前立腺生検(細胞を採取して顕微鏡で調べる検査)で前立腺がんが見つかった場合、最終的な治療方針を決定するために、ほかの部位に転移がないかどうか検査します。
これには、「CT(コンピュータ断層撮影)検査」や「骨シンチグラフィー」といった画像診断がとても有効です。
CT検査は、基本的にはレントゲンと同じ原理です。体を通り抜けたX線の強弱をコンピュータで計算して、いろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影します。体の周囲を360度回転するX線発射装置からX線を当て、コンピュータで処理することにより、1cmから数mm間隔で体の輪切り画像がモニターに映し出されます。
検査にかかる時間は5分程度で、肝臓やリンパ節などに転移していないかといった、広い範囲でのがんの進行具合がわかります。骨の後ろに隠れているがんや、臓器が重なって分かりにくいがんも見つけやすい利点があります。
がんのCT検査ではヨード造影剤を静脈に注入しますが、それによるアレルギー反応が起こる場合もあるため、アレルギーやけいれん、ぜんそくがある人は必ず伝えましょう。
骨転移しやすいため骨シンチグラフィーで検査
前立腺がんは、骨に転移しやすいという特徴を持っています。早期の骨転移発見に欠かせないのが骨シンチグラフィーです。骨にできたがん病巣に集まる性質があるアイソトープ(放射性同位元素)を、静脈注射もしくは点滴したあとに撮影をします。
すると、がんのある部分にアイソトープが集積し、黒く映し出されることでがんの転移がわかるという仕組みです。検査に使用する薬剤の放射線はごく微量なので、数日中には尿や便から排出されて放射能はなくなります。
ただし、骨シンチグラフィーでは炎症や骨折の場合も黒くなるので、これだけで正確な診断はできず、CTやMRI検査など、ほかの検査と合わせて総合的に判断します。
MRIは確定診断の前に
以前は、がんの広がり具合を判断するのにMRI(magnetic resonance imaging 磁気共鳴画像撮影)も利用されていました。
しかし、MRIはここ数年で飛躍的な進歩により、がんの有無もわかるようになってきています。そのため、前立腺生検の前に行う病院も増えてきました。
生検のあとにMRI検査を行うと、生検による出血や浮腫(むくみ)のために正確な診断がしづらくなります。そこで、生検の前にMRI検査をして、前立腺内のがん病巣をくわしく調べることがすすめられています。
以上、前立腺がんの検査についての解説でした。