前立腺がんに対して積極的な治療を行わず、定期的にPSAの数値を計測しながら経過を見守る方法=PSA監視療法は、前立腺がんに特有の選択肢の1つです。
PSA検診の普及によって、日本でも早期がんの診断率が増加しています。なかには、身体に負荷のかかる治療(侵襲的治療)が必要のないがんも診断されてきます。問題は、手術や放射線治療など、ダメージを負う治療が必要でないと判断する決定的な判断材料がまだ存在しないというところにあります。
そのため、ある程度の目安をつけて無治療で経過を追っていって、本当に治療が必要と判断されるまで監視する方法が提案され、PSA監視療法と日本では名づけられています。
現在までの報告をまとめると、3~5年間の監視療法中(経過観察中)に、約30%の症例で進行を認め手術などの治療に移行しているようです。
進行を確認するためには、生検を含めた定期的な検査を避けることができません。また、いつ進行して、手術や放射線療法を受けなければならなくなるかという不安が付きまといます。これらが障害となって、世界中でPSA監視療法は、あまり患者には好まれていないといえます。
しかし、副作用の少ない内服薬が開発されるなど、より優れたホルモン療法が登場すれば、PSA監視療法のかたちも確実に変化してくるものと思われます。放置のような形ではなく、「必要な治療を受けている」という心理的安心感があり、副作用がないのであれば長く緩く治療を続けていけるからです。
PSA監視療法が、あまり普及しないもう1つの原因は、PSA監視療法は医師にとって「がんがあるのに治療しない」という判断をするのが怖い、判断しずらいという心理面にもあるといえます。
以上、前立腺がんの監視療法についての解説でした