がんの症状の1つに、痛みがあります。
とくに再発・転移がんの患者さんでは、発現する時期や強さに個人差があるとはいえ、ほとんどの場谷に痛みがともないます。腫瘍が大きくなったり、広がったりすることで内臓を圧迫したり神経に浸食したりすることで痛みが生じます。
そのため、がんの痛みをとることも大事な治療だといえます。
痛みをとる治療は、一般的には「緩和ケア」に含まれます。
緩和ケアというと、末期がんの患者さんに行われるものと思っている人が多いですが、現在は世界的に「早期からの緩和ケア」が推奨されています。どの段階においても痛みのコントロールは重要だと考えられています。我慢しないことが大切です。
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がんの痛みの標準治療は、1986年に公表された「WHO方式がん疼痛治療法」です。使用される薬は大きく、非オピオイドとオピオイドに分かれます。
軽い痛みには非オピオイドを使い、痛みがとれないようなら、弱いタイプのオピオイドに、それでも効かない場合は強いオピオイドに替えていきます。
1.非オピオイド
一般的に痛み止めとして使われている非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)のことを指します。アスピリン(アスピリン)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)、ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニンなど)などがあります。
胃腸障害などの副作用が起こりやすいので、長期間服用するときは胃を守る薬を併用します。
2.オピオイド
モルヒネなどの医療用麻薬のことです。作用の強さによって弱オピオイドと強オピオイドに分かれ、前者はコデインなど、後者にはモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルがあり、薬の剤型も注射薬、飲み薬、座薬、貼り薬(パッチ剤)など、さまざまなものが出ています。
また、効いている時間が短いもの、長いものなどがあり、患者さんの痛みの状態に合わせて使っていきます。
オピオイドの使用については、依存性があるのではと不安に思われる方もいると思います。確かにこれらの薬を痛みのない人に使うと薬物依を引き起こすことがありますが、がんの治療薬として使われる場合はこうした依存が起こらないことが分かっています。
3.骨転移による痛みをやわらげる薬
骨転移を起こす患者さんは、年間10万人程度とされ、肺がんと乳がんの患者さんが半数を占めるといわれています。がんが骨に転移すると、強い痛みやマヒ、骨折などが起こり、生活の質が著しく低下します。
そんながんの骨転移に有効なのが、骨粗しょう症の治療薬としても使われているビスホスホネート製剤です。2004年にパミドロン(アレディア)が乳がんの骨転移の、06年にはゾレドロン(ゾメタ)がさまざまながんの骨転移治療薬として承認されました。
骨に転移したがん細胞は破骨細胞を活性化させ、骨を壊していきます。ビスホスホネート製剤はそのはたらきを止め、骨がもろくなるのを防ぎます。この治療薬が使用できるようになって、骨転移に苦しんでいる多くの患者さんの痛みと骨折を抑えられるようになりました。
また、新たな骨病変治療薬として、骨代謝に関係するRANKLというタンパクに作用するデノスマブが、11年12月に承認されました。半年に1回の投与で骨折リスクが減少するとされます。
以上、痛みを取るための薬物療法についての解説でした。