
腹腔内化学療法
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
卵巣がんは、腹腔内に広がりやすい性質を持つため、手術後の治療戦略が重要です。その治療法の一つとして注目されているのが、腹腔内化学療法(IP療法)です。
お腹の中に直接抗がん剤を注入するこの治療法は、従来の静脈内投与とは異なるアプローチで、高い治療効果が期待される一方で、特有の副作用や実施における課題も存在します。
この記事では、卵巣がんの腹腔内化学療法について、その仕組み、適応となる患者さんの条件、使用される薬剤、具体的な治療の流れ、費用、そして現在の日本における位置づけまで、詳しく解説します。
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腹腔内化学療法(IP療法)とは何か
腹腔内化学療法は、英語でIntraperitoneal chemotherapyと呼ばれ、頭文字を取ってIP療法と略されます。
この治療法の最大の特徴は、抗がん剤を静脈から投与するのではなく、腹腔(お腹の中の空間)に直接注入する点にあります。
卵巣がんが腹腔内に広がる仕組み
卵巣がんは、他の多くのがんと異なる特徴的な転移様式を持っています。卵巣は骨盤の中で腹膜という膜に覆われた空間に位置していますが、卵巣がんの細胞は、腹腔内に剥がれ落ちて広がっていくことが多いのです。
これは「播種性転移」と呼ばれ、種を播いたように腹腔内のあちこちに小さながん細胞が散らばっていく状態を指します。腹膜、大網(胃から垂れ下がる脂肪組織)、腸管の表面、横隔膜の下など、腹腔内のさまざまな場所にがん細胞が付着して増殖します。
この播種性転移は、血液やリンパの流れに乗って遠くの臓器に転移するのとは異なり、腹腔という限られた空間内での広がりです。そのため、腹腔内に直接抗がん剤を投与することで、効率的にがん細胞を攻撃できると考えられています。
腹腔内化学療法の作用メカニズム
IP療法では、抗がん剤を腹腔内に注入することで、以下のような効果が期待されます。
第一に、腹腔内のがん細胞に抗がん剤が直接触れることができます。静脈内投与の場合、抗がん剤は血流を通じて全身を巡りますが、腹腔内の微小ながん細胞に十分な濃度の薬剤が到達するまでには時間がかかります。
IP療法では、腹腔内に高濃度の抗がん剤を直接投与するため、がん細胞に対する薬剤の曝露濃度が高まり、より強力な殺細胞効果が期待できます。
第二に、腹腔内に注入された抗がん剤は、腹膜を通じてゆっくりと血管内に吸収されます。このプロセスにより、腹腔内では高濃度を保ちながら、同時に全身への抗がん剤の供給も行われるため、腹腔外に存在する可能性のあるがん細胞にも効果を発揮できます。
腹腔内化学療法の適応となる患者さん
IP療法は、すべての卵巣がん患者さんに適用されるわけではありません。この治療法が検討されるのは、特定の条件を満たした患者さんに限られます。
対象となるステージと病状
IP療法の主な適応となるのは、ステージIII期の卵巣がん患者さんです。ステージIII期とは、がんが骨盤を越えて腹腔内に広がっているものの、腹腔外への明らかな遠隔転移がない状態を指します。
さらに重要な条件として、手術によって腫瘍をほぼ完全に摘出できていることが必要です。具体的には、残存腫瘍の大きさが1cm以下、理想的には肉眼的に見える腫瘍がすべて切除されている状態(最適減量手術が達成された状態)が望ましいとされています。
なぜなら、IP療法の効果は、微小ながん細胞に対して最も高く発揮されるためです。大きな腫瘍が残っている場合、抗がん剤が腫瘍の内部まで十分に浸透しにくく、治療効果が限定的になってしまいます。
| 条件 | 詳細 |
|---|---|
| 対象ステージ | 主にステージIII期 |
| 手術の結果 | 腫瘍がほぼ完全に摘出されている(残存腫瘍1cm以下) |
| 組織型 | 主に漿液性腺がん(卵巣がんの中で最も多いタイプ) |
| 全身状態 | カテーテル留置と治療に耐えられる体力がある |
| 腎機能 | 正常な腎機能を有している(プラチナ製剤使用のため) |
IP療法が適さないケース
以下のような場合、IP療法は適応とならないか、慎重な判断が必要です。
