がんに使う薬(抗がん剤や分子標的薬)は体に与えるダメージ(副作用)が大きいことはよく知られています。
そのため事前に薬の有効性や副作用を予測するための技術が開発されてきました。具体的には患者個々が持つ遺伝子の状態などを調