
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
がんの治療において、飲み薬タイプの抗がん剤が増えてきています。その中でもゼローダ(一般名:カペシタビン)は、大腸がんや胃がん、乳がんの治療で広く使われている経口抗がん剤です。
この記事では、ゼローダの特徴や対象となるがん、投与方法、気をつけるべき副作用、そして費用や保険適応について、患者さんが知っておくべき情報を詳しく解説します。
ゼローダ(カペシタビン)とはどんな薬か
ゼローダは、フルオロウラシル(5-FU)という抗がん剤のプロドラッグです。プロドラッグとは、体内に入ってから代謝されて活性型の薬になるように設計された薬のことです。
カペシタビンは口から服用すると、消化管で吸収され、肝臓や腫瘍組織で段階的に代謝されます。最終的に腫瘍組織に高濃度で存在する酵素(チミジンホスホリラーゼ)によって5-FUに変換されます。
この仕組みにより、がん組織で選択的に5-FUが生成されるため、正常な組織への影響を抑えながら、がん細胞に対する効果を発揮できるという特徴があります。
5-FUに変換された後は、DNA合成を阻害することでがん細胞の増殖を抑えます。また、RNAの機能を妨げることでも抗腫瘍効果を示します。
ゼローダの特徴と利点
ゼローダには次のような特徴があります。
まず、錠剤で服用できるため、点滴の抗がん剤と比べて通院の負担が軽減されます。自宅で内服できることは、患者さんの生活の質を保つ上で重要です。
次に、5-FUを点滴で投与する場合と比べて、下痢や吐き気などの副作用が起こりにくいという利点があります。これは、腫瘍組織で選択的に5-FUが生成される設計によるものです。
また、他の抗がん剤や分子標的薬と組み合わせて使用することで、より高い治療効果が期待できます。
対象となるがんと保険適応
ゼローダは以下のがんに対して保険適応となっています。
胃がん
胃がんに対しては、シスプラチンなどの白金製剤と併用して使用します。この場合はC法という投与方法を用います。
結腸がん・直腸がん
大腸がん(結腸がん・直腸がん)では、次のような使い分けがされています。
結腸がんや直腸がんの術後補助化学療法では、B法を使用します。オキサリプラチンと併用する場合(XELOX療法)はC法を用います。
治癒切除不能な進行・再発の結腸がん・直腸がんに対しては、他の抗がん剤との併用でC法またはE法を使用します。
直腸がんで放射線照射と併用する場合は、D法を使用します。
乳がん
手術不能または再発乳がんに対しては、A法またはB法を使用します。ラパチニブという分子標的薬と併用する場合はC法を用います。
単独で使用する場合は、アントラサイクリン系抗がん剤による治療が効かなくなった、または再発した場合に限られます。
投与方法と投与スケジュール
ゼローダの投与方法は、患者さんの体表面積とがんの種類、併用する薬によってA法からE法までの5つの方法があります。
投与方法の基本
いずれの方法でも、朝食後と夕食後の30分以内に1日2回服用します。空腹時の服用は避け、必ず食後に服用することが大切です。
投与量は体表面積に応じて決められます。体表面積は身長と体重から計算され、患者さんごとに適切な用量が設定されます。
各投与方法の詳細
| 投与方法 | 主な適応 | 投与期間 | 休薬期間 | 1コース |
|---|---|---|---|---|
| A法 | 乳がん(単独) | 21日間 | 7日間 | 28日間 |
| B法 | 大腸がん術後、乳がん | 14日間 | 7日間 | 21日間 |
| C法 | 進行大腸がん、胃がん、乳がん併用療法 | 14日間 | 7日間 | 21日間 |
| D法 | 直腸がん(放射線併用) | 5日間 | 2日間 | 7日間の繰り返し |
| E法 | 進行大腸がん併用療法 | 14日間 | 7日間 | 21日間 |
最も一般的なのはB法で、14日間連続して服用し、その後7日間休薬するという3週間のサイクルを繰り返します。
体表面積による1回の用量は、例えばB法の場合、体表面積が1.33㎡未満なら1回1,500mg、1.33㎡以上1.57㎡未満なら1回1,800mg、1.57㎡以上1.81㎡未満なら1回2,100mg、1.81㎡以上なら1回2,400mgとなります。
投与期間と治療の継続
術後補助化学療法の場合、通常は6か月間(約8コース)の治療が推奨されています。
進行がんや再発がんの場合は、効果が続く限り、また副作用が許容できる範囲で治療を継続します。定期的な画像検査や血液検査で効果を確認しながら、治療を進めていきます。
主な副作用とその対策
ゼローダで注意すべき副作用には以下のものがあります。
手足症候群
最も注意すべき副作用は手足症候群です。これは手のひらや足の裏、指先などが赤くなり、腫れて痛みが出る症状です。
症状が軽い場合は、ピリピリとした感覚や皮膚の乾燥、軽い発赤が見られます。症状が進むと、痛みで物がつかみにくくなったり、歩行が困難になったりすることがあります。
手足症候群については、後ほど詳しく解説します。
消化器症状
下痢、吐き気、嘔吐、食欲不振、口内炎などの消化器症状が起こることがあります。
下痢は早めに対処することが重要です。軟便の段階で整腸剤を使用し、水分補給を十分に行います。ひどい下痢が続く場合は、脱水症状を防ぐため、すぐに医療機関に連絡してください。
口内炎ができた場合は、刺激物を避け、うがい薬で口腔ケアを行います。痛みが強い場合は、痛み止めの軟膏を使用することもあります。
