短時間のしゃっくりは影響の強い症状ではないですが、長時間続くと生活上大きな影響を与えます。
持続する場合は速やかに主治医の診断を受けることが第一です。特に栄養障害や電解質異常、心室性不整脈を伴うしゃっくりは緊急的な対応が必要になります。
この記事では、予備知識としてがん闘病中にしゃっくりが続くとき、何が原因でどんな対処法があるのかについて整理しています。
※しゃっくり(吃逆)とは
しゃっくりは横隔膜と呼気肋間筋のけいれん性収縮によって引き起こされる、急激な吸気とその直後に声門が突然に閉鎖する現象のこと。
48時間以上続くものを持続性しゃっくり、1か月以上続くものを難治性吃逆と呼ぶ。
がん(腫瘍)によるしゃっくり
・脳腫瘍または脳転移によって生じる脳幹への直接刺激
・肺がんや肝臓がんの増大による横隔神経や迷走神経への直接刺激
手術によるしゃっくり
・全身麻酔に伴う気管挿管(声門刺激)、胸部や腹部の手術
化学療法(抗がん剤などの投薬)によるしゃっくり
・抗がん薬の副作用(シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、エトポシド、ゲムシタビン、イリノテカン、パクリタキセルなどで起こる)
その他の原因によるしゃっくり
・電解質異常(低ナトリウム血症、低カリウム血症、低カルシウム血症)
がん(腫瘍)によるしゃっくりが起きる原因の詳細
・脳腫瘍あるいは脳転移による中枢神経刺激(延髄、脳幹)
・頸部腫瘍による反回神経・横隔神経への刺激
・肺がん、胸膜播種による横隔神経・迷走神経・交感神経への刺激
・消化管拡張による迷走神経刺激(幽門部の胃がんによる胃の拡張9
・横隔膜への直接刺激(横隔膜膿瘍、肝臓腫瘍の増大、腸閉塞に伴う腸管ガス貯留、腹水貯留など)
化学療法によるしゃっくりが起きる原因の詳細
・シスプラチンやカルボプラチンなどの抗がん薬と、制吐薬として使用するデキサメタゾン、5-HT3受容体拮抗薬が相乗的にはたらくことで起きる。
・シスプラチンは、腸クロム親和性細胞を刺激してセロトニン分泌を亢進し、腹部迷走神経を活性化する。そして、延髄にある吃逆中枢を刺激してしゃっくりを誘発する。
・デキサメタゾンは、高用量では脳内に移行し、視床下部のステロイド受容体を活性化することでしゃっくりを誘発する。
・5-HT3受容体拮抗薬により5-HT3受容体がブロックされるために増加したセロトニンは、他のセロトニン受容体、特に5-HT3受容体を刺激する。これにより腸管の運動亢進が引き起こされ急激に起こった腸管刺激が、腹部迷走神経を介し、延髄にの神経を刺激ししゃっくりが起る。
しゃっくりが起きた場合の主な対処法、治療法
しゃっくりに対してはまだ決定的な対処法がないため、患者の様子をみながら以下の手段が試される。
【薬物による対策】
・抗けいれん薬(ガバペンチン:中枢神経性、クロナゼパム)
・筋弛緩薬(バクロフェン:筋弛緩作用ならびに吃逆中枢の抑制)
・向精神薬(クロルプロマジン:吃逆中枢の抑制、ハロペリドール)
・ドーパミン拮抗薬(メトクロプラミド:吃逆中枢の抑制。胃拡張に有効)
・漢方薬(柿てい湯、芍薬甘草湯、呉茱萸湯)
【薬物以外の対策】
・鼻咽頭刺激による吃逆反射弓の求心路抑制
・舌の牽引、スプーン1~数杯のグラニュー糖をなめる、経鼻胃管挿入、冷水をすする、レモンをかじる、コップの反対側から水を飲む。軟口蓋をスプーンや綿棒でこする、など
・迷走神経刺激
・バルサルバ法による耳抜き、氷水に顔をつける
・横隔神経への介入
・うつぶせで下肢を屈曲して腹部に抱え込み横隔膜を押し上げる、経鼻胃管挿入による胃内容物の除去
・呼吸への介入、
・くしゃみや咳欧の誘発、びっくりさせて息止めをさせる。