点での累計治療実績は4,335件に達しています。
重粒子線治療は、炭素イオンを光の速さの約70%まで加速した「重粒子線」を体の奥のがん細胞に照射する治療法です。重粒子線は狙った深さ以上に突き抜けないという特徴があり、がん病巣だけを集中して照射するため、周辺の正常な細胞を傷つけにくく、副作用を減らすことができます。
エックス線は病巣を突き抜けて奥の正常組織にも放射線が当たりますが、重粒子線は病巣で最大エネルギーを放出して止まるため、奥の正常組織には影響を与えません。また、エックス線や陽子線などに比べて、がんを殺傷する能力が高いため、放射線治療が効きにくかった肉腫などの難治性がんにも効果が期待できます。
i-ROCKでは、最新の照射技術である高速三次元スキャニング照射法による重粒子線治療を実施しています。これにより、がん病巣の形状に合わせて正確に照射でき、病巣周辺の正常組織へのダメージを従来よりもさらに低く抑えられます。自動的にコンピューターで調整できるロボット治療台や、治療室全室にCTを設置し、精密でスムーズな治療を実現しています。
がんセンター併設型のため、重粒子線治療以外の治療も充実しており、手術や抗がん剤治療が必要になる場合にも迅速に対応できます。また、放射線治療科では最新機種を含めたリニアック4台体制でエックス線による高精度放射線治療も行っており、患者さんごとに適した放射線治療を提供しています。
重粒子線治療の対象疾患と保険適用
重粒子線治療は、臨床研究の段階から始まり、先進医療を経て、現在は多くの疾患で保険診療が認められています。
保険適用されている疾患(2026年1月時点):
・頭頸部悪性腫瘍
・骨軟部腫瘍
・早期肺がん
・大きな肝細胞がん
・肝内胆管がん
・膵がん
・大腸がん術後骨盤内再発
・子宮頸部腺がん
・大きな子宮頸部扁平上皮がん
・婦人科悪性黒色腫
先進医療として実施されている疾患:
・限局性前立腺がん(転移のない前立腺がん)
・転移性腫瘍(肺転移、肝転移、リンパ節転移)
重粒子線治療の費用
保険適用の場合、自己負担割合は0割から3割で、高額療養費制度が利用できます。疾患により以下の費用が設定されています:
・頭頸部悪性腫瘍、骨軟部腫瘍、早期肺がん、大きな肝細胞がん、肝内胆管がん、膵がん、大腸がん術後骨盤内再発、子宮頸部腺がん、大きな子宮頸部扁平上皮がん、婦人科悪性黒色腫:237万5千円(10割負担の場合)
・転移のない前立腺がん:160万円(10割負担の場合)
先進医療の場合、重粒子線治療技術料は照射回数に関わらず一連の治療で350万円となり、全額自己負担となります。ただし、先進医療特約を利用できる場合があります。重粒子線治療技術料以外に発生する診察、検査、薬代などについては健康保険が適用されます。
神奈川県では、県立がんセンターで重粒子線治療を受ける神奈川県民の患者さんを対象に、公的医療保険が適用されない治療費の助成(上限35万円)や、治療費を金融機関から借り入れた場合の利子補給制度を実施しています。また、大和市民の患者さんには、大和市独自の助成制度もあります。
受診方法
i-ROCKでの重粒子線治療は、医療機関からの紹介予約制となっています。現在診療を受けている医療機関の医師から紹介状を作成してもらい、診断画像データ(CD-ROM)とともに患者支援センター(重粒子線治療受付)へ郵送します。担当医師が初診日を決定し、患者支援センターより医療機関と患者さんへ文書で連絡されます。
陽子線治療施設
湘南鎌倉総合病院 先端医療センター陽子線治療室
所在地:神奈川県鎌倉市岡本1370番1
電話:0467-46-9966(陽子線治療専用ダイヤル)
湘南鎌倉総合病院は2022年1月より陽子線治療を開始しました。神奈川県唯一の陽子線治療施設として、都心からのアクセスも良好な立地にあります。東京駅や新宿駅など東京方面からも公共交通機関で来院しやすく、広域からの患者さんに対応しています。
陽子線は体表面から深い位置でエネルギーが急速に高まり、その後急速に低下する性質があります。この性質を利用して、狙った病変に強い線量を集中させ、正常組織へのダメージを軽減できます。