手術後に残存腫瘍が大きい場合や、腹腔内に癒着が広範囲にある場合は、抗がん剤が腹腔内に均一に行き渡らない可能性があります。
腎機能が低下している患者さんの場合、IP療法で使用されるプラチナ製剤の副作用リスクが高まるため、慎重な評価が必要です。
また、全身状態が良好でない場合、カテーテルの留置手術や治療による負担に耐えられない可能性があります。
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腹腔内化学療法で使用される薬剤
IP療法では、複数の抗がん剤が使用されます。これらの薬剤は、静脈内投与と腹腔内投与を組み合わせて用いられることが一般的です。
主要な使用薬剤
シスプラチンは、IP療法において中心的な役割を果たすプラチナ製剤です。DNAに結合してがん細胞の増殖を阻害する作用を持ち、腹腔内に投与することで高い局所濃度を保つことができます。ただし、腎毒性があるため、十分な水分補給と腎機能のモニタリングが必要です。
パクリタキセルは、タキサン系の抗がん剤で、細胞分裂を阻害する作用があります。IP療法では、静脈内投与と腹腔内投与の両方で使用されることがあります。腹腔内に投与した場合、腹膜を通じてゆっくりと吸収され、持続的な抗腫瘍効果が期待できます。
カルボプラチンは、シスプラチンと同じプラチナ製剤ですが、腎毒性がシスプラチンより軽減されています。IP療法のプロトコルによっては、シスプラチンの代わりにカルボプラチンを使用することもあります。
| 薬剤名 | 分類 | 投与経路 | 主な作用 |
|---|---|---|---|
| シスプラチン | プラチナ製剤 | 腹腔内 | DNA合成阻害、がん細胞の増殖抑制 |
| パクリタキセル | タキサン系 | 静脈内・腹腔内 | 微小管の安定化、細胞分裂阻害 |
| カルボプラチン | プラチナ製剤 | 静脈内 | DNA合成阻害 |
代表的な投与スケジュール
IP療法の標準的なプロトコルの一つは、以下のような組み合わせです。
1日目に、パクリタキセルを静脈内投与します。その後、2日目にシスプラチンを腹腔内に投与し、8日目に再びパクリタキセルを静脈内投与します。これを21日(3週間)で1サイクルとし、通常6サイクル実施します。
別のプロトコルでは、1日目にパクリタキセルとカルボプラチンを静脈内投与し、8日目にパクリタキセルを腹腔内投与する方法もあります。
いずれの方法も、静脈内投与と腹腔内投与を組み合わせることで、腹腔内の微小転移と全身のがん細胞の両方に対処することを目指しています。
腹腔内化学療法の具体的な実施方法
IP療法を行うためには、腹腔内に抗がん剤を注入するための専用の器具を設置する必要があります。
腹腔内ポートとカテーテルの留置
卵巣がんの腫瘍摘出手術が終わり、お腹を閉じる前に、腹腔内ポートという医療器具を設置します。
ポートとは、薬液を注入するための小さな装置で、胸や腹部の皮膚の下に埋め込まれます。ポートにはカテーテル(細い管)が接続されており、このカテーテルの先端が腹腔内に位置するように配置されます。
ポートは皮膚の下に完全に埋め込まれるため、外から見えることはほとんどありません。抗がん剤を投与する際には、皮膚の上から特殊な針をポートに刺して薬液を注入します。
カテーテルの位置は、腹腔内に均等に薬剤が行き渡るよう、慎重に決定されます。通常、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)付近に留置されることが多いです。
治療の実際の流れ
治療当日は、まず患者さんの全身状態を確認します。血液検査で腎機能や血球数を調べ、治療に問題がないかを評価します。
静脈内投与の抗がん剤は、通常の点滴と同様に腕の静脈から投与します。腹腔内投与の際は、皮膚の上からポートに針を刺し、抗がん剤を注入します。
腹腔内への投与時には、薬液が均等に広がるよう、患者さんに体位変換をしてもらうことがあります。右を下にしたり、左を下にしたり、仰向けになったりすることで、薬液が腹腔内のすみずみまで行き渡るようにします。
投与後は、吐き気や腹痛などの副作用に対する症状緩和の処置を行います。
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腹腔内化学療法の効果と臨床試験の結果
