がんに関連してよく用いられる「生存率」とは、一般に、がんの診断を受けた人が、(治療期間をも含めて)その後の一定期間を生存できる確率のことです。
もっともよく用いられる「5年生存率」は、診断から5年後に生きている確率をいいます。1年生存率、3年生存率、10年生存率などの確率が使われることもあります。
進行の非常に速いがんについては、1年とか2年という短期間の生存率が使用され、また進行の遅いがんについては、10年あるいは15年という長期間の生存率が用いられることもあります。
生存率を厳密に定義しようとする専門家もいます。それは、途中で医師や病院の調査対象からはずれる患者とか、がんと診断された時期が明確ではない患者などがいて、正確なデータを得られないことが少なくないからです。
しかし、そのような小さな不確定要因を追跡することにあまり意味があるとは思われません。生存率を信憑性の高いものにするために、不特定多数の患者を追跡しつづけて厳密なデータをとることなど、現実には不可能だからです。
生存率はもともとアメリカで考え出された概念であり目安なので、アメリカにおける定義を参考にすることができます。アメリカのあるがん専門家は、がん患者の生存率を、次のように説明しています。
「特定のがんと診断されてから一定年数を経過して生存している患者の比率」仮に、西暦2000年12月に肝臓がんの診断を受けた100人の患者のうち、5年後の西暦2005年12月までに50人が死亡し、50人が生きていたとしたら、2005年におけるこのガンの5年生存率は、50パーセントということになります。
もちろんこれはおおざっぱな目安にすぎません。というのも、100人の患者はそれぞれ年齢や体質、がんの状態や診断時期、治療方法などが一様ではなく、誰にも当てはまる平均値ではないからです。
調査対象となった患者の数も問題です。ある病院が2人の肝臓がん患者を治療し、5年後に2人とも生存していれば、5年生存率は100パーセント、2人とも死亡すれば5年生存率はゼロとなってしまいます。これはどちらも他のがん患者に当てはめることはできません。
また、進行が非常に遅く、10年生存率や15年生存率がうんぬんされるようながんの患者が高齢の場合には、患者ががん以外の病気で死亡する可能性が高くなります。これも生存率を無意味にします。これらは、統計的な数値にはつねに危うい側面があり、個々の患者にそのまま当てはめることはできないことを物語っています。
しかし一般的には、調査対象となった患者の数が多くなるほど、そこから導かれる生存率は、妥当性(正確さ)が高まると考えることができます。
国内で発表されるがんの生存率は、がん治療を行っている医療機関から報告されたデータを自治体や国(厚生労働省)が集計し、平均値として公表したものです。
ただし、生存率の「生存」は、単に生きていることを意味し、たとえ植物状態でも「生存者1」となります。そこでは、患者の生活の質(QOL)や"生存の質"は考慮されていません。
以上、がんの生存率についての解説でした。