膵臓がんが膵尾側にある場合の手術に関して、合併症として最も重要なものは、膵臓の切離断端から膵液が漏れる「膵瘻(すいろう)」です。
膵液が漏れると、膿瘍になったり、膵断端近くの動脈が傷害されたりして大出血の原因となります。
膵尾側膵切除では比較的高い頻度(約5~60%)で膵瘻が起こるため、手術では膵臓の切離断端近傍や腹腔内の深いところ(左横隔膜の下のスペース)などにドレーンが留置され、漏れた膵液が体外に排出されるようにします。
このドレーンが有効であれば、時間はかかるかもしれませんが、膵瘻はだんだんと治っていきます。
また、膵液が漏れる膵瘻に引き続き起こる合併症の1つとして「仮性嚢胞(のうほう)」があります。この仮性嚢胞は、周囲組織としっかり境界された膵液のたまりと理解していいでしょう。小さなものであれば自然と治りますが、感染を併発すると腹腔内膿瘍へ進展します。
この腹腔内膿瘍が発生すると、高熱や炎症反応の著明な増加を認めるため、膿を排泄しなければなりません。通常、超音波・CTガイド下で穿刺し、チューブを留置しますが、開腹手術によるドレナージが選択される場合もあります。
膵切除術(膵臓の全体または一部を切除する手術)により膵液の分泌量が低下し、消化吸収障害が起こります。これにより、下痢や脂肪便が見られることがあります。
また、膵臓の近くには腸へいく自律神経が通っています。この神経を切除することもあり、その場合、腸の運動が活発になるため、高度な下痢になります。下痢に対しては、下痢止めを内服します。また、脂肪便では膵消化酵素剤の内服や食事を脂肪制限食にすることによって治療します。
以上、膵臓がんの手術についての解説でした。