IP療法の有効性については、複数の臨床試験で検証されてきました。
海外での臨床試験結果
米国の婦人科腫瘍学グループ(GOG)が実施した大規模臨床試験(GOG172試験)では、最適減量手術を受けたステージIII期卵巣がん患者さんにおいて、IP療法を受けたグループが、従来の静脈内化学療法のみを受けたグループと比較して、全生存期間が約16か月延長したと報告されています。
具体的には、静脈内化学療法のみのグループの生存期間中央値が約49か月であったのに対し、IP療法を受けたグループでは約65か月でした。
この結果は、適切に選択された患者さんにおいて、IP療法が生存期間を延ばす可能性を示唆しています。
日本における状況
一方、日本においては、IP療法はまだ標準治療として確立されていません。日本婦人科腫瘍学会が発行している卵巣がん治療ガイドラインでも、IP療法は選択肢の一つとして言及されていますが、すべての施設で実施できる治療ではなく、また推奨度も限定的です。
その理由として、後述する副作用の管理の難しさ、専門的な技術と経験が必要なこと、日本人患者さんでの大規模な臨床試験データが十分でないことなどが挙げられます。
現在、日本でIP療法を実施している医療機関は限られており、大学病院やがん専門病院など、高度な医療を提供できる施設に集中しています。
腹腔内化学療法の副作用とリスク
IP療法は、高い治療効果が期待できる一方で、特有の副作用やリスクも存在します。
カテーテルやポートに関連する合併症
腹腔内にカテーテルを留置するため、以下のような合併症が起こる可能性があります。
感染症は、カテーテルやポートが留置されている部位から細菌が侵入することで起こります。皮膚の発赤、腫れ、痛み、発熱などの症状が現れた場合、速やかに医療機関に連絡する必要があります。重症化すると腹膜炎を引き起こすこともあります。
カテーテルの閉塞は、カテーテル内に血液や組織液が固まったり、フィブリンという物質が付着したりすることで起こります。閉塞すると、抗がん剤を注入できなくなるため、カテーテルの交換や洗浄が必要になることがあります。
腸管との癒着や腸管穿孔は、カテーテルが腸管を刺激したり、高濃度の抗がん剤の影響で腸管の壁が弱くなったりすることで起こる可能性があります。腸管穿孔は重篤な合併症であり、緊急手術が必要になることもあります。
| 副作用・合併症 | 原因 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 感染症・腹膜炎 | カテーテル留置部位からの細菌侵入 | 発熱、腹痛、創部の発赤・腫れ |
| カテーテル閉塞 | 血液やフィブリンの付着 | 薬液注入困難、カテーテル機能不全 |
| 腸管穿孔 | カテーテルによる刺激、抗がん剤の影響 | 激しい腹痛、発熱、腹膜炎症状 |
| 腹腔内癒着 | カテーテルや炎症による腹腔内の癒着形成 | 腹痛、腸閉塞症状 |
抗がん剤による副作用
腹腔内に高濃度の抗がん剤を投与するため、以下のような副作用が現れることがあります。
腹痛は、IP療法で最も頻繁に見られる副作用の一つです。抗がん剤が腹膜を刺激することで起こり、投与中や投与後数時間から数日間続くことがあります。鎮痛剤で症状を和らげますが、耐えられないほどの痛みの場合は、治療の継続が難しくなることもあります。
腎機能障害は、特にシスプラチンを使用する場合に注意が必要です。シスプラチンは腎臓に毒性があり、腹腔内投与であっても腹膜から吸収されて腎臓に到達します。治療前後には十分な水分補給を行い、定期的に腎機能検査を実施します。
吐き気・嘔吐は、抗がん剤の一般的な副作用ですが、IP療法でも起こります。吐き気止めの薬を併用することで、症状を軽減できることが多いです。
骨髄抑制(白血球や血小板の減少)は、全身に吸収された抗がん剤の影響で起こります。感染症のリスクが高まったり、出血しやすくなったりするため、定期的な血液検査でモニタリングします。
末梢神経障害は、パクリタキセルやシスプラチンの副作用として知られています。手足のしびれ、痛み、感覚の鈍化などが現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
副作用による治療中止率
