
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
リツキシマブ(商品名:リツキサン)は、悪性リンパ腫を中心とした血液がんの治療に広く使用されている分子標的薬です。2001年に日本で承認されて以来、治療成績の向上に貢献してきました。
この記事では、リツキシマブがどのような薬なのか、どんながんに効果があるのか、副作用はどの程度なのか、費用はどれくらいかかるのかなど、患者さんが治療を受ける際に知っておきたい情報を詳しく説明します。
リツキシマブ(リツキサン)とはどんな薬か
リツキシマブは、がん細胞の表面にある特定の目印(CD20という抗原)に結合して、がん細胞を攻撃する分子標的薬です。従来の抗がん剤とは異なる作用メカニズムを持つ、モノクローナル抗体と呼ばれるタイプの薬剤になります。
リツキシマブの作用機序と特徴
B細胞と呼ばれる免疫細胞には、CD20という表面抗原が存在します。リツキシマブはこのCD20に特異的に結合することで、以下のような作用を発揮します。
まず、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)により、体の免疫システムががん化したB細胞を認識して攻撃します。次に、補体依存性細胞傷害作用(CDC)により、血液中の補体というタンパク質ががん細胞の膜を破壊します。
リツキシマブはマウスとヒトの抗体を組み合わせた「キメラ型」モノクローナル抗体で、1991年にアメリカで開発されました。日本では全薬工業および中外製薬から発売されており、バイオシミラー(バイオ後続品)も複数のメーカーから販売されています。
対象となるがんと適応疾患
リツキシマブが保険適応となっている主な疾患を表にまとめました。
| 疾患分類 | 具体的な疾患名 |
|---|---|
| 血液がん | CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫 CD20陽性の慢性リンパ性白血病 免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患 |
| 自己免疫疾患 | 多発血管炎性肉芽腫症 顕微鏡的多発血管炎 既存治療で効果不十分なループス腎炎 全身性強皮症 |
| 血液疾患 | 慢性特発性血小板減少性紫斑病 後天性血栓性血小板減少性紫斑病 自己免疫性溶血性貧血(2025年7月31日より保険適用) |
| 腎疾患 | 頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群 難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型、ステロイド依存性、ステロイド抵抗性) |
| その他 | 難治性の尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡 視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発予防 臓器移植時の抗体関連型拒絶反応の抑制・治療 |
このように、リツキシマブは悪性リンパ腫などの血液がんだけでなく、自己免疫疾患や腎疾患など、幅広い疾患で使用されています。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
リツキシマブの効果と奏効率
リツキシマブの治療効果について、臨床試験で報告されているデータを見ていきます。
非ホジキンリンパ腫での効果
国内の臨床試験では、未治療の低悪性度またはろ胞性非ホジキンリンパ腫の患者さんに対して、R-CHOP療法(リツキシマブと4種類の抗がん剤の併用)を行った結果、寛解導入療法終了時の奏効率は95.2%と高い数値を示しました。
また、海外の臨床試験では、再発または難治性のろ胞性非ホジキンリンパ腫の患者さんに対して、R-CHOP療法を行った群では奏効率が87.2%でしたが、CHOP療法のみの群では74.0%でした。リツキシマブを加えることで治療効果が向上することが確認されています。
慢性リンパ性白血病での効果
慢性リンパ性白血病に対しては、フルダラビンおよびシクロホスファミドとの併用療法で使用されます。国内外の臨床試験では、良好な治療成績が報告されています。
維持療法としての効果
リツキシマブは、寛解導入療法後の維持療法としても使用されます。8週間間隔で最大12回投与することで、無増悪生存期間の延長が期待できます。臨床試験では、4年無増悪生存率が69.8%と報告されています。
投与方法と投与スケジュール
リツキシマブは点滴静注で投与される薬剤です。疾患や治療目的によって投与方法が異なります。
| 対象疾患 | 用法・用量 | 最大投与回数 |
|---|---|---|
| B細胞性非ホジキンリンパ腫 (単剤使用時) |
1回量375mg/m²を1週間間隔で点滴静注 | 8回 |
| B細胞性非ホジキンリンパ腫 (他剤併用時) |
1回量375mg/m²を併用する抗がん剤の投与間隔に合わせて投与 | 治療サイクルによる |
| B細胞性非ホジキンリンパ腫 (維持療法) |
1回量375mg/m²を8週間間隔で点滴静注 | 12回 |
| 慢性リンパ性白血病 | 初回375mg/m²、2回目以降500mg/m²を 併用薬の投与サイクルに合わせて投与 |
6回 |
| 多発血管炎性肉芽腫症、 顕微鏡的多発血管炎など |
1回量375mg/m²を1週間間隔で点滴静注 | 4回 |
| ネフローゼ症候群 (難治性) |
1回量375mg/m²を1週間間隔で点滴静注 (最大量500mg/回まで) |
4回 |
