
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
前立腺生検でがんが確認された場合、次に必要となるのが「がんの広がり」を調べる検査です。
がんが前立腺の中だけにとどまっているのか、それともリンパ節や他の臓器に転移しているのかを知ることは、治療方針を決める上で欠かせません。
2026年現在、前立腺がんの画像検査として中心的な役割を果たしているのが、CT検査、骨シンチグラフィー、そしてMRI検査です。
特に前立腺がんは骨に転移しやすいという特徴があるため、骨シンチグラフィーによる骨転移の有無の確認が重要となります。
前立腺がんの画像検査が必要となるタイミング
前立腺がんの診断は段階的に進められます。
まず血液検査でPSA値を測定し、基準値を超えている場合は直腸診やMRI検査を行います。これらの検査でがんが疑われる場合、最終的に前立腺生検で確定診断を行います。
生検でがんが確認されたら、次のステップとして画像検査を実施します。
画像検査の目的は以下の3つです。
まず、がんが前立腺の外に広がっていないかを確認します。次に、リンパ節への転移の有無を調べます。そして、骨やその他の臓器への遠隔転移がないかを確認します。
これらの情報を総合して、前立腺がんの進行度(病期)を決定し、適切な治療方法を選択することになります。
CT検査の仕組みと役割
CT検査は、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography)の略称です。
基本的な原理はレントゲン撮影と同じで、X線を使用しますが、体の周囲360度から連続的にX線を照射し、通過したX線の強弱をコンピュータで計算することで、体の輪切り画像を作り出します。
従来のレントゲン写真では前後や左右からの平面的な画像しか得られませんでしたが、CT検査では1cmから数mm間隔で体を輪切りにした画像を連続的に撮影できるため、臓器や組織の重なりによって見えにくかった病変も発見できます。
前立腺がんにおけるCT検査の主な目的は、リンパ節転移と遠隔臓器への転移の確認です。
前立腺がんは、前立腺周囲のリンパ節から骨盤内のリンパ節、さらに腹部や胸部のリンパ節へと転移していく傾向があります。ただし、必ずしも近くのリンパ節から順番に転移するとは限らず、離れた部位に先に転移が起こることもあるため、広い範囲を確認できるCT検査が有用です。
また、肝臓など他の臓器への転移の有無も確認できます。
検査にかかる時間は5分から10分程度です。
造影剤を使用する場合は、より詳細な情報が得られます。造影剤を静脈に注入することで、血管やリンパ節、臓器の状態がより明瞭に映し出されます。
| CT検査の特徴 | 内容 |
|---|---|
| 検査時間 | 5〜10分程度 |
| 主な確認事項 | リンパ節転移、肝臓などへの遠隔転移 |
| 造影剤使用 | より詳細な画像を得るため使用することが多い |
| 利点 | 広範囲を短時間で検査できる、骨の裏側の病変も発見可能 |
CT検査の注意点
造影剤を使用する場合、まれにアレルギー反応が起こることがあります。
ヨード造影剤に対してアレルギーがある方、ぜんそくの既往がある方、けいれんを起こしたことがある方は、必ず事前に医師に伝えてください。
また、腎機能が低下している方は造影剤の使用に注意が必要です。検査前に腎機能の評価が行われることがあります。
CT検査ではX線を使用するため、被ばくの問題があります。ただし、医療で使用されるX線量は健康への影響がほとんどない範囲に管理されており、検査によって得られる利益の方が大きいと判断された場合に実施されます。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
骨シンチグラフィーによる骨転移の検出
前立腺がんは、骨に転移しやすいという特徴を持っています。
国立がん研究センターのデータによると、進行した前立腺がん患者さんの中には骨転移が見られることが多く、早期発見が治療方針の決定に重要な役割を果たします。
骨シンチグラフィーは、全身の骨の状態を一度に調べることができる核医学検査です。
