16.前立腺がん

【2026年更新】前立腺がんLH-RHアゴニスト薬とは?作用機序・薬の種類・副作用を詳しく解説

前立腺がんで使われるLH-RHアゴニスト薬


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前立腺がんで使われるLH-RHアゴニスト薬とは

こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。

前立腺がんのホルモン療法において、LH-RHアゴニスト薬は最も広く使用されている薬剤の一つです。精巣からの男性ホルモン(テストステロン)の分泌を抑えることで、前立腺がんの増殖を抑制します。

LH-RHアゴニストは、脳の下垂体に作用して、LH(黄体化ホルモン)およびテストステロンという男性ホルモンの分泌を抑え、がんの進行を阻害する薬剤です。

LH-RHアゴニストの作用メカニズム

前立腺がんの多くは、男性ホルモン(テストステロン)によって増殖する性質を持っています。LH-RHアゴニストは、このホルモン依存性を利用した治療薬です。

通常のホルモン分泌の仕組み

通常、男性の体内では次のようなホルモン分泌の連鎖が起こっています。

脳の視床下部でつくられるLH-RH(黄体化ホルモン放出ホルモン)というホルモンが、下垂体にLHをつくるよう指令を出します。LHは、精巣にテストステロンをつくるように働きかけます。このテストステロンが前立腺に届くと、前立腺がん細胞はこれを栄養源として増殖します。

男性の体内で作られるテストステロンの約95%は精巣から分泌され、残りの約5%は副腎から分泌されています。

LH-RHアゴニストの働き

LH-RHアゴニストは、LH-RHと構造が似ている薬で、継続的に用いると、下垂体が常に刺激された状態になります。

最初の投与後、約2〜4日間はLHの分泌量が一時的に増えるため、テストステロンの分泌量も増加します。これを「フレアアップ現象」と呼びます。

しかし、その後はLHが枯渇したような状態になり、精巣が刺激されなくなります。結果として、精巣でのテストステロンの生成が止まり、がん細胞の増殖が抑えられるという仕組みです。

このメカニズムにより、外科的な精巣摘出術と同等の治療効果が得られることが明らかになっています。


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フレアアップ現象への対応

LH-RHアゴニスト投与開始後の初期には、一時的にテストステロンが上昇する「フレアアップ現象」が起こります。この期間中、一時的に症状が悪化することがあります。

具体的には次のような症状が現れることがあります。

  • 骨転移がある患者さんでは骨痛が一時的に増強する
  • 排尿困難の悪化
  • 尿路閉塞
  • 脊髄圧迫症状の悪化

このため、初回投与時には抗男性ホルモン剤(抗アンドロゲン剤)を併用することで、フレアアップによる症状悪化を防ぐことが一般的です。通常、LH-RHアゴニスト投与の1〜2週間前から抗男性ホルモン剤の服用を開始します。

特に、骨転移が多数ある患者さんや、尿路閉塞の危険性が高い患者さんでは、この対策が重要になります。

主なLH-RHアゴニスト製剤

日本で前立腺がんのホルモン療法に使用されている主なLH-RHアゴニスト製剤には、以下のものがあります。

一般名 商品名 投与間隔と用量 投与方法
リュープロレリン酢酸塩 リュープリン 1.88mg(月1回)
3.75mg(月1回)
11.25mg(3カ月に1回)
22.5mg(6カ月に1回)
皮下注射(上腕部)
ゴセレリン酢酸塩 ゾラデックス 3.6mg(月1回)
10.8mg(3カ月に1回)
皮下注射(腹部)

製剤の特徴

リュープリンとゾラデックスは、どちらも効果に大きな差はありません。両方とも徐放性製剤として開発されており、1回の注射で長期間効果が持続します。

製剤の選択は、通院の都合や患者さんの希望、医療機関の方針によって決められることが多いです。3カ月製剤や6カ月製剤を使用することで、通院回数を減らすことができます。

2015年に承認されたリュープリンPRO注射用キット22.5mgは、6カ月(24週)に1回の投与で効果が持続する製剤です。通院負担を軽減したい患者さんにとって選択肢の一つとなっています。


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LH-RHアゴニストの副作用

LH-RHアゴニストは、男性ホルモンを抑制するため、さまざまな副作用が起こる可能性があります。

よく見られる副作用

副作用 詳細
性機能障害 性欲の低下、勃起障害。治療中は多くの患者さんに現れます。
ほてり・発汗 ホットフラッシュと呼ばれる症状。更年期障害に似た症状で、時間とともに軽減することが多いです。
女性化乳房 LH-RHアゴニスト単独では比較的少ないですが、抗男性ホルモン剤との併用時には16〜71%と高率に発生します。
注射部位の反応 硬結(しこり)、疼痛、発赤、皮下出血などが起こることがあります。

