【レジメン】
DTX(ドセタキセル:タキソテール)=75mg/m2:点滴静注(1時間)
CPA(シクロホスファミド:エンドキサン)=600mg/m2:点滴静注(30分)
【前投薬】
①5-HT3受容体拮抗薬(Day1)
②デキサメタゾン9.9mgIV(Day1),8mgPO(Day2~3)
基本事項
【適応】
[術後化学療法]
・StageI~Ⅲの症例に推奨される
・腋窩リンパ節転移陽性、陰性にかかわらず効果が期待できる
・アントラサイクリン系薬剤が使用できない患者や心毒性が懸念される患者に適している
【奏効率】(乳がん術後化学療法)
・7年間無病生存率
81%
【副作用】
・貧血:Grade1=3%、Grade2=2%、Grade3=<1%、Grade4=<1%
・好中球減少:Grade1=<1%、Grade2=1%、Grade3=10%、Grade4=51%
・血小板減少:Grade1=<1%、Grade2=<1%、Grade3=0%、Grade4=<1%
・無力症:Grade1=43%、Grade2=32%、Grade3=3%、Grade4=<1%
・浮腫:Grade1=27%、Grade2=7%、Grade3=<1%、Grade4=0%
・発熱:Grade1=14%、Grade2=5%、Grade3=3%、Grade4=2%
・感染:Grade1=8%、Grade2=4%、Grade3=7%、Grade4=<1%
・筋肉痛:Grade1=22%、Grade2=10%、Grade3=1%、Grade4=<1%
・悪心:Grade1=38%、Grade2=13%、Grade3=2%、Grade4=<1%
・静脈炎:Grade1=8%、Grade2=3%、Grade3=<1%、Grade4=0%
・口内炎:Grade1=23%、Grade2=10%、Grade3=<1%、Grade4=<1%
・嘔吐:Grade1=9%、Grade2=5%、Grade3=<1%、Grade4=<1%
レジメンチェックポイント
①前投薬の確認:制吐薬・DTXによる浮腫予防
②投与量の確認(DTX):本邦での適応は75mg/m2までである
③アルコール過敏症の確認
DTX(タキソテール)の添付溶解液にはエタノールが含まれているので、アルコールに過敏な患者に投与する場合は、添付溶解液を使用せずに生理食塩液または5%ブドウ糖液で溶解すること。アルコールで希釈された製剤では、アルコールを抜くことはできないため注意する。なお、現在はプレミックス製剤でもアルコールを含有しない製剤も発売されている
※DTX製剤について
現在本邦においては、アルコールを含む添付溶解液にて希釈後使用する製剤と、すでにアルコールなどで希釈された製剤、およびアルコールを含有しない液体製剤などが販売されており、濃度・アルコール含有量が異なるため、注意が必要である
④投与時間の確認
・DTX:250または500mLの生理食塩液、または5%ブドウ糖液に混和し、1時間以上かけて点滴静注する
・CPA:生埋食塩液100mLに溶解し、30分で点滴静注
⑤減量基準
<DTX>
投与当日の好中球数が2,000/mm3未満であれば投与を延期する
<DTX:肝障害時の減量基準>
・T-Bil>ULNで投与中止
・AST/ALT>1.5×ULNかつALP>2.5×ULNで投与中止
<DTX:神経障害時の中止基準>
末梢神経障害≧Grade3:投与中止
<CPA:腎障害時の減量基準>
・GFR(mL/min)<10:25%減量
<CPA:肝障害時の減量基準>
・T-Bil 3.1~5.Omg/dL or AST >3×ULN:25%減量
・T-Bil >5.0mg/dL:中止
⑥相互作用
・DTX
アゾール系抗真菌薬(ミコナゾールなど)やエリスロマイシン、クラリスロマイシン、シクロスポリン、ミダゾラムの併用によりCYP3A4の阻害、またはDTXとの競合によりDTXの血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれることがある
・CPA
ペントスタチンとの併用により、心毒性の増強による死亡例が報告されているため、併用禁忌
副作用対策と服薬指導のポイント
①アルコールに関する問診(DTX)
自動車の運転など、危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること
②アレルギー症状(DTX)
皮膚の異常(蕁麻疹)、顔面潮紅、息苦しさ、動悸などが出現した場合は、すぐに申し出ることを伝える
③脱毛
DTX、CPAにより高頻度で発現し、治療後1~3週間で抜け始め、全治療終了後は回復する
④浮腫
DTXでは浮腫などの体液貯留が高頻度にみられ、DTXの総投与量が350~400mg/m2を超えると発現頻度が上がるため、足がむくむなどの症状が出れば申し出るように伝える
※毛細血管漏出症候群によるもので、発症後はデキサメタゾンなどを投与する
⑤骨髄抑制(DTX)
特に好中球減少は川量規制因子である。好中球減少は、ほかの抗がん剤に比べて比較的早期に起こり、投与開始後8~9日後に最低値となり、6~8日間で回復するといわれている。感染予防対策の指導を行う。37.5℃以上の発熱時には主治医に連絡する、また、発熱時に経口抗菌薬の内服を開始できるよう処方されていることが望ましい
⑥出血性膀胱炎
CPAでは予防として水分の摂取を心がける。血尿が出た場合には、すぐに申し出るように伝える
⑦筋肉痛・関節痛
投与後数日続くことがある。症状に応じてNSAIDs等の鎮痛薬を使用する
⑧手足症候群・皮疹
掌や足底に発赤や水疱の形成、手足に皮疹が出現することがある。ヘパリン類似物質などの保湿剤の予防的使用や症状出現時に対応できるよう、ステロイド外用剤(ジフルプレドナート等)が処方されていることが望ましい