日本の膵臓がんによる死亡者数は継続的に増加しています。厚生労働省が公表した2012年度人口動態統計概数では、悪性腫瘍(悪性新生物=がん)による年間総死亡者数は36万963人であり、このうち、膵臓がんによる死亡者数は2万9916人でした(前年比1087人と微増)。
また、膵臓がんによる死亡者数は死亡総数(125万6359人)の2.4%にあたるとされました。これは、全死亡者のおよそ100人に2人は膵臓がんで死亡したことを示しています。死因としては、肺がん、胃がん、大腸がん、肝がんに次いで第5位となっています。
膵臓がんには地域差がある
全国47都道府県における膵臓がん標準化死亡比(一般集団との死亡の比率)を解析した最近の研究では、膵臓がんによる死亡状況に国内で地域差があることが明らかにされました。
北海道と東北地方(青森県、秋田県、宮城県)、島根県が男女ともに膵臓がん標準化死亡比が高いことが示されています。この地域差を規定する要因が何であるかは現時点では明らかではありません。
膵臓がんは高齢になるほどかかりやすい
膵臓がんは高齢になればなるほど罹患する確率は高まります。膵臓がんでは40歳台より急激に患者数が増加します。
膵臓がんは治りにくい
膵臓がんの性別年齢調整死亡率も最近では横ばいか、むしろ微増傾向となっています。膵臓がんの死亡率と罹患率はほぼ同率であることは以前より変わりありません。したがって、膵臓がんが現在もなお治療成績の著明な向上が見られない難治がんの代表選手であることを意味しています。
膵臓がんは男性がかかりやすい
日本膵臓学会によるデータによる解析では、ほぼ全年齢層において男性の膵臓がん罹患患者数は1.6倍ほど女性を上回っています。がんの進行度にかかわらず、患者数は男性優位です。
アメリカでも1.3倍ほど男性に多く、多くの国において男性は女性より高い罹患率を示しており、高齢になればなるほどその差は顕著になります。一方では、アフリカ系アメリカ人においては男女差を認めず、性別罹患率に人種差があることも報告されています。
世界の膵臓がん罹患状況
世界諸地域における膵臓がん罹患状況は、国際がん研究機関がまとめた「五大陸のがん罹患第9巻」の諸地域における膵臓がんの年齢調整罹患率から把握できます。
これによると、男女ともに罹患率が高いのは、アフリカ系アメリカ人、チェコ共和国であり、日本の罹患率も世界的に見ると上位(第3位、4位)にあることがわかります。日本では他国に比べて診断技術が高いことが理由の1つです。
インド、アルジェリアなどの発展途上国では罹患率は低いようですが、日本と異なり診断精度の低さがその背景にあることも推察されます。
以上、膵臓がんの罹患状況についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。