骨髄抑制
白血球減少、貧血、血小板減少などの骨髄抑制が起こることがあります。
白血球が減少すると、感染症にかかりやすくなります。発熱や寒気、のどの痛みなどがあれば、すぐに医師に連絡してください。
定期的な血液検査でこれらの値をチェックし、必要に応じて休薬や減量が検討されます。
その他の副作用
疲労感、頭痛、めまい、味覚異常、皮膚の発疹などが起こることがあります。
これらの副作用は個人差が大きく、すべての患者さんに起こるわけではありません。また、多くの場合、適切な対処により症状を軽減できます。
手足症候群について詳しく
手足症候群はカペシタビンの特徴的な副作用であり、患者さんの生活の質に影響を与えるため、予防と早期対応が重要です。
手足症候群の症状
手足症候群は段階的に進行します。
初期段階(グレード1)では、手のひらや足の裏にピリピリとした感覚があり、軽い発赤や皮膚の乾燥が見られます。この段階では日常生活への影響は少ないです。
中等度(グレード2)になると、痛みを伴う腫れや発赤が広がり、皮膚の剥がれが起こります。細かい作業がしにくくなったり、歩行時に痛みを感じたりします。
重度(グレード3)では、激しい痛みで日常生活に支障をきたします。この段階では休薬や減量が必要になります。
手足症候群の予防方法
手足症候群を予防するには、次のような対策が有効です。
まず、保湿が最も重要です。治療開始前から、1日に何度も保湿剤を塗ります。ヘパリン類似物質含有製剤や尿素製剤などの保湿剤を、朝起きた時、入浴後、就寝前など、こまめに塗布してください。
保湿剤は処方されたものだけでなく、市販の保湿クリームも併用して、できるだけ多く使用することが推奨されます。
次に、手足への圧力、熱、摩擦を避けることが大切です。
きつい靴やハイヒールは避け、柔らかく足にフィットする靴を選びます。靴下も締め付けの少ないものを選んでください。
長時間の歩行やジョギング、ガーデニングなどの手足に負担がかかる活動は控えます。
水仕事をする時は手袋を着用し、入浴やシャワーはぬるめの温度に設定します。熱いお湯は症状を悪化させることがあります。
日焼けも避けるべきです。外出時は日傘や手袋、日焼け止めを使用してください。
手足症候群の治療
症状が現れた場合の対処法として、ステロイド外用剤の使用が有効です。発赤部位に対して、医師の指示のもとでステロイド軟膏を塗布します。
最近の研究では、外用ジクロフェナク(非ステロイド性消炎鎮痛剤のゲル)が手足症候群の予防と治療に有効であることが報告されています。1%ジクロフェナクゲルを1日2回塗布することで、手足症候群の発現率を下げることができます。
症状が軽い段階で早めに対処することが、重症化を防ぐために重要です。1~2週間経過しても改善が見られない場合や、症状が悪化する場合は、休薬や治療内容の見直しが必要になります。
グレード2以上の症状が出た場合は、確実な改善のために休薬することが推奨されます。休薬により症状は通常1~2週間で改善します。症状が改善したら、減量して治療を再開することができます。
費用と保険適応
ゼローダの治療には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
薬剤費
ゼローダ錠300mgの薬価は、2025年時点で1錠あたり124.3円です。ジェネリック医薬品(カペシタビン錠)は1錠あたり65円となっています。
例えば、体表面積が1.5㎡の患者さんがB法で治療する場合、1回の服用量は1,800mg(300mg錠を6錠)となります。
これを1日2回、14日間服用するため、1コースで必要な錠剤数は以下のように計算できます。
6錠×2回×14日間=168錠
先発品のゼローダを使用した場合の薬剤費は、168錠×124.3円=20,882円(保険適応前)となります。
ジェネリック医薬品を使用した場合は、168錠×65円=10,920円(保険適応前)となります。
保険適応と自己負担額
ゼローダは、適応となるすべてのがんに対して保険適応となっています。
健康保険が適用されると、70歳未満の患者さんは医療費の3割を自己負担します。
先発品のゼローダを使用した場合、3割負担での薬剤費は約6,260円となります。ジェネリック医薬品を使用した場合は約3,280円となります。
これに診察料、検査料、処方料などが加わります。
高額療養費制度の活用
がん治療では、1か月の医療費が高額になることがあります。このような場合、高額療養費制度を利用することで、自己負担額を軽減できます。
高額療養費制度では、1か月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた分が払い戻されます。
自己負担限度額は、年齢や所得により異なります。例えば、70歳未満で年収約370万円~770万円の方の場合、自己負担限度額は以下の計算式で求められます。
80,100円+(医療費総額-267,000円)×1%
月の医療費総額が100万円だった場合、自己負担限度額は87,430円となり、窓口での3割負担額30万円との差額212,570円が払い戻されます。
限度額適用認定証を事前に取得して医療機関に提示すれば、窓口での支払いを限度額までに抑えることができます。
治療全体の費用
術後補助化学療法で6か月間(約8コース)治療を行う場合の薬剤費の目安は、ジェネリック医薬品を使用した場合で約87,360円(保険適応後の3割負担)となります。