臨床試験では、IP療法の副作用により、予定していた6サイクルの治療を完遂できなかった患者さんの割合が、静脈内化学療法と比較して高いことが報告されています。
副作用の程度には個人差があり、すべての患者さんが重篤な副作用を経験するわけではありませんが、治療を開始する前に、起こりうる副作用について十分に理解し、医療チームと相談することが重要です。
腹腔内化学療法の費用と保険適用
IP療法の費用については、いくつかの要素を考慮する必要があります。
治療にかかる費用の内訳
IP療法の費用は、以下の要素から構成されます。
まず、腹腔内ポートとカテーテルの留置手術の費用があります。これは通常、卵巣がんの腫瘍摘出手術と同時に行われることが多く、手術費用に含まれることが一般的です。
次に、抗がん剤の薬剤費があります。シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチンなどの薬剤費用は、使用する量や回数によって異なります。
さらに、投与時の処置費用、検査費用(血液検査、画像検査など)、入院費用(外来で実施する場合は外来処置費用)が加わります。
6サイクルの治療全体でかかる費用は、使用する薬剤の組み合わせや投与方法、入院か外来かによって異なりますが、数百万円規模になることがあります。
保険適用と自己負担
日本では、IP療法は保険診療として認められている場合と、臨床試験として実施される場合があります。
保険診療として行われる場合、患者さんの自己負担は、加入している健康保険の種類や年齢によって異なりますが、通常は医療費の1割から3割です。
ただし、がん治療は高額になることが多いため、高額療養費制度を利用することができます。この制度により、月ごとの医療費の自己負担額には上限が設定され、上限を超えた分は払い戻されます。
自己負担の上限額は、患者さんの所得によって異なり、一般的な所得の方の場合、月額約8万円から9万円程度が上限となります。
| 費用項目 | 概要 |
|---|---|
| ポート・カテーテル留置 | 手術時に実施、通常は手術費用に含まれる |
| 抗がん剤費用 | 使用する薬剤の種類と量による |
| 投与処置費 | 静脈内投与・腹腔内投与の処置費用 |
| 検査費用 | 血液検査、画像検査など |
| 入院費用 | 入院日数による(外来の場合は外来処置費) |
高額療養費制度の活用
高額療養費制度を利用するには、事前に限度額適用認定証を取得しておくと便利です。この認定証を医療機関の窓口に提示することで、支払い時から自己負担限度額までの支払いで済みます。
認定証は、加入している健康保険(国民健康保険、社会保険など)に申請することで取得できます。
また、年間の医療費が一定額を超えた場合、確定申告で医療費控除を受けることもできます。
腹腔内化学療法を実施している医療機関の選び方
IP療法は、専門的な技術と経験が必要な治療法のため、実施できる医療機関は限られています。
医療機関選択のポイント
IP療法を検討する際は、以下のような点を確認することが推奨されます。
まず、婦人科腫瘍を専門とする医師が在籍しているかどうかです。卵巣がんの治療経験が豊富で、IP療法の実施経験がある医師がいる施設を選ぶことが重要です。
次に、IP療法の実施件数です。年間どのくらいの症例でIP療法を行っているか、治療成績はどうかといった情報を確認できると良いでしょう。
また、副作用管理のための体制が整っているかも重要です。IP療法では、さまざまな副作用が起こる可能性があるため、24時間対応できる救急体制、集中治療室の有無、感染症対策の体制などを確認します。
さらに、臨床試験への参加の有無も一つの指標になります。最新の治療法を積極的に取り入れ、臨床試験を実施している施設は、治療に関する知識や技術が高い傾向があります。
セカンドオピニオンの活用
IP療法を勧められた場合や、逆にIP療法について相談したい場合は、セカンドオピニオンを受けることも有効です。
別の専門医の意見を聞くことで、自分の病状に対してIP療法が本当に適切かどうか、他の治療選択肢はないかなどを、より多角的に検討できます。
セカンドオピニオンを受ける際は、現在の主治医に紹介状や検査データを準備してもらい、他の専門医に相談します。多くのがん専門病院では、セカンドオピニオン外来を設けています。