長期使用時の注意が必要な副作用

副作用 詳細と対策
骨粗鬆症 最初の1年で骨密度が3〜5%減少し、その後も緩やかに減少します。カルシウムの摂取、適度な運動、禁煙、アルコール・カフェインの制限が推奨されます。必要に応じて骨密度検査や骨粗鬆症治療薬の併用を検討します。
貧血 多くは治療開始後半年以内に起こります。定期的な血液検査でモニタリングします。
肝機能障害 特に抗男性ホルモン剤併用時に0.5〜0.1%の頻度で発生します。定期的な肝機能検査が必要です。
代謝異常 糖尿病の発症や悪化、脂質異常症などが報告されています。定期的な血液検査と生活習慣の見直しが重要です。
心血管系イベント 心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血栓塞栓症などのリスクが報告されています。胸痛、息切れ、めまい、呼吸困難などの症状に注意が必要です。

副作用の出現時期

副作用の多くは治療開始後1カ月程度から現れ始めます。ほてりや性機能障害などは比較的早期から現れますが、体が慣れるに従って軽減することもあります。

一方、骨粗鬆症や代謝異常などは長期治療により徐々に進行するため、定期的な検査と適切な予防対策が重要です。

LH-RHアンタゴニストとの違い

2012年、日本でもLH-RHアンタゴニストに分類される「デガレリクス(商品名:ゴナックス)」が承認されました。これはフレアアップが起こらない治療薬です。

LH-RHアンタゴニストの特徴

LH-RHアンタゴニストは、下垂体前葉にあるLH-RH受容体を直接的に阻害します。そのため、LH-RHアゴニストのような投与初期の一時的な男性ホルモン上昇(フレアアップ)が見られません。

項目 LH-RHアゴニスト LH-RHアンタゴニスト
フレアアップ あり(投与初期) なし
初回併用薬 抗男性ホルモン剤の併用が推奨される 併用不要
効果発現 2〜4週間後 迅速(数日以内)
心血管系副作用 やや高い可能性 アゴニストより低い可能性
注射部位反応 比較的軽度 アゴニストより頻度が高い

使い分けの考え方

LH-RHアゴニストとアンタゴニスト、どちらも治療効果に大きな違いはありません。

しかし、以下のような患者さんではLH-RHアンタゴニスト(ゴナックス)の使用を検討することがあります。

  • 初回診断時からかなり進行している前立腺がんの患者さん
  • 骨転移が多数ある患者さん
  • 尿路閉塞や脊髄圧迫のリスクが高い患者さん
  • 心血管疾患(心筋梗塞、狭心症など)の既往がある患者さん
  • すぐに男性ホルモンを抑制したい患者さん

ゴナックスは初回240mgを腹部2カ所に皮下投与し、2回目以降は4週間後より80mgを月1回投与します。

CAB療法(複合アンドロゲン遮断療法)

男性ホルモンは精巣だけでなく、副腎からも約5%分泌されています。この副腎由来の男性ホルモンも前立腺がん細胞の増殖に関わっている可能性が指摘されています。

そこで、精巣と副腎から分泌される男性ホルモン両方を最大限抑えることを目的として、LH-RHアゴニスト(またはアンタゴニスト)の注射薬に抗男性ホルモン剤の内服薬を併用する治療が行われます。

この併用療法は、CAB(combined androgen blockade)療法またはMAB(maximal androgen blockade)療法と呼ばれています。

CAB療法の適応

日本人を対象にした研究では、骨転移のある前立腺がん患者さんへの治療として、このCAB療法が有効であることが示されました。そのため、日本では併用療法を実施することが多い傾向があります。

併用する抗男性ホルモン剤には、以下のようなものがあります。

  • ビカルタミド(商品名:カソデックス)
  • フルタミド(商品名:オダイン)
  • クロルマジノン酢酸エステル(商品名:プロスタール)

治療期間と経済的な側面

治療期間

LH-RHアゴニストによるホルモン療法は、定期的な通院が必要です。

治療期間は、病状や治療のタイミングによって異なります。

  • 放射線治療と併用する場合:中リスク群で6カ月、高リスク群で2〜3年
  • 転移がある場合や手術・放射線治療ができない場合:できるだけ長期間継続(定められた期間なし)

長期間の治療となるため、副作用の管理や定期的な検査が重要になります。

治療費について

LH-RHアゴニストは高額な薬剤です。ただし、保険適用となっており、高額療養費制度を利用することができます。

実際の自己負担額は、患者さんの年齢や所得によって異なります。3カ月製剤や6カ月製剤を使用することで、1回あたりの負担は増えますが、通院回数を減らすことができます。