骨シンチグラフィーの検査方法
検査では、骨に集まりやすい性質を持つ放射性物質(アイソトープ)を含む薬剤を静脈から注射します。
この薬剤は、骨の代謝が活発な部位、つまり骨の破壊と再生が盛んに行われている部位に集まります。がんが骨に転移すると、その部分で骨の代謝が活発になるため、薬剤が多く集積します。
注射後、薬剤が全身に行き渡るまで約3時間待ちます。その後、特殊なカメラ(ガンマカメラ)で全身を撮影します。撮影自体は30分程度です。
がんが転移している部位には薬剤が集まって黒く映し出されるため、転移の有無や位置を確認することができます。
| 骨シンチグラフィーの手順 | 詳細 |
|---|---|
| ①薬剤注射 | 骨に集まる放射性物質を静脈から注射 |
| ②待機時間 | 約3時間(薬剤が全身に行き渡るまで) |
| ③撮影 | 特殊なカメラで全身を撮影(約30分) |
| ④結果確認 | 黒く映る部位を確認(転移の可能性) |
骨シンチグラフィーの限界と対応
骨シンチグラフィーには注意すべき点があります。
がんの転移以外にも、骨折や炎症、関節炎などがある部位でも骨の代謝が活発になるため、同じように黒く映ってしまいます。
つまり、黒く映った部位が必ずしもがんの転移とは限らないということです。
このため、骨シンチグラフィーだけで正確な診断を下すことはできません。CTやMRI検査など、他の画像検査の結果と組み合わせて総合的に判断することが必要です。
疑わしい部位については、追加でCTやMRIで詳しく調べ、骨折や炎症ではなくがんの転移であるかどうかを確認します。
放射性物質の安全性について
検査で使用する放射性物質は、非常に微量です。
体内に入った放射性物質は、数日以内に尿や便から自然に排出され、放射能はなくなります。検査を受けることによる健康への影響は心配する必要がない範囲です。
ただし、検査当日は念のため、他の人と長時間密着することは避け、トイレの後はしっかり水を流すなど、医療機関の指示に従ってください。
MRI検査の役割と最新のPI-RADSスコア
以前は、がんの広がりを調べるためにMRI検査が使用されていましたが、2026年現在では、MRI検査の役割が大きく変化しています。
MRI(磁気共鳴画像撮影)は、強力な磁場を使用して体内の詳細な画像を作り出す検査です。
ここ数年でMRI技術が飛躍的に進歩し、前立腺がんの有無そのものを高い精度で予測できるようになってきました。このため、前立腺生検の前にMRI検査を行う医療機関が増えています。
生検前にMRI検査を行う理由
生検を行った後にMRI検査をすると、生検による出血や浮腫(むくみ)のために、MRI画像の診断精度が低下してしまいます。
そこで、生検の前にMRI検査を実施し、前立腺内のがん病巣の有無や位置を詳しく調べることが推奨されています。
MRI検査の結果は、PI-RADS(Prostate Imaging and Reporting Data System)スコアという5段階の評価システムで判定されます。
| PI-RADSスコア | がんの可能性 | 対応 |
|---|---|---|
| 1 | 極めて低い | 定期的なPSA検査で経過観察 |
| 2 | 低い | 定期的なPSA検査で経過観察 |
| 3 | 中程度 | 年齢や全身状態を考慮して生検を検討 |
| 4 | 高い | 生検を推奨 |
| 5 | 極めて高い | 生検を強く推奨 |
このスコアリングシステムにより、不必要な生検を減らしながら、臨床的に重要ながんを見逃さないようにすることが可能になっています。
国立がん研究センター東病院をはじめとする多くの医療機関で、このPI-RADSスコアに基づいた診断が行われています。
MRI検査で確認できること
MRI検査では、以下のような情報が得られます。
前立腺内のがんの有無と位置を確認できます。がんが前立腺の外に広がっていないか(被膜外浸潤)を調べることができます。精嚢への浸潤の有無を確認できます。そして、周囲のリンパ節への転移の有無も評価できます。
特に前立腺の外側にある辺縁域にできたがんは、MRI画像で黒く映るため発見しやすい傾向があります。
MRI検査の注意点
