
エキセメスタン(アロマシン)とは
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
エキセメスタンは、商品名「アロマシン」として知られる閉経後乳がん治療薬です。第三世代のアロマターゼ阻害薬に分類され、ステロイド系の構造を持つことが特徴です。
この薬剤は、閉経後の女性の体内でエストロゲンが作られる仕組みを阻害することで、エストロゲン依存性の乳がんの増殖を抑制します。錠剤タイプで、1日1回の服用となるため、患者さんにとって継続しやすい治療薬といえます。
エキセメスタンの作用機序と特徴
アロマターゼ阻害作用のメカニズム
閉経後の女性では、卵巣機能が低下するため、エストロゲンは主に脂肪組織や副腎で作られるアンドロゲン(男性ホルモン)から、アロマターゼという酵素によって変換されます。
エキセメスタンは、このアロマターゼ酵素に非可逆的に結合して不活性化させることで、エストロゲンの生成を強力に抑制します。臨床試験では、血中エストロゲン濃度を81~95%低下させることが確認されています。
ステロイド系と非ステロイド系の違い
アロマターゼ阻害薬には、ステロイド系のエキセメスタンと、非ステロイド系のアナストロゾール(アリミデックス)、レトロゾール(フェマーラ)があります。
エキセメスタンの化学構造はステロイドに似ており、アロマターゼの偽基質として働いて酵素を不可逆的に阻害します。一方、非ステロイド系は可逆的に阻害します。ただし、臨床的な有効性に差はないと考えられています。
対象となる患者さん
閉経後乳がんの治療
エキセメスタンは、ホルモン受容体陽性の閉経後乳がん患者さんが対象となります。具体的には以下のような場合に使用されます。
- 術後補助療法として
- 進行・再発乳がんの治療として
- 非ステロイド性アロマターゼ阻害薬治療後の二次治療として
閉経前の女性では、卵巣から直接エストロゲンが分泌されるため、アロマターゼ阻害薬だけでは効果が期待できません。そのため、この薬剤は閉経後の女性専用となります。
治療開始前の確認事項
治療を開始する前に、閉経後の状態をホルモン検査(LH、FSH、エストラジオールレベル)で確認する必要があります。また、エストロゲン受容体陽性であることの確認も重要です。
投与方法と投与スケジュール
基本的な投与方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投与量 | 1日1回 25mg |
| 投与時間 | 食後(食事の影響で吸収が39%上昇) |
| 投与経路 | 経口投与(錠剤) |
| 血中濃度 | 投与後約2時間で最高濃度に達する |
術後補助療法での投与期間
術後補助療法では、以下のような投与法が効果を実証しています。
①アロマターゼ阻害薬を5年間継続する方法
②タモキシフェン2~3年内服後、アロマターゼ阻害薬に切り替えて2~3年内服する方法(スイッチ療法、合計5年間)
③タモキシフェン5年内服後、アロマターゼ阻害薬を3~5年追加内服する方法(延長療法)
スイッチ療法は、タモキシフェンに対する耐性が獲得されやすい2~3年目に薬剤を変更することで、再発リスクをさらに低減できる戦略です。乳がん診療ガイドライン2022年版でも推奨されている方法です。
エキセメスタンの効果と奏効率
臨床試験での効果
国内の臨床試験では、ホルモン療法耐性例に対するエキセメスタン25mg群の奏効率は26.1%でした。また、海外の試験では24.2~28.1%の奏効率が報告されています。
術後補助療法としてのアロマターゼ阻害薬5年間投与は、タモキシフェン5年間投与と比較して、10年間の乳がん再発を20%減少させ、乳がん死亡を15%減少させることが、大規模なメタアナリシスで示されています。
無増悪生存期間の延長
進行・再発乳がんにおいて、エキセメスタン単独治療では無増悪生存期間の中央値が2.83ヶ月であるのに対し、後述するエベロリムスとの併用療法では6.93ヶ月と、2倍以上の延長が認められています。
エキセメスタンの主な副作用
重大な副作用
重大な副作用として、肝炎、肝機能障害、黄疸があります。AST、ALT、ALP、γ-GTPなどの上昇を伴う肝機能障害が発現することがあるため、定期的な血液検査でのモニタリングが必要です。
頻度の高い副作用
| 副作用の種類 | 主な症状 |
|---|---|
| ほてり・多汗 | エストロゲン低下による更年期様の症状 |
| 関節痛・骨痛 | 筋骨格系の痛み |
| 骨粗しょう症 | 骨密度の低下 |
| 消化器症状 | 悪心、食欲不振 |