これに診察料、検査料などを含めると、治療全体の自己負担額は高額療養費制度を利用することで、さらに軽減できます。
日常生活への影響と注意点
服用時の注意
ゼローダは必ず朝食後と夕食後の30分以内に服用してください。空腹時に服用すると吸収が不安定になり、副作用のリスクが高まることがあります。
飲み忘れた場合は、気づいた時点で次の服用時間まで2時間以上あれば服用します。次の服用時間が近い場合は、1回分をとばして次の分から服用してください。2回分を一度に服用してはいけません。
他の薬との相互作用
ゼローダには注意が必要な薬の組み合わせがあります。
ティーエスワン(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)との併用は禁止されています。これらを併用すると、重篤な血液障害などの副作用が起こる可能性があります。
ワルファリン(血液をサラサラにする薬)と併用する場合は、血液凝固能検査を定期的に行う必要があります。出血のリスクが高まるため、注意深い観察が必要です。
フェニトイン(てんかんの薬)やロンサーフ(トリフルリジン・チピラシル)との併用にも注意が必要です。
他の医療機関を受診する際や、市販薬を使用する際は、必ずゼローダを服用していることを伝えてください。
腎機能による用量調整
腎機能が低下している患者さんでは、用量の調整が必要になります。
クレアチニンクリアランスが30~50mL/分の場合は、1段階減量(75%の用量)して使用します。
クレアチニンクリアランスが30mL/分未満の場合は、使用できません。
腎機能は定期的に検査で確認されますので、医師の指示に従ってください。
日常生活で気をつけること
治療中は、感染症を予防するために手洗いやうがいを徹底してください。白血球が減少している時期は、特に注意が必要です。
発熱(37.5℃以上)、寒気、のどの痛み、咳などの症状が出たら、すぐに医療機関に連絡してください。
脱水症状を防ぐため、十分な水分補給を心がけます。特に下痢がある場合は、こまめに水分を摂ってください。
バランスの良い食事を心がけ、口内炎がある時は、刺激の少ない柔らかい食事を選びます。
適度な運動は体力の維持に役立ちますが、手足症候群を予防するため、激しい運動や長時間の歩行は避けてください。
定期的な診察と検査
治療中は定期的に診察を受け、血液検査で白血球、赤血球、血小板の数値を確認します。
副作用の状況を医師に正確に伝えることが、適切な治療継続のために重要です。症状が軽いと思っても、手足症候群や下痢などの副作用は早めに報告してください。
症状日誌をつけることで、副作用の経過を把握しやすくなります。いつから症状が始まったか、どのような症状か、日常生活への影響はどの程度かなどを記録しておくと、診察時に役立ちます。
まとめ
ゼローダ(カペシタビン)は、胃がん、大腸がん、乳がんの治療で広く使われている経口抗がん剤です。
腫瘍組織で選択的に活性化される設計により、効果的にがん細胞を攻撃しながら、正常な組織への影響を抑えることができます。
錠剤で服用できるため、通院の負担が軽減され、患者さんの生活の質を保ちやすいという利点があります。
主な副作用は手足症候群で、保湿と手足への負担を避けることで予防できます。症状が現れたら早めに対処することが重要です。
費用面では、保険適応となっており、高額療養費制度を活用することで自己負担を軽減できます。ジェネリック医薬品を選択することで、薬剤費をさらに抑えることができます。
治療を安全に続けるには、服用方法を守り、副作用に早めに対処し、定期的な診察と検査を受けることが大切です。
気になる症状があれば、遠慮なく医療スタッフに相談しましょう。適切なサポートを受けながら、治療を続けていきましょう。
参考文献・出典情報
- 日本ジェネリック株式会社「カペシタビン錠300mg添付文書」https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/42/4223005F1073.html
- 中外製薬株式会社「ゼローダ錠300添付文書」https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00049412
- がん情報サイト「オンコロ」ゼローダ(カペシタビン)https://oncolo.jp/drug/xeloda
- 沢井製薬「副作用マネジメント:手足症候群」https://med.sawai.co.jp/oncology/management/vol_06.html
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群」2019年
- ケアネット「カペシタビンによる副作用、手足症候群は外用ジクロフェナクで対策?」https://www.carenet.com/news/general/carenet/58163
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 国立がん研究センター中央病院監修「カペシタビンの治療を受けられる患者さんへ」東和薬品株式会社 2023年11月改定
- 日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン2022年版」
- HOKUTO「カペシタビン(ゼローダ)レジメン」https://hokuto.app/regimen/RmbHcDdZjJMKJh8jbZpA
