
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
がん治療を受けている中で、「今の病院から転院したい」と考える患者さんやご家族は少なくありません。主治医との関係に不信感を抱いたり、家族から「もっと良い病院があるのでは」と勧められたり、自宅に近い病院で治療を続けたいと思ったり、理由は様々です。
しかし、転院には慎重な判断が必要です。病院を移るたびに検査を繰り返したり、治療の継続性が途切れたり、患者さんの負担が増えることもあります。この記事では、転院を検討する際に知っておくべき重要な情報をまとめました。
セカンドオピニオンと転院の違いを理解する
まず理解しておきたいのは、「セカンドオピニオン」と「転院」は異なるものだということです。この違いを明確にしておくことで、自分が今本当に必要としているのはどちらなのかを判断できます。
セカンドオピニオンとは
セカンドオピニオンは、現在の担当医のもとで治療を受けることを前提に、別の医師から「第二の意見」を聞くことです。担当医を変えることや転院することではありません。
診断内容や治療方針について理解を深め、より納得して治療を受けるために利用します。セカンドオピニオンを受けた後は、現在の病院に戻って担当医と今後の治療について相談するのが基本です。
転院とは
転院は、現在の病院での治療に区切りをつけ、新しい医療機関で治療を継続することです。病院を完全に移ることを意味します。
セカンドオピニオンを受けた結果、別の医師のもとで治療を受けたいと判断した場合に、転院という選択をすることもあります。
| セカンドオピニオン | 転院 | |
|---|---|---|
| 目的 | 別の医師から意見を聞く | 治療する病院を変更する |
| その後 | 現在の病院に戻る | 新しい病院で治療を継続 |
| 治療・検査 | 行わない | 行う |
| 費用 | 保険適用外(自費) | 通常の保険診療 |
転院を考える前に確認すべきこと
転院を考える前に、まず現在の担当医と十分な話し合いを持つことが大切です。コミュニケーション不足から生じた疑問や情報不足であれば、担当医と話し合うことで解消される場合があります。
主治医に確認したいこと
治療方針への疑問がある場合、なぜその治療法を選んだのか、他にどのような選択肢があるのか、それぞれのメリットとデメリットは何かを率直に聞いてみましょう。
痛みや副作用の管理について不満がある場合も、まずは担当医に相談することで改善策が見つかることがあります。現在の2025-2026年においては、緩和ケアの選択肢も広がっており、痛み止めの方法も複数あります。
転院のリスクを理解する
転院には以下のようなリスクがあることを理解しておく必要があります。
治療の継続性が途切れる可能性があります。前の病院で行っていた治療の途中で転院すると、次の病院の医師は治療方針の決定に悩むことがあります。
検査の繰り返しが必要になる場合があります。診療情報提供書や検査データを持参しても、転院先の病院の判断で再度検査が必要になることがあります。
新しい医療スタッフとの関係構築に時間がかかります。医師や看護師との信頼関係を一から築き直す必要があり、患者さんにとって心理的な負担となることがあります。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
転院が必要なケースとは
それでも転院を検討すべき状況もあります。以下のようなケースでは、転院が患者さんにとって最善の選択となる可能性があります。
医療上の理由
痛みのコントロールが十分にできておらず、担当医に何度相談しても改善されない場合、緩和ケアに理解のある別の病院への転院が必要なこともあります。
現在の病院では受けられない特殊な治療や臨床試験が他の病院で実施されており、その治療を受けたい場合も転院の理由になります。
生活上の理由
家族が遠方に住んでいて看病が困難な場合、家に近い地元の病院への転院を検討することがあります。長期的な治療が必要な場合、通院の負担を軽減することは重要です。
仕事との両立を考えて、職場に近い病院への転院を希望する患者さんもいます。
信頼関係の問題
担当医に納得のいく説明を何度求めても対応してもらえず、信頼関係が築けない場合は、転院を考える理由になります。ただし、この場合もまずはがん相談支援センターなどに相談してみることをお勧めします。
転院の手続きと流れ
転院先を決める
転院を決心したら、まず次の病院を見つけておくことが重要です。
転院先の病院との話し合いがしっかりついてから、現在の病院と転院の話を進めましょう。
現在の病院とのつながりを保つ
転院する際も、現在の病院との関係を完全に断つことは避けるべきです。将来的に何らかの形で協力が必要になる可能性もあります。感謝の気持ちを伝えながら、円満に転院の手続きを進めることが大切です。
必要な書類の準備
転院には以下の書類や資料が必要です。
| 書類・資料 | 内容 |
|---|---|
| 診療情報提供書(紹介状) | 担当医が作成する、これまでの診断と治療の経過をまとめた文書 |
| 病理組織レポート | がんの組織診断の結果 |
| 検査データ | 血液検査、画像検査(CT・MRI・PETなど)の結果 |
| 画像データ | CD・DVD・レントゲンフィルムなど |
| お薬手帳 | 使用している薬の記録 |
診療情報提供書は、カルテをコンパクトにまとめた担当医の所見であり、転院先の医師が患者さんの状況を把握するために最も重要な書類です。診療情報提供料として保険診療点数が算定されるため、作成には担当医の診察が必要です。
転院先の探し方
主治医からの紹介
