【レジメン】
<A法(毎週投与)>
Trastuzumab(トラスツズマブ:ハーセプチン) 初回=4mg/kg:点滴静注(90分)
Trastuzumab(トラスツズマブ:ハーセプチン) 2回目以降=2mg/kg:点滴静注(30分)
<B法(3週間ごと投与)>
Trastuzumab(トラスツズマブ:ハーセプチン) 初回=8mg/kg:点滴静注(90分)
Trastuzumab(トラスツズマブ:ハーセプチン) 2回目以降=6mg/kg:点滴静注(30分)
※Infusion reactionの発現回避などを目的とした抗ヒスタミン薬、副腎皮質ホルモンなどを用いた前投与の有用性は確認されていない
■基本事項
【適応】
・転移、再発症例
HER2陽性(IHC3+またはFISH陽性)の転移・再発乳がん
・術前化学療法
HFR2陽性(IHC3+またはFISH陽性)の乳がん
・術後化学療法
HER2陽性(IHC3+またはFISH陽性)の乳がん
・術前、術後療法など初期治療における投与期間は1年間である
<併用レジメンについて>
術後にほかの化学療法を行わずに(Trastuzumab単独の前に化学療法を行わずに)Trastuzumab単独療法を行うことの有用性を支持する根拠はない
※HER2陰性症例には効果は期待できず、使用すべきではない
【奏効率】
<転移・再発症例>
・奏効率
26%
・生存期間(中央値)
24.4カ月
<術前化学療法>
・病理学的完全寛解率
65.2%
※乳がんにおいては、メタアナリシスなどにより術前化学療法と術後化学療法の同等性が証明されている
※Trastuzumabの術前化学療法での有用性は小規模の試験結果のみであるが、メタアナリシスにより有用性が証明されている
<術後化学療法>
・3年後無病生存率
80.6%
・3年後生存率
92.4%
【副作用】
・疼痛:全症例=59%、重篤例=8%
・無力症:全症例=53%、重篤例=7%
・悪心:全症例=37%、重篤例=3%
・発熱:全症例=36%、重篤例=2%
・悪寒:全症例=22%、重篤例=0%
・下痢:全症例=36%、重篤例=2%
・頭痛:全症例=29%、重篤例=3%
■レジメンチェックポイント
①投与量の確認
<A法>
1回目4mg/kg、2回目以降2mg/kg
<B法>
初回8mg/kg、2回目以降6mg/kg
前日投与日から6週以上間隔があく場合は改めて8mg/kgから開始
②投与速度の確認
・初回:90分かけて
・投与2回目以降:Infusion reactionなどのアレルギー反応がなければ30分まで短縮可能
※Infusion reactionは本剤投与中および投与後24時間以内に多くあらわれ、主に初回投与時にあらわれやすい。したがって、本剤初回投与時は90分以上かけて投与し、患者を十分に観察する必要がある
■副作用対策と服薬指導のポイント
①心障
重大な副作用として、心障害がある。HERA試験の心障害解析では、重篤なうっ血性心不全が0.6%あったと報告され、心障害による投与中止が43%と報告されている。したがって、動悸や呼吸困難などの症状が出たらすぐに申し出るように伝える。また、投与中は適宜心エコーなどを行い、左室駆出率のモニターなどを行っていくことを伝える。特にアントラサイクリン系薬剤投与歴のある患者はリスクが高いと考えられるため、注意が必要である(HERA試験においても、投与中は3カ月ごとに心機能評価が実施されている)
※Trastuzumabによる心機能障害は可逆的であるため、投与中止により症状の改善が期待できる
②Infusion reaction
Infusion reactionによる死亡例も報告されていることから、特に初回では発熱、悪寒、呼吸困難などの違和感があれば、すぐに申し出るように伝える
※初回投与時には軽度~中程度のInfusion reactionが約40%の患者に発現する。このような場合には必要に応じ、解熱鎮痛薬や抗ヒスタミン薬などの投与を行い、症状が回復するまで十分に患者を観察する