
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
前立腺がんの治療を受けるにあたって、多くの患者さんが気になるのが治療費用です。治療方法や進行度によって費用は大きく異なり、また2026年度は高額療養費制度の改定も予定されているため、最新の情報を把握しておくことが重要です。
この記事では、前立腺がんの各治療法にかかる費用の目安、健康保険の適用範囲、そして経済的負担を軽減するための公的支援制度について、2026年の最新情報を踏まえて解説します。
前立腺がん治療費の基本的な考え方
前立腺がんの治療費は、病期(ステージ)や選択する治療法によって異なります。早期発見の場合と進行がんでは治療方針が変わるため、それに伴い費用も変動します。
治療費の主な内訳として、初診料、検査料、画像診断料、手術料、放射線治療費、薬剤費、入院基本料、処置料などがあります。これらのほとんどは健康保険の適用対象となりますが、一部の先進的な治療については保険適用外となる場合もあります。
入院費用については、治療費および入院基本料が健康保険適用の対象です。入院基本料には医師の診察料や看護料が含まれています。一方、差額ベッド代(個室料金)は保険適用外となり、個室を選択すると自己負担額が増加します。
また、入院中のパジャマや日用品、入退院時の交通費、家族の見舞いにかかる交通費なども別途必要となります。これらの細かな出費も考慮に入れた資金計画が大切です。
前立腺がん治療法別の費用目安
手術療法の費用
前立腺全摘除術は前立腺がんの根治を目指す標準的な手術です。手術方法には開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術(ダヴィンチ)があります。
2026年現在、ロボット支援手術は保険適用となっており、手術技術料だけで見ると、健康保険3割負担の場合で開腹手術が約12万円、腹腔鏡手術が約26万円、ロボット支援手術が約29万円です。
ただし、これらは手術技術料のみの金額で、実際には入院費用(約20日間)、術前術後の検査費用、投薬費用などが加わります。総額では健康保険適用前で約100万円から150万円程度となることが一般的です。3割負担の場合、窓口での支払いは約30万円から45万円となりますが、高額療養費制度を利用することで、実質的な自己負担額はさらに抑えられます。
| 手術方法 | 保険適用前の総額 | 3割負担の目安 |
|---|---|---|
| 開腹手術(入院20日間含む) | 約100万円 | 約30万円 |
| 腹腔鏡手術(入院20日間含む) | 約120万円 | 約36万円 |
| ロボット支援手術(入院20日間含む) | 約130万円 | 約40万円 |
放射線療法の費用
放射線療法には複数の種類があり、それぞれ費用が異なります。
外部照射療法(IMRT:強度変調放射線治療)は、現在主流となっている治療法です。通常は20回から38回程度の照射を行います。保険適用前の総額は約150万円で、3割負担の場合は約45万円となります。
近年では、治療回数を大幅に削減できる定位放射線治療(SBRT)も普及しています。従来の38回の照射が5回で済むようになり、費用も保険適用前で約70万円、3割負担で約20万円程度と、経済的負担も軽減されています。
小線源治療(ブラキセラピー)は、前立腺内に放射線源を埋め込む治療法です。入院費用を含めて保険適用前で約120万円、3割負担で約30万円から40万円程度です。
陽子線治療は、2026年現在、前立腺がんに対して保険適用となっています。治療費は保険適用前で約160万円で、3割負担の場合は約48万円です。高額療養費制度も利用可能です。
重粒子線治療も前立腺がん(転移のない場合)に対して保険適用となっており、陽子線治療と同様の費用体系です。
| 放射線療法の種類 | 保険適用前の総額 | 3割負担の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| IMRT(20〜38回) | 約150万円 | 約45万円 | 通院2カ月程度 |
| 定位放射線治療(5回) | 約70万円 | 約20万円 | 通院期間が短い |
| 小線源治療 | 約120万円 | 約30〜40万円 | 入院必要 |