医療費の負担について不安がある場合は、医療ソーシャルワーカーや病院の相談窓口に相談することをお勧めします。

LH-RHアゴニストのメリットとデメリット

メリット

  • 外科的去勢術(精巣摘出術)と同等の効果が得られる
  • 手術による身体的・心理的負担がない
  • 外来通院のみで治療が可能
  • 治療を中止すれば、精巣機能が回復する可能性がある
  • 3カ月製剤や6カ月製剤を使用すれば通院回数を減らせる

デメリット

  • 定期的な通院と注射が必要
  • 経済的負担が大きい
  • 性機能障害などの副作用がある
  • 長期使用により骨粗鬆症や代謝異常のリスクがある
  • 初回投与時にフレアアップ現象が起こる可能性がある

最新の治療動向

前立腺がんのホルモン療法は、近年さらに進歩しています。

「前立腺癌診療ガイドライン2023年版」では、転移性去勢感受性前立腺がん(mCSPC)に対して、従来のLH-RHアゴニスト単独療法に加えて、新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)やドセタキセル(抗がん剤)を併用する治療が推奨されています。

新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬には、以下のようなものがあります。

  • アビラテロン(商品名:ザイティガ)
  • エンザルタミド(商品名:イクスタンジ)
  • アパルタミド(商品名:アーリーダ)
  • ダロルタミド(商品名:ニュベクオ)

これらの薬剤を併用することで、より強力に前立腺がんの進行を抑えることが可能になっています。

患者さんが知っておくべきこと

定期的な検査の重要性

LH-RHアゴニストによる治療中は、定期的な検査が必要です。

  • PSA(前立腺特異抗原)検査:治療効果の判定
  • 血液検査:貧血、肝機能、血糖値、脂質などの確認
  • 骨密度検査:年1回程度
  • 画像検査:必要に応じて転移の有無を確認

生活上の注意点

副作用を軽減し、QOL(生活の質)を維持するために、以下のような点に気をつけることが推奨されます。

  • 骨の健康のため、カルシウムやビタミンDを含む食品を積極的に摂取する
  • 適度な運動を継続する(骨への負荷がかかる運動が効果的)
  • 禁煙する
  • アルコールやカフェインの摂取を控えめにする
  • バランスの取れた食事を心がける
  • 定期的な体重測定と管理

症状への対応

以下のような症状が現れた場合は、すぐに医療機関に連絡してください。

  • 胸痛、息切れ(心血管系イベントの可能性)
  • めまい、ふらつき、呼吸困難
  • 骨痛の急激な増強
  • 排尿困難の悪化
  • 手足のしびれや脱力(脊髄圧迫の可能性)

まとめ

LH-RHアゴニストは、前立腺がんのホルモン療法において中心的な役割を果たす薬剤です。外科的去勢術と同等の効果を持ちながら、外来で治療が可能という利点があります。

フレアアップ現象や副作用への適切な対応、定期的な検査によるモニタリング、生活習慣の改善などを通じて、効果的かつ安全に治療を継続することが重要です。

最近では、LH-RHアンタゴニストや新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬など、新しい治療選択肢も登場しています。担当医とよく相談しながら、患者さんの病状や希望に合った最適な治療法を選択することが大切です。

参考文献・出典情報

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん 治療」
    https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/treatment.html
  2. 日本泌尿器科学会「前立腺癌診療ガイドライン2023年版」解説
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/84/1/84_7/_pdf/-char/ja
  3. 日本癌治療学会「前立腺がん | がん診療ガイドライン」
    http://www.jsco-cpg.jp/prostate-cancer/
  4. がん情報サイト「オンコロ」LH-RHアゴニスト製剤
    https://oncolo.jp/dic/lh-rh
  5. がんサポート「最新ホルモン療法:Gn-RHアンタゴニストの新登場でホルモン療法はどう変わっていくか?」
    https://gansupport.jp/article/treatment/hormone/5880.html
  6. What's? 前立腺がん「ホルモン療法|前立腺がんの治療について」
    https://www.zenritsusen.jp/treat/secretion/
  7. 東北大学病院 泌尿器科「前立腺癌に対するホルモン療法について」
    http://www.uro.med.tohoku.ac.jp/patient_info/ic/tre_p_c_04.html
  8. 中野駅前ごんどう泌尿器科「前立腺がんに対するホルモン療法について」
    https://gondo-uro.jp/%E5%89%8D%E7%AB%8B%E8%85%BA%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
  9. 日経メディカル「効果が半年持続するLH-RH誘導体が登場」
    https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201601/545226.html
  10. 海外がん医療情報リファレンス「前立腺癌に対するホルモン療法」
    https://www.cancerit.jp/26456.html

・・・・・・・・・・

本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

「腰がすこし痛むだけで、再発か?転移か?と不安で一睡もできなくなる」

「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

こんな苦しみに溢れています。

年齢を重ねると、たとえ健康であっても、つらいことはたくさんありますよね。

それに加えて「がん」は私たちから、家族との時間や、積み重ねたキャリア、将来の夢や希望を奪おうとするのです。

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