現在の担当医から転院先を紹介してもらうのが最もスムーズな方法です。担当医は地域の医療機関の情報を持っており、適切な病院を紹介できます。
セカンドオピニオンを通じて
セカンドオピニオンを受けた病院で転院の相談をすることもできます。セカンドオピニオンの結果、その病院で治療を受けたいと思った場合は、担当医に転院の意向を伝え、必要な書類の準備を依頼します。
がん相談支援センターの活用
がん診療連携拠点病院などに設置されている「がん相談支援センター」に相談する方法もあります。看護師やソーシャルワーカーが、転院先の病院探しをサポートしてくれます。
がん相談支援センターは、その病院に通院していない方でも無料で利用できます。電話や面談で相談が可能です。
地域の保健医療サービスの利用
地元の病院に移りたい場合は、保健所の保健師に相談することもできます。高齢者の場合は、市町村の介護支援担当部署に相談すると、地域の医療機関の情報が得られます。
がん診療連携拠点病院について
転院先を探す際に知っておきたいのが「がん診療連携拠点病院」の制度です。
がん診療連携拠点病院とは
がん診療連携拠点病院は、全国どこでも質の高いがん医療が受けられるように、厚生労働省が指定した医療機関です。2025年11月現在、全国に464施設(都道府県がん診療連携拠点病院51施設、地域がん診療連携拠点病院352施設、特定領域がん診療連携拠点病院1施設、地域がん診療病院60施設)が指定されています。
拠点病院の特徴
がん診療連携拠点病院には以下のような特徴があります。
専門的な知識と技能を持つ医師や医療従事者が在籍しており、手術、放射線治療、化学療法などの標準治療を提供できる体制が整っています。
緩和ケアチームが設置されており、がんによる痛みや苦痛を和らげるケアを受けることができます。
がん相談支援センターが設置されており、治療や療養生活に関する相談ができます。
セカンドオピニオンを受けられる体制が整っています。
院内がん登録を実施しており、治療成績などのデータを公開している病院もあります。
拠点病院以外の選択肢
自宅の近くに拠点病院がなくても心配する必要はありません。指定を受けていない病院の中にも、がん治療をきちんと行っている病院は数多くあります。
大学病院の多くは拠点病院になっていませんが、がん治療の経験が豊富な医師が在籍しています。病院のホームページで治療成績、年間の患者数、手術数などを公開している病院は、患者さんへの配慮が進んでいると判断できます。
通院しやすさも重要な要素
がん治療は長期戦です。片道何時間もかけて通うのでは、それだけで体力を消耗してしまいます。
よほど症例の少ない希少がんでない限り、標準治療が確立されている一般的ながんであれば、遠方の有名病院に通うメリットはあまりありません。自宅から無理なく通える範囲で、自分のがんの治療実績がある病院を探すことをお勧めします。
地域のより大きな病院との連携があり、必要に応じてそちらの病院で検査や治療が受けられる体制が理想的です。
転院時の注意点
治療方針の変更を安易に求めない
治療効果が思わしくないという理由だけで次々と病院を変えることは避けるべきです。治療によっては効果が出るまでにある程度の時間がかかることもあります。
がん診療連携拠点病院を中心に行われているがん診療は、「標準治療」を基本としています。標準治療とは、現時点で最も効果が期待でき、安全性が確立された最良の治療のことです。そのため、病院や医師によって意見が大きく異なることは多くありません。
転院先の受け入れ態勢を確認する
転院を希望しても、すべての病院が受け入れてくれるわけではありません。治療途中や経過観察のみの場合、継続診療が難しいケースもあります。
転院先の病院に事前に連絡し、受け入れが可能かどうか、どのような手続きが必要かを確認しましょう。
現在の病院のソーシャルワーカーに相談する
転院先が思うように見つからない場合は、現在入院している病院の医療相談室にいるソーシャルワーカー(ケースワーカー)に相談してみましょう。多くの場合、ソーシャルワーカーは患者さんの気持ちをよく聞き、中立的に行動してくれます。
まとめ:転院は慎重に、でも必要なら躊躇せずに
転院は患者さんにとって大きな決断です。まずは現在の担当医と十分に話し合い、セカンドオピニオンの活用も検討しながら、本当に転院が必要かどうかを慎重に判断することが大切です。
しかし、どうしても転院が必要な状況であれば、躊躇する必要はありません。患者さんが納得して治療を受けることが何より重要です。
転院を検討する際は、専門の相談窓口を積極的に活用し、適切な情報とサポートを得ながら、自分にとって最善の選択をしてください。
参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「セカンドオピニオン」
- 厚生労働省「がん診療連携拠点病院等」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センターとは」
- 転院の流れと手続きのポイントとは?メリットとリスクも紹介 | がんメディ
- 「転院」について知っておいて欲しい5つのこと | ミリオンズライフ
- 静岡県立静岡がんセンター「転院したいが主治医に言い出しにくい」
- ファイザー「がん患者入門~治療~セカンドオピニオンについて」
- がん医療の連携 | がん治療情報
- 静岡県立静岡がんセンター「複数の病院で治療を受けたが、病院、医師間の報告、連絡、相談などの連携で苦労をした」
- 国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科「患者さんの受け入れやご紹介について」