| 陽子線治療 | 約160万円 | 約48万円 | 保険適用 |
| 重粒子線治療 | 約160万円 | 約48万円 | 保険適用 |
ホルモン療法の費用
ホルモン療法(内分泌療法)は、男性ホルモンの働きを抑えることで前立腺がんの進行を抑える治療法です。進行がんや転移がんの場合に選択されることが多く、長期にわたって継続する必要があります。
外科的去勢術(精巣摘除術)は、一度の手術で済むため、入院費用を除いた手術費用は保険適用前で約10万円から20万円、3割負担で約3万円から6万円程度です。継続的な費用負担がない点が特徴です。
一方、薬物によるホルモン療法では、LH-RHアゴニストやアンタゴニストと呼ばれる注射薬が使用されます。これらは通常3カ月に1回の投与で、保険適用前で約30万円、3割負担で約10万円程度かかります。
月額に換算すると、ホルモン療法の薬代は1カ月あたり保険適用前で約10万円から20万円となります。3割負担の場合でも月に約3万円から6万円の負担となり、治療が数年から10年以上続く可能性を考えると、経済的負担は決して小さくありません。
主な薬剤としては、LH-RHアゴニストの酢酸リュープロレリンや酢酸ゴセレリン、LH-RHアンタゴニストのデガレリクス酢酸塩などがあります。これらに加えて、抗アンドロゲン薬のビカルタミドなどを併用するCAB療法が一般的です。
| ホルモン療法の種類 | 保険適用前の費用 | 3割負担の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 外科的去勢術(精巣摘除) | 約10〜20万円 | 約3〜6万円 | 1回の手術で完了 |
| LH-RHアゴニスト(3カ月分) | 約30万円 | 約10万円 | 継続投与が必要 |
| LH-RHアンタゴニスト(3カ月分) | 約30万円 | 約10万円 | 継続投与が必要 |
| CAB療法(月額換算) | 約15〜25万円 | 約5〜8万円 | 併用療法 |
化学療法(抗がん剤治療)の費用
ホルモン療法が効かなくなった去勢抵抗性前立腺がんに対しては、ドセタキセルやカバジタキセルなどの抗がん剤が使用されます。
化学療法の費用は、使用する薬剤の種類や投与量、治療期間によって大きく異なります。標準的な3週間1コースの治療で、保険適用前で約30万円、3割負担で約10万円程度が目安です。
ただし、一部の新しい抗がん剤は薬価が高額で、3割負担でも100万円近い費用がかかるものもあります。このような場合でも、高額療養費制度を利用することで、実質的な自己負担額は月々の上限額までに抑えることができます。
その他の治療法
HIFU(高密度焦点式超音波療法)は、2026年現在も保険適用外の治療法です。費用は全額自己負担で約80万円から100万円かかります。
一部の医療機関で実施されている免疫療法や光免疫療法なども、現時点では保険適用外であり、数百万円の費用がかかることがあります。
検査費用について
前立腺がんの診断には様々な検査が必要です。主な検査とその費用目安を示します。
| 検査の種類 | 保険適用前の費用 | 3割負担の目安 |
|---|---|---|
| PSA検査(血液検査) | 約2,000〜3,000円 | 約600〜900円 |
| MRI検査 | 約20,000〜30,000円 | 約6,000〜9,000円 |
| CT検査 | 約15,000〜25,000円 | 約4,500〜7,500円 |
| 前立腺生検 | 約30,000〜50,000円 | 約9,000〜15,000円 |
| 骨シンチグラフィー | 約20,000〜30,000円 | 約6,000〜9,000円 |
これらの検査は診断の段階で必要となるほか、治療後の経過観察でも定期的に行われます。
2026年度の高額療養費制度改定について
高額療養費制度は、1カ月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。2026年8月から段階的に改定が実施されます。
2026年8月からの変更点
2026年8月から、現行の所得区分を維持したまま、自己負担限度額が引き上げられます。
例えば、70歳未満で年収約370万円から770万円の区分では、現行の月額8万100円+超過分の1%から、8万5800円+超過分の1%に引き上げられます。