| 神経系症状 | めまい、頭痛、疲労感 |
| 高血圧 | 血圧上昇 |
骨への影響と対策
エキセメスタンによるエストロゲン低下は、骨密度の低下を引き起こす可能性があります。そのため、治療中は以下の点に注意が必要です。
- カルシウムとビタミンDを十分に摂取する
- 適度な運動を継続する
- 定期的に骨密度検査を受ける
- 必要に応じて骨吸収抑制薬の併用を検討する
エベロリムス併用療法について
併用療法の適応
非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、レトロゾール)による治療後に病勢が進行した内分泌療法抵抗性乳がんに対して、エキセメスタンと分子標的薬エベロリムス(アフィニトール)の併用療法が有効性を示しています。
乳がん診療ガイドライン2022年版では、「非ステロイド性アロマターゼ阻害薬耐性の場合、エキセメスタン+エベロリムス併用療法を行うことを弱く推奨」としています。
併用療法の効果
BOLERO-2試験では、エキセメスタン単独治療の無増悪生存期間が2.83ヶ月であったのに対し、エキセメスタン+エベロリムス併用療法では6.93ヶ月と、約2.4倍に延長されました。
ただし、CDK4/6阻害薬治療後のエキセメスタン+エベロリムス併用療法の有効性は確立していないため、治療歴を考慮した選択が重要です。
併用療法の副作用
併用療法では、エキセメスタン単独と比較して副作用の頻度が高くなります。主な副作用は以下の通りです。
- 口内炎(57.5%、グレード3以上7.9%):投与開始後1ヶ月以内に出現することが多い
- 間質性肺疾患(18.0%、グレード3以上3.5%):定期的な胸部CT検査が必要
- 発疹、下痢、味覚異常
実際に治療を受けた患者さんの中には、「7日目までは何ともなかったが、その後は1日ごとに身体がだるくなり、口の中も荒れて大変だった」という経験をされた方もいます。
薬剤費と保険適応
エキセメスタンの薬価
2026年現在の薬価は以下の通りです(1錠25mg)。
| 製品名 | 薬価 |
|---|---|
| アロマシン錠25mg(先発品) | 182.7円 |
| エキセメスタン錠25mg(後発品) | 先発品より低価格 |
1日1回の服用なので、1ヶ月(30日)の薬剤費は約5,481円(先発品の場合)となります。これに診察料や検査費用が加わります。
エベロリムス併用時の費用
エベロリムス(アフィニトール)10mgの薬価は高額で、1日分で約2万円以上になります。そのため、エキセメスタン+エベロリムス併用療法を行う場合、月額の薬剤費は60万円を超えることもあります。
この高額な治療費については、後述する高額療養費制度の活用が不可欠です。
高額療養費制度と自己負担について
高額療養費制度の基本
高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。公的医療保険に加入している方なら誰でも利用できます。
自己負担の上限額は、年齢と所得によって異なります。例えば、70歳未満で年収約370~770万円の方の場合、月額の自己負担限度額は「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」となります。
2026年の制度見直しについて
重要な点として、2026年から高額療養費制度の見直しが行われます。2026年8月と2027年8月の2段階で自己負担上限額が引き上げられ、2027年には最大で38%増となることが決定しています。
一方で、急激な負担増を避けるため、2026年から新たに年間上限額が設けられることになりました。長期にわたる治療が必要な乳がん患者さんにとって、この年間上限額の設定は負担軽減につながる可能性があります。
限度額適用認定証の活用
高額な治療費が予想される場合は、事前に「限度額適用認定証」を申請することをお勧めします。この認定証を医療機関の窓口で提示すると、支払い額が自己負担限度額までとなり、一時的に高額な費用を立て替える必要がなくなります。
認定証の申請は、加入している医療保険(協会けんぽ、国民健康保険など)に行います。
多数回該当の仕組み
同じ世帯で、直近12ヶ月間に3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目からは「多数回該当」として自己負担限度額がさらに引き下げられます。
例えば、年収約370~770万円の方の場合、通常の限度額は約8万円ですが、多数回該当では44,400円に軽減されます。
投与時の注意点と併用注意薬
併用注意が必要な薬剤
