がん患者さんに「発熱」が起きた場合、「これは良い熱で、がんと戦っている証拠だ」などと言う人がいますが、実際には様々な要因があります。
熱が出て良い、というケースは稀で、何らかの異常、トラブルが起きているケースが多く、放置するよりも何らかの対策が必要なことが多いです。
この記事では、発熱は何が原因で起こるのか?どのような対処が望ましいか?ということについて記載したいと思います。
そもそも、発熱とは?
発熱=熱があるという場合、一般に、成人の腋窩温で37 .0℃以上に体温が上昇した状態を指します。
熱はその温度により微熱(37.0~37.9℃)、中等度発熱(38.0~38.9℃)、高熱(39.0℃以上)に分類されます。
がん患者さんの発熱に関する、主な原因
がん(腫瘍)によるもの
・がん自体が産生する発熱物質(サイトカイン)によるもの
・がんの壊死や虚血による炎症によって炎症細胞(単球、好中球、リンパ球)が産み出す発熱物質によるもの
・脳腫瘍などによる体温調節中枢の直接的な圧迫
手術によるもの
・手術後の治癒過程で生じる発熱
・手術後の合併症(創感染、縫合不全、カテーテル感染症など)によるもの
化学療法によるもの
・薬剤の副作用(症状の発現頻度は、使用する薬剤によって異なる
放射線によるもの
・照射の副作用(放射線肺臓炎など)
その他の原因によるもの
・感染症(日和見感染、菌血症など)
・疾患に併発するもの(肺がんによる閉塞性肺炎、胆管がんによる胆管炎など)
がん(腫瘍)による発熱の原因と対処法
がん自体から産生される発熱物質(サイトカイン)が、プロスタグランジンE2の産生を促進し、視床下部に作用して体温のセットポイントを上昇させる可能性があります。
がん自体による発熱(腫瘍熱)が起こる機序は、十分には明らかになっていません。
悪性リンパ腫、急性白血病、腎細胞がんに多いのが特徴です。(それ以外のがんでも起こることもある)
発熱初期から腫瘍熱だと判断するは難しいため、継続的な診察を受けましょう。
化学療法による発熱の原因と対処法
化学療法(抗がん剤の投与など)で骨髄の造血能がダメージを受けることによって好中球が減り、病原菌が容易に体内に侵入し感染性の発熱(発熱性好中球減少症:)が生じている可能性があります。
好中球の減少がすすみ、その期間が長いほど重症になる危険性(敗血症性ショックなど)があるため、投薬中の発熱があれば速やかに診断を受けましょう。
好中球減少は自覚症状がほとんどなく、血液データによってわかることが多いため、治療開始時から感染予防ケアを行うことが重要になります。
予防としては患者自身が除菌、手指の消毒などの感染予防ケアを実践することも重要です。
手洗い、うがいの励行だけでなく、毎日の入浴(もしくはシャワー)、排泄後の肛門周囲の洗浄などが効果的です。
好中球が減少している時期は、よく加熱調理した食事を摂取するよようにし、部屋に、植物、生花、ドライフラワーは置かないことや、ペットと同じ部屋での生活はできるだけ避けるほうがよいです。