同時に、長期療養患者への配慮として、新たに年間上限額が設定されます。この所得区分では年間53万円が上限となり、多数回該当に該当しない場合でも、年間の自己負担がこの金額に達した時点で、その年の残りの期間は追加の自己負担が免除されます。
2027年8月からの変更点
2027年8月には、所得区分がさらに細分化されます。現行の4区分が12区分に拡大され、よりきめ細かい負担設定となります。
年収約370万円から770万円の区分は3つに分割され、年収約370万円から510万円の層は8万100円+1%(据え置き)、年収約510万円から650万円の層は9万8100円+1%、年収約650万円から770万円の層は11万400円+1%となります。
多数回該当制度(直近12カ月で3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目から限度額が下がる仕組み)については、現行水準が維持されます。
ただし、年収200万円未満の低所得層については、多数回該当時の限度額が現行の4万4400円から3万4500円に引き下げられ、負担が軽減されます。
| 年収区分 | 現行(2026年7月まで) | 2026年8月〜 | 2027年8月〜 |
|---|---|---|---|
| 約370〜510万円 | 8万100円+1% | 8万5800円+1% | 8万100円+1% |
| 約510〜650万円 | 9万8100円+1% | ||
| 約650〜770万円 | 11万400円+1% | ||
| 約770〜1160万円 | 16万7400円+1% | 17万6200円+1% | 細分化後設定 |
| 約1160万円以上 | 25万2600円+1% | 26万5900円+1% | 細分化後設定 |
高額療養費制度の利用方法
高額療養費制度を利用するには、加入している健康保険に申請する必要があります。
事前申請により「限度額適用認定証」を取得すれば、医療機関の窓口での支払いを最初から自己負担限度額までに抑えることができます。この方法が最も一般的で、一時的な高額支出を避けられるため推奨されます。
事前申請をしていない場合でも、治療後に申請すれば、支払った医療費のうち自己負担限度額を超えた分が後日払い戻されます。
申請は加入している健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険などの窓口で行います。手術が決まった際には、できるだけ早めに手続きすることをお勧めします。
医療費控除について
医療費控除は、確定申告を行うことで税金の負担を軽減できる制度です。
1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の合計が、保険による補填金や高額療養費制度による給付金を差し引いた後で10万円を超える場合(所得が200万円未満の場合は所得の5%を超える場合)、確定申告をすることで、超えた分が所得から控除されます。
これにより所得税や住民税が軽減され、源泉徴収された税金の一部が還付されることがあります。
医療費控除の対象となるのは、治療費だけでなく、通院のための交通費(公共交通機関の利用)、入院中の食事代の一部なども含まれます。領収書は必ず保管しておきましょう。
その他の公的支援制度
傷病手当金
会社員や公務員の方が病気で働けなくなった場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。給与の約3分の2相当額が、最長1年6カ月間支給されます。
障害年金
がん治療により日常生活や就労に支障が出た場合、障害年金の受給対象となる可能性があります。ただし、一定の要件を満たす必要があります。
介護保険サービス
40歳以上65歳未満の方でも、がん末期の状態と認定されれば、介護保険サービスを利用できます。訪問介護や福祉用具の貸与などが受けられます。
入院費用の詳細
入院時の費用は、治療費以外にも様々な項目があります。
食事代は1食あたり460円(2026年現在)が標準負担額で、1日3食で1,380円となります。入院日数が20日の場合、27,600円の負担となります。