エキセメスタンは主に肝代謝酵素CYP3A4で代謝されるため、この酵素に影響を与える薬剤との併用には注意が必要です。
| 薬剤の種類 | 影響 |
|---|---|
| CYP3A4誘導剤(リファンピシン、カルバマゼピンなど) | エキセメスタンの血中濃度が低下し効果が減弱 |
| エストロゲン含有薬剤(ホルモン補充療法、避妊薬など) | エキセメスタンの効果が低下 |
慎重投与が必要な患者さん
以下の患者さんでは、投与に際して慎重な判断が必要です。
- 重度の肝機能障害がある方:エキセメスタンの血中濃度が2~3倍に上昇する可能性
- 重度の腎機能障害がある方:同様に血中濃度が上昇する可能性
これらの患者さんでは、より頻繁なモニタリングが推奨されます。
日常生活への影響と対処法
副作用への対処
エキセメスタンによる副作用は、多くの場合、適切な対処により管理可能です。
ほてりや多汗に対しては、衣服の調整、涼しい環境の維持、十分な水分補給が有効です。関節痛には、適度な運動やストレッチ、必要に応じて鎮痛薬の使用を検討します。
定期的な検査
治療中は以下の検査を定期的に受けることが推奨されます。
- 肝機能検査(AST、ALT、ALP、γ-GTPなど)
- 骨密度測定
- 血圧測定
- 血中脂質検査
生活の質の維持
エキセメスタンによる治療は長期にわたることが多いため、生活の質を維持することが重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な休息を心がけることで、副作用の影響を最小限に抑えることができます。
また、気になる症状があれば、我慢せずに医師や薬剤師に相談することが大切です。
他のアロマターゼ阻害薬との比較
現在、日本で使用されているアロマターゼ阻害薬には、エキセメスタン(アロマシン)、アナストロゾール(アリミデックス)、レトロゾール(フェマーラ)の3種類があります。
これらの薬剤間で有効性に差はないと考えられていますが、副作用のプロファイルには若干の違いがあります。個々の患者さんの状態や副作用の出現状況に応じて、薬剤の変更を検討することも可能です。
治療の継続性について
術後補助療法として5年間、場合によってはさらに延長して内分泌療法を継続することは、再発予防に重要です。しかし、長期間の服薬は患者さんにとって負担になることもあります。
副作用による生活への影響、経済的な負担、服薬の継続性などについて、定期的に医師と相談し、必要に応じて治療計画を見直すことが大切です。
治療の中断や中止を考える場合は、自己判断せず必ず医師に相談してください。突然の中止は再発リスクを高める可能性があります。
まとめ
エキセメスタン(アロマシン)は、閉経後のホルモン受容体陽性乳がんに対する有効な治療薬です。アロマターゼを非可逆的に阻害することでエストロゲン産生を強力に抑制し、がんの増殖を抑えます。
主な副作用として、ほてり、関節痛、骨粗しょう症などがありますが、適切な管理により多くの患者さんが治療を継続できています。エベロリムスとの併用療法では、さらなる効果が期待できる一方、副作用も増加するため、治療の選択には慎重な検討が必要です。
2026年からの高額療養費制度の見直しにより、自己負担額が変更される可能性がありますが、限度額適用認定証の活用や多数回該当の制度を利用することで、経済的負担を軽減できます。
長期にわたる治療となりますので、定期的な検査を受けながら、医師とよく相談し、自分に合った治療を続けていくことが大切です。
参考文献・出典情報
- 医療用医薬品:アロマシン - 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
- 乳癌診療ガイドライン2022年版 - 日本乳癌学会
- CQ22 閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳癌に対する三次治療以降の内分泌療法 - 日本乳癌学会
- 医療用医薬品:アフィニトール - 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
- 高額療養費制度とは - ファイザー がんを学ぶ
- 高額療養費見直し、最大38%増 2026年から段階的に実施 - 東京新聞
- エキセメスタン(アロマシン)の特徴と副作用 - がん治療情報
- アロマシン(エキセメスタン) - がん情報サイトオンコロ
- 薬剤師のためのBasic Evidence(乳癌編) - 日医工株式会社
- アロマシン タモキシフェンの良きパートナー - がんサポート