日立製作所の小型陽子線治療システム「PROBEAT-M1」を導入しており、スポットスキャニング照射技術、コーンビームCTを搭載した360度回転ガントリー、動体追跡システムなどの先進的な技術を備えています。治療計画用PETを用いた治療計画が可能で、症例によっては治療計画の精度を向上させることができます。
担当スタッフは、筑波大学病院で陽子線治療に携わってきた東京医科大学放射線医学分野名誉教授の徳植公一医師をはじめとする、経験豊富な放射線治療専門医、医学物理士、放射線技師、看護師で構成されています。
陽子線治療の対象疾患と保険適用
保険適用されている疾患(2026年1月時点):
・前立腺がん
・小児がん
・骨軟部腫瘍
・頭頸部悪性腫瘍
・肝細胞がん
・肝内胆管がん
・局所大腸がん術後再発
・局所進行膵がん
・早期肺がん(2024年に保険適用拡大)
また、先進医療適用症例の治療も行っています。保険適用・先進医療の枠外であっても、陽子線治療適応判定委員会で治療に意義があると判断された場合は、自由診療での治療が可能です。
2025年8月からは前立腺治療の7回照射を開始するなど、治療回数の短縮も進んでいます。2024年度には早期肺がんの陽子線治療が保険適用となり、29名の患者さんが治療を受けました。手術が難しい患者さんも根治を目指せるようになりました。
陽子線治療の費用
保険適用の場合、治療費は患者さんの保険割合によって異なります。例えば、3割負担の方の場合、定位照射では約19万円程度となります。高額療養費制度の利用も可能で、限度額適用認定証の適応も受けられます。
先進医療の場合、陽子線治療技術料として約288万円が必要となりますが、これは全額自己負担となります。ただし、先進医療特約を利用できる場合があります。
治療の流れ
放射線腫瘍科の初診後、すべての患者さんに対して陽子線治療の適応であるかどうかを確認します。複数の診療科の医師、医学物理士、放射線技師、看護師などから構成される陽子線治療適応判定委員会において、1人1人の患者さんについて適応を議論します。
適応と判断された場合、2回目の来院時に治療の詳細について説明を受け、同意後に治療計画に入ります。治療計画用CTや必要に応じて造影CT、MRIなどを撮影し、過去の画像と合わせて治療計画を作成します。治療計画CTから治療開始まで1週間から2週間程度の日数が必要です。
治療時間は1回につき約15分程度で、治療台に寝ているだけで治療は終了します。切らずに、痛みや痒みもなく、麻酔の恐怖もありません。働きながら治療を受けられ、生活のリズムを変える必要もありません。
施設選びのポイント
神奈川県内で高精度放射線治療を受ける際には、以下の点を考慮して施設を選ぶことをおすすめします。
がんの種類と部位
治療の適応は、がんの種類、部位、大きさ、進行度によって異なります。サイバーナイフは脳腫瘍や肺がんなどの限局性病変に適しており、トモセラピーは複雑な形状の腫瘍や複数の病変に対応できます。重粒子線治療は骨軟部腫瘍など放射線抵抗性の高いがんに効果的で、陽子線治療は小児がんや正常組織への影響を最小限にしたい場合に選択されます。
通院の利便性
高精度放射線治療の多くは外来通院で実施できますが、数週間から数ヶ月にわたって定期的に通院する必要があります。自宅や職場からのアクセスや、公共交通機関の利便性も考慮すべき点です。
総合的な治療体制
がん治療では、放射線治療だけでなく、手術や化学療法を組み合わせた集学的治療が求められることがあります。神奈川県立がんセンターや湘南鎌倉総合病院のように、総合的ながん診療体制が整っている施設では、必要に応じて迅速に他の治療法へ対応できます。
費用と助成制度
保険適用の治療であっても、高額療養費制度の利用や自治体独自の助成制度を活用することで、実質的な負担を軽減できます。先進医療や自由診療の場合は、医療保険の先進医療特約の確認も重要です。
各治療法の比較
| 治療法 | 主な特徴 | 適応例 | 治療回数 |
|---|---|---|---|
| サイバーナイフ | ロボットアームによる定位放射線治療、動体追尾機能 | 脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、前立腺がん | 1回から5回程度 |
| トモセラピー | 強度変調放射線治療(IMRT)と画像誘導放射線治療(IGRT)の組み合わせ | 骨腫瘍、乳がん、前立腺がん、脳腫瘍、悪性リンパ腫 | 数回から数十回に分割 |