投与時間と注入速度
リツキシマブの投与では、副作用のリスクを減らすため、注入速度を段階的に上げていきます。
初回投与時は、最初の1時間は50mg/時で開始し、患者さんの状態を観察しながら徐々に速度を上げていきます。副作用が出ない場合は、1時間ごとに50mg/時ずつ増量し、最大400mg/時まで上げることができます。
2回目以降の投与で、初回に重篤な副作用がなければ、100mg/時から開始し、30分ごとに100mg/時ずつ増量して、最大400mg/時まで上げることが可能です。
前投薬について
リツキシマブ投与の30分前には、副作用を軽減するために前投薬を行います。一般的には、抗ヒスタミン薬や解熱鎮痛薬を投与します。これにより、インフュージョンリアクションと呼ばれる副作用の頻度や程度を抑えることができます。
主な副作用と注意が必要な症状
リツキシマブの使用で注意が必要な副作用について説明します。
インフュージョンリアクション
最も頻度の高い副作用がインフュージョンリアクションです。投与中から投与開始後24時間以内に現れることが多く、約90%の患者さんに何らかの症状が報告されています。
主な症状は、発熱、悪寒、頭痛、吐き気、かゆみ、発疹、咳などです。ほとんどの場合は軽度から中等度で、特に初回投与時に多く見られます。
これは、末梢血液中にあるB細胞が障害される際に産生されるサイトカインが原因と考えられています。1回目の投与で末梢血液中のB細胞が速やかに消失するため、2回目以降の投与では症状が軽くなることが多いです。
重篤な症状としては、低血圧、血管浮腫、低酸素血症、気管支痙攣などがあり、まれに心筋梗塞や急性呼吸促迫症候群などの重大な事象が起こることもあります。
B型肝炎ウイルスの再活性化
リツキシマブ治療中および治療終了後に、B型肝炎ウイルスが再活性化することがあります。過去にB型肝炎に感染したことがある方(HBs抗原陰性、HBc抗体陽性またはHBs抗体陽性の方)でも、ウイルスが再び活動を始める可能性があります。
重症化すると劇症肝炎を引き起こし、命に関わることもあるため、投与前には必ず肝炎ウイルス検査を行い、治療中も定期的にモニタリングを実施します。必要に応じて抗ウイルス薬の予防投与が検討されます。
腫瘍崩壊症候群
リツキシマブにより大量のがん細胞が急速に破壊されると、細胞内の成分が血液中に放出され、腫瘍崩壊症候群と呼ばれる状態になることがあります。
高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症などの電解質異常や腎機能障害を引き起こす可能性があります。特に白血病細胞が多い患者さんや、脾臓が腫れている患者さんでリスクが高くなります。
血液障害
リツキシマブ投与により、白血球減少、好中球減少、血小板減少などの血液障害が起こることがあります。特に好中球が減少すると感染症にかかりやすくなるため、注意が必要です。
感染症
リツキシマブはB細胞を減少させるため、免疫機能が低下し、さまざまな感染症にかかりやすくなります。細菌感染症だけでなく、ウイルスや真菌による感染症のリスクも高まります。
治療終了後も長期間にわたってB細胞の減少が続くことがあるため、感染予防の行動を継続することが大切です。
リツキシマブの費用と保険適応
リツキシマブは高額な薬剤ですが、保険適応となる疾患での使用であれば、健康保険が適用されます。
薬価について
2026年2月現在の薬価は以下の通りです。
| 製品名 | 規格 | 薬価(1瓶あたり) |
|---|---|---|
| リツキサン点滴静注100mg | 100mg/10mL | 17,897円 |
| リツキサン点滴静注500mg | 500mg/50mL | 89,606円 |
| リツキシマブBS点滴静注100mg「KHK」 (バイオシミラー) |
100mg/10mL | 10,544円 |
| リツキシマブBS点滴静注500mg「KHK」 (バイオシミラー) |
500mg/50mL | 約52,700円 |
体表面積1.5m²の患者さんが1回あたり375mg/m²(合計562.5mg)を投与する場合、先発品のリツキサンでは約10万円、バイオシミラーでは約6万円の薬価となります。
実際の自己負担額
健康保険に加入している場合、窓口での支払いは医療費の1~3割です。しかし、リツキシマブを含むがん治療では、1か月の医療費が高額になることが多いため、高額療養費制度を利用できます。
高額療養費制度では、年収に応じて1か月あたりの自己負担上限額が定められています。2026年2月現在の自己負担限度額(70歳未満)は以下の通りです。
| 所得区分 | 自己負担限度額(月額) | 多数回該当時(4回目以降) |
|---|---|---|
| 年収約1,160万円以上 | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
| 年収約770~1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
| 年収約370~770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
| 年収約370万円未満 | 57,600円 | 44,400円 |
| 住民税非課税世帯 | 35,400円 | 24,600円 |
なお、2026年8月以降、高額療養費制度の見直しが段階的に実施される予定です。自己負担限度額の引き上げや所得区分の細分化が行われる見込みですので、最新の情報を確認することをおすすめします。
バイオシミラーの活用