MRI検査は強い磁場の中で行うため、体内に金属が入っている方は注意が必要です。
ペースメーカーや人工内耳、脳動脈瘤クリップなどが入っている場合、検査ができないことがあります。過去の手術で体内に金属が入っている可能性がある方は、必ず医師に伝えてください。
また、造影剤を使用する場合は、CT検査と同様にアレルギー反応が起こる可能性があります。
最新の画像検査技術
2026年現在、前立腺がんの診断において、従来の検査法を超える新しい画像検査技術の研究が進んでいます。
PSMA-PET検査
大阪大学医学部附属病院などで臨床研究が行われているPSMA-PET検査は、前立腺がんの高精度診断法として注目されています。
PSMAは前立腺特異的膜抗原で、前立腺がんの細胞に多く存在します。この性質を利用して、PSMA に結合する特殊なPET薬剤を使用することで、従来のCTや骨シンチグラフィーでは検出が難しかった小さなリンパ節転移や再発巣も高精度で検出できる可能性があります。
ただし、2026年時点では、この検査は一部の医療機関で臨床研究として実施されている段階で、まだ一般的な保険診療としては確立していません。
画像検査の費用について
前立腺がんの画像検査は、基本的に保険診療の対象となります。
健康保険が適用される場合、実際の自己負担額は3割負担で以下のような目安になります。
| 検査の種類 | 3割負担での目安費用 |
|---|---|
| CT検査(単純) | 4,000〜7,000円程度 |
| CT検査(造影剤使用) | 10,000〜15,000円程度 |
| 骨シンチグラフィー | 7,000〜10,000円程度 |
| MRI検査 | 8,000〜15,000円程度 |
ただし、これらの金額は検査のみの費用であり、実際には初診料や再診料、診察料なども加わります。
医療機関によって費用が異なることもあるため、詳細は受診する医療機関に確認してください。
高額な医療費がかかる場合は、高額療養費制度を利用することで、月々の自己負担額を一定額までに抑えることができます。年齢や所得に応じて自己負担の上限額が設定されているため、該当する方は加入している健康保険組合や市区町村の窓口に相談してください。
検査結果に基づく治療方針の決定
CT検査、骨シンチグラフィー、MRI検査などの画像検査の結果を総合して、前立腺がんの病期(ステージ)が決定されます。
病期は、TNM分類という国際的な基準に基づいて判定されます。Tは腫瘍の大きさや広がり、Nはリンパ節転移の有無、Mは遠隔転移の有無を表します。
また、PSA値の高さやグリソンスコア(がんの悪性度)も考慮されて、リスク分類(低リスク、中リスク、高リスク)が行われます。
これらの情報をもとに、年齢、全身状態、患者さんの希望などを総合的に判断して、最適な治療法が選択されます。
転移がない早期のがんであれば、手術療法や放射線療法、監視療法(経過観察)などが選択肢となります。リンパ節転移がある場合や骨転移がある場合は、ホルモン療法を中心とした治療が選択されることが多くなります。
画像検査は、治療効果の判定や再発の早期発見にも重要な役割を果たします。治療後も定期的に画像検査を行い、がんの状態を確認していくことが大切です。
まとめ
前立腺がんの画像検査は、がんの広がりを正確に把握し、適切な治療方針を決定するために不可欠です。
CT検査ではリンパ節や臓器への転移を、骨シンチグラフィーでは骨転移を、MRI検査では前立腺内のがんの詳細や周囲への広がりを確認します。
これらの検査はそれぞれに特徴があり、組み合わせて実施することでより正確な診断が可能になります。
2026年現在、MRI検査の精度向上やPI-RADSスコアの普及により、不必要な検査を減らしながら重要ながんを見逃さない診断が実現しつつあります。
検査を受ける際は、医師の説明をよく聞き、不明な点があれば遠慮なく質問しましょう。ご自身の状態を正確に理解し、納得のいく治療選択をすることが大切です。
参考文献・出典情報
大阪大学医学系研究科「前立腺がんの再発・転移を高精度で検出する最先端画像診断」
マイシグナル「早期発見に向けて!前立腺がんの検査の種類や費用について詳しく解説」