差額ベッド代は、個室や少人数部屋を希望した場合に発生します。病院や部屋のタイプによって大きく異なりますが、個室の場合は1日あたり5,000円から30,000円程度が一般的です。20日間の入院で個室(1日10,000円と仮定)を利用した場合、20万円の追加負担となります。
パジャマや洗面用具などの日用品、テレビカードなどの費用も必要です。病院によっては、パジャマのレンタルサービス(1日数百円程度)を利用することもできます。
| 入院時の費用項目 | 費用目安 | 20日間の概算 |
|---|---|---|
| 食事代(1食460円) | 1日1,380円 | 約27,600円 |
| 差額ベッド代(個室) | 1日5,000〜30,000円 | 10万〜60万円 |
| 日用品・雑費 | 1日500〜1,000円 | 1万〜2万円 |
治療費の支払いに関する相談窓口
治療費の工面が難しい場合や、金銭面で不安がある場合は、医療機関に配置されているソーシャルワーカー(社会福祉士)に相談することができます。
がん診療連携拠点病院には「がん相談支援センター」が設置されており、ソーシャルワーカーが常駐しています。その病院を受診していない方でも相談を受け付けており、電話での相談も可能です。
ソーシャルワーカーは、高額療養費制度や医療費控除などの公的支援制度の説明、各種手続きのサポート、医療費の分割払いの相談などに対応してくれます。経済的な不安は治療に専念する上で大きな障害となるため、遠慮せず早めに相談することをお勧めします。
民間保険の活用
公的な医療保険でカバーされない部分については、民間の医療保険やがん保険で備えることができます。
がん診断給付金は、がんと診断された時点で一時金が支給されます。治療方法に関わらず使える資金として有用です。
入院給付金は入院日数に応じて支給されます。差額ベッド代や日用品の購入など、公的保険でカバーされない費用に充てることができます。
通院給付金は通院日数に応じて支給されます。放射線療法やホルモン療法など、通院での治療が長期化する場合に役立ちます。
抗がん剤・ホルモン剤治療給付金は、薬物療法を受けた場合に支給されます。長期にわたるホルモン療法の経済的負担を軽減できます。
先進医療特約は、保険適用外の先進医療を受ける場合の技術料をカバーします。ただし、前立腺がんの主要な治療法(陽子線治療、重粒子線治療など)は現在保険適用となっているため、この特約の必要性は以前より低くなっています。
治療費を抑えるための工夫
治療効果と費用のバランスを考えることも大切です。
ジェネリック医薬品(後発医薬品)を利用することで、薬剤費を抑えられる場合があります。ホルモン療法など長期にわたる投薬治療では、ジェネリック医薬品の選択により費用負担を軽減できる可能性があります。医師や薬剤師に相談してみましょう。
セカンドオピニオンを活用し、複数の医師の意見を聞くことで、自分に最適な治療法を選択できます。費用面も含めて総合的に判断することが大切です。
定期的な検査による早期発見は、結果的に治療費の抑制にもつながります。進行した状態で見つかると、長期にわたる治療が必要となり、経済的負担も増大します。
前立腺がん治療費用に関するまとめ
前立腺がんの治療費は、選択する治療法や病期によって大きく異なります。手術療法では総額100万円から150万円程度、放射線療法では70万円から150万円程度、ホルモン療法では長期継続により累計で数百万円に及ぶこともあります。
ただし、日本の健康保険制度では3割負担(または1割負担)となり、さらに高額療養費制度を利用することで、月々の実質的な自己負担額は所得に応じた上限額までに抑えられます。
2026年8月からは高額療養費制度が改定され、自己負担限度額は若干引き上げられますが、同時に年間上限額が新設されるなど、長期療養患者さんへの配慮もなされています。
治療費について不安がある場合は、がん相談支援センターのソーシャルワーカーに相談することをお勧めします。高額療養費制度、医療費控除、その他の公的支援制度を適切に活用することで、経済的な不安を軽減し、治療に専念できる環境を整えることができます。
参考文献・出典情報
1. 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん 治療」
4. 日本医事新報「高額療養費制度の見直し、26・27年で段階実施」
5. 日本経済新聞「高額療養費、自己負担の上限4〜38%引き上げ」