リツキシマブには、先発品のリツキサンのほかに、バイオシミラー(バイオ後続品)があります。バイオシミラーは、先発品と同等の効果と安全性が確認された医薬品で、薬価は先発品の約60%程度に設定されています。
医療費の負担を軽減したい場合は、主治医と相談してバイオシミラーの使用を検討することも選択肢の一つです。
日常生活への影響と注意点
リツキシマブ治療を受ける際に、日常生活で気をつけるべきポイントを説明します。
投与当日と翌日の過ごし方
初回投与は入院して行うことが多いですが、2回目以降は特に問題がなければ外来での投与が可能です。
投与当日は、インフュージョンリアクションが起こる可能性があるため、投与中から投与後24時間は体調の変化に注意が必要です。発熱、悪寒、息苦しさなどの症状が現れた場合は、すぐに医療機関に連絡してください。
感染予防
リツキシマブ治療中および治療後しばらくの間は、感染症にかかりやすい状態が続きます。以下のような感染予防対策を心がけましょう。
手洗い・うがいをこまめに行う、人混みを避ける、マスクを着用する、体調が悪い人との接触を避ける、などの基本的な感染予防行動が大切です。また、発熱や咳、のどの痛みなど感染症を疑う症状が現れたら、早めに受診してください。
予防接種について
リツキシマブ治療中は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、BCGなど)の接種は避けるべきです。不活化ワクチン(インフルエンザワクチンなど)については、主治医と相談の上で接種を検討します。
妊娠・授乳への影響
リツキシマブ投与中および投与終了後12か月間は、妊娠を避ける必要があります。男女とも、治療中および治療後は確実な避妊を行ってください。
また、授乳中の方は、リツキシマブ治療期間中および最終投与後6か月間は授乳を避けることが推奨されています。
リツキシマブ治療を受ける前に確認すべきこと
リツキシマブ治療を開始する前に、主治医に伝えておくべき重要な情報があります。
投与前の検査
リツキシマブ投与前には、以下のような検査が必要です。
B型肝炎ウイルス検査(HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体)、心機能検査(心電図、心エコー)、呼吸機能検査、結核検査(ツベルクリン反応、胸部CT検査など)、血液検査(肝機能、腎機能、電解質など)などです。
主治医に伝えるべき情報
過去にB型肝炎にかかったことがある、心臓病や不整脈の既往がある、肺の病気がある、感染症にかかっている、アレルギー体質である、妊娠している可能性がある、授乳中である、他の薬を服用している、といった情報は必ず主治医に伝えてください。
まとめ
リツキシマブ(リツキサン)は、CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫をはじめとする血液がんや、自己免疫疾患など幅広い疾患の治療に使用される分子標的薬です。
R-CHOP療法などでは高い奏効率が報告されており、多くの患者さんの治療成績向上に貢献しています。一方で、インフュージョンリアクションやB型肝炎ウイルスの再活性化など、注意が必要な副作用もあります。
治療費については、高額療養費制度を利用することで自己負担を抑えることができます。また、バイオシミラーの選択により、さらに医療費を軽減できる可能性があります。
リツキシマブ治療を受ける際は、主治医とよく相談し、期待される効果と起こりうる副作用について十分に理解した上で、治療方針を決めることが大切です。
参考文献・出典情報
1. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)リツキサン添付文書
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00067382
2. 国立がん研究センター がん情報サービス リツキシマブ情報
https://www.cancerit.jp/yakuzai-jouhou/yakuzai-jouhou-kiji/post-3216.html
3. 厚生労働省 公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001512552.pdf
4. 日本リンパ網内系学会 悪性リンパ腫診療ガイドライン
https://oncolo.jp/drugs/rituxan
5. リツキシマブBS添付文書(バイオシミラー情報)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00067174
6. 日本バイオシミラー協議会 バイオシミラー一覧
https://www.biosimilar.jp/pdf/biosimilar_list.pdf
7. 厚生労働省 高額療養費制度の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf
8. 日経メディカル処方薬事典 リツキサン情報
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/42/4291407A1035.html
9. 日本リウマチ学会 リツキシマブ適応外薬検討資料
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000111300.pdf
10. 国立がん研究センター中央病院 バイオシミラーについてQ&A
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/pharmacy/040/generic/000/biosimilar/index.html