腹腔内化学療法の現状と今後の展望
IP療法は、臨床試験で一定の効果が示されている一方で、いくつかの課題も指摘されています。
現在の課題
最大の課題は、副作用の管理です。前述のように、IP療法では腹痛、感染症、腎機能障害など、さまざまな副作用が起こる可能性があり、これらの副作用により治療を完遂できない患者さんが一定数存在します。
副作用を軽減しながら、治療効果を維持する方法の確立が求められています。
また、最適な薬剤の種類や用量、投与スケジュールについても、まだ研究が続けられています。どのような組み合わせが最も効果的で、かつ副作用が少ないのか、個々の患者さんに合わせた治療法の選択が重要になります。
さらに、日本人患者さんでの大規模な臨床試験データが不足している点も課題です。海外での試験結果が必ずしも日本人患者さんにそのまま当てはまるとは限らないため、日本での研究の蓄積が必要とされています。
今後の研究と新しいアプローチ
現在、IP療法の効果を高め、副作用を軽減するための研究が続けられています。
一つのアプローチとして、温熱化学療法(HIPEC:Hyperthermic Intraperitoneal Chemotherapy)があります。これは、加温した抗がん剤を腹腔内に循環させる方法で、熱の効果により抗がん剤の効果を高めることが期待されています。
また、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新しいタイプの抗がん剤を、IP療法と組み合わせる研究も進められています。
さらに、副作用を予測するバイオマーカーの研究も行われており、将来的には、IP療法の副作用が少ないと予測される患者さんを事前に選別できるようになる可能性があります。
患者さんが知っておくべきこと
IP療法を検討する際、患者さんが理解しておくべき重要なポイントをまとめます。
治療の選択は慎重に
IP療法は、適切に選択された患者さんにおいては生存期間を延ばす可能性がありますが、すべての患者さんに適しているわけではありません。
自分の病状、全身状態、残存腫瘍の大きさなどを考慮し、IP療法のメリットとリスクを十分に理解した上で、主治医とよく相談して決定することが大切です。
また、IP療法は専門性の高い治療であるため、経験豊富な医療チームがいる施設で受けることが推奨されます。
副作用への備え
IP療法では、腹痛、感染症、腎機能障害などの副作用が起こる可能性があることを理解しておく必要があります。
副作用が現れた場合は、速やかに医療チームに相談し、適切な対処を受けることが重要です。我慢せずに症状を伝えることで、症状の緩和や治療の調整が可能になります。
また、治療を完遂できない可能性があることも考慮し、その場合の代替治療についても、事前に主治医と話し合っておくと良いでしょう。
サポート体制の活用
がん治療は、身体的な負担だけでなく、精神的な負担も大きいものです。不安や悩みを一人で抱え込まず、医療スタッフ、家族、友人、患者会などのサポートを積極的に活用することが大切です。
多くの病院には、がん相談支援センターや緩和ケアチームがあり、治療や生活に関する相談ができます。
また、医療費の負担についても、医療ソーシャルワーカーに相談することで、利用できる制度や支援について情報を得ることができます。
まとめ
卵巣がんの腹腔内化学療法(IP療法)は、腹腔内に直接抗がん剤を投与することで、治療効果が期待できる方法です。
手術で腫瘍をほぼ完全に摘出できたステージIII期の患者さんが主な対象となり、シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチンなどの薬剤が使用されます。
臨床試験では生存期間の延長が示されていますが、腹痛、感染症、腎機能障害などの副作用もあり、治療を完遂できない患者さんもいます。
日本では、まだ標準治療として広く推奨されているわけではなく、実施できる医療機関も限られています。治療費は数百万円規模になることがありますが、健康保険と高額療養費制度を利用することで、自己負担を軽減できます。
IP療法を検討する際は、自分の病状に適しているか、経験豊富な医療機関で実施できるか、副作用への対処が可能かなどを、主治医とよく相談することが重要です。

