ステージ2以降の膀胱がんでは、膀胱全摘出が第一選択です。
ですが膀胱を全摘すると自力での排尿が難しくなり、治療後の生活の質は著しく低下してしまうといえます。そんな現状のなか、膀胱を全摘しないで対処する「膀胱温存療法」が注目されています。
従来の膀胱全摘出の問題点
がんが筋層に浸潤したステージ2~3期の膀胱がんの場合、一般には膀胱全摘が行われます。ただし、膀胱全摘の手術はリスクが高い手術であり、体への負担も大きいといえます。手術後は新しい尿路を作ったり(この処置を回腸導管造設術といいます)、回腸を代用した袋を作って、そこに尿管や尿道をつなげたり(新膀胱造設術)、尿を体の外に出すための対処が行われます。
しかしストーマ造設後でも尿が漏れることがありますし、新膀胱を造設しても2、3時間おきにチューブによる導尿をしなければなりません。日常のストレスはとても強いものだといえます。こんなことになるのなら止めておこう、と治療をあきらめる人も少なくないのです。
高齢であったり、合併症をもっていて手術や難しい場合や、手術は可能でも認知症のため術後のストーマ管理ができないという場合もあります。
膀胱温存療法とは
膀胱温存療法とは、ひとことでいえば膀胱を全摘しないでできるだけがんを根治しようとする療法です。「化学療法+放射線治療」あるいは「放射線をかけたうえで部分切除を行い、化学療法を加える」といった方法が行われています。
膀胱温存療法は、がんの場所や浸潤の範囲によってできない場合もありますが、実施できるのなら体への負担も全摘より軽く、自力で排尿できるというメリットがあります。
とはいえ、病変の臓器を手術よりも「根治性(目に見えるがんを取り去る)」はどうしても劣るといえます。自力での排尿は難しくなっても、再発のリスクを最小限にするために全摘をしたいと考える方もいます。
選択肢があるのはよいことですし、どちらか選べる条件なのであれば、医師としっかり話をして決めましょう。
以上、膀胱がんについての解説でした。