| 重粒子線治療 | 炭素イオン線、がん殺傷能力が高い、正常組織への影響が少ない | 骨軟部腫瘍、頭頸部がん、肺がん、肝臓がん、膵がん | 疾患により異なる(通常1週間から4週間程度) |
| 陽子線治療 | 陽子線、深部への影響を抑制、小児がんに適する | 前立腺がん、小児がん、骨軟部腫瘍、頭頸部がん、肺がん | 疾患により異なる(前立腺がんでは7回から38回) |
神奈川県の高精度放射線治療施設一覧
| 施設名 | 治療装置 | 所在地 | 導入時期 |
|---|---|---|---|
| 茅ヶ崎中央病院 | サイバーナイフ | 茅ヶ崎市 | - |
| 新百合ヶ丘総合病院 | サイバーナイフ | 川崎市麻生区 | - |
| 済生会横浜市東部病院 | サイバーナイフ | 横浜市鶴見区 | 2011年4月 |
| 新緑脳神経外科 | サイバーナイフ | 横浜市旭区 | - |
| 湘南鎌倉総合病院 | トモセラピー(2台)、陽子線 | 鎌倉市 | トモセラピー:2010年、陽子線:2022年1月 |
| 北里大学病院 | トモセラピー、トゥルービーム | 相模原市南区 | - |
| 神奈川県立がんセンター | 重粒子線(i-ROCK) | 横浜市旭区 | 2015年12月 |
まとめ
神奈川県は、サイバーナイフ、トモセラピー、重粒子線治療、陽子線治療という4つの主要な高精度放射線治療がすべて受けられる、国内でも稀有な地域です。特に重粒子線治療と陽子線治療の両方が稼働している点は、患者さんにとって大きなメリットとなっています。
各治療法にはそれぞれ特徴があり、がんの種類、部位、大きさ、進行度、患者さんの年齢や全身状態などによって、最適な治療法は異なります。現在の主治医とよく相談し、必要に応じて各施設のセカンドオピニオンを受けることをおすすめします。
また、保険適用の範囲や助成制度は随時更新されるため、最新の情報は各施設に直接お問い合わせください。神奈川県民の方は、重粒子線治療費助成制度なども活用できる場合があります。
高精度放射線治療は、がん治療の重要な選択肢の一つです。体への負担が少なく、日常生活を続けながら治療を受けられることは、患者さんの生活の質(QOL)を保つ上で大きな意義があります。
参考文献・出典情報
- 茅ヶ崎中央病院 サイバーナイフセンター
https://fg-cchp.jp/department/cyber-knife/ - 新百合ヶ丘総合病院 高度放射線治療センター
https://www.shinyuri-hospital.com/advanced_medical_technology/cyberknife.html - 済生会横浜市東部病院 一歩先の医療の提供
https://www.tobu.saiseikai.or.jp/innovative-medical-care/ - 新緑脳神経外科 サイバーナイフ
https://www.syck.jp/cyberknife - 湘南鎌倉総合病院 体外照射(トモセラピー)
https://www.skgh.jp/department/tomo-therapy/radiation/ - 神奈川県立がんセンター 重粒子線治療施設i-ROCK
https://kcch.kanagawa-pho.jp/i-rock/index.html - 神奈川県ホームページ 神奈川県立がんセンターの重粒子線治療について
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/w8d/gantaisaku/0401jyuuryuusi.html - 湘南鎌倉総合病院 陽子線治療について
https://www.skgh.jp/department/advanced/protontherapy/about/ - 公益財団法人医用原子力技術研究振興財団 日本の粒子線治療施設の紹介
https://www.antm.or.jp/information/clinic/ - 重粒子線治療ガイド 神奈川県立がんセンター
https://www.particle.or.jp/hirtjapan/facility/kanagawa-irock.html

