MRI検査は、人体の磁気共鳴作用を利用し、体に電磁波を当ててコンピュータで画像化するものです。
従来のMRIはT2強調画像を基本とし、がんの前立腺皮膜への広がりや、精嚢、直腸、膀胱など、周辺機器への広がりを調べるのに適していました。
経直腸コイルなどを用いて前立腺部のみを撮影する場合は、前立腺の内部のがん病巣や皮膜外への浸潤(がんが深く入り込む)、精嚢への浸潤が、さらにくわしくわかるようになっています。その役割は、がん病巣の発見ではなく、すでに発見された前立腺がん進展の診断が主でした。
しかし、近年のMRI装置はT2強調画像のほか、拡散強調画像、ダイナミック造影像などが同時に撮影できるようになるなど進化が急速です。
多岐にわたる撮影法で総合的にがん細胞をとらえることで、T2強調画像だけでは困難とされていた、移行域を含む内腺部に存在する微小な早期前立腺がんの発見も可能といわれています。
より鮮明に前立腺の病変がわかる
また、臨床に使用されているMRIには0.2~3.0テスラ(テスラとは、磁力の大きさを表す単位)まであり、数値が大きいほど解像度がよく、質の高い画像を撮影することができます。
最近では高質の1.5テスラが主流になってきており、さらに3.0テスラを導入する病院も見られるようになりました。磁気の強さが2倍になると感度が4倍になり、1.5テスラでは小さくてわかりにくかった病変が、より鮮明に映し出され、早期発見・治療に期待が高まっています。
従来は、前立腺生検で確定診断されたあとに検査していたMRI。しかし、機器の飛躍的進歩により、前立腺生検の前、超音波検査の次にMRIを行う病院が増えています。MRIの結果次第では、前立腺生検を行わないで確定診断できるケースもでてくる可能性があります。
MRIガイドによる前立腺生検
前立腺がんの生検(細胞を採取して調べる検査)は、超音波画像を見ながら行う針生検が一般的です。しかし、超音波では前立腺がんをとらえにくく、病変部をねらって針を刺すことがむずかしいため、ランダムに何回か針を刺して細胞を採取しています。
最近では、MRI画像を超音波画像に取り込んで生検を行うことも可能になりました。MRI画像では病変の位置や悪性度が正確にわかるため、そこをねらって細胞を採取でき、患者さんの負担も軽くなります。
以上、前立腺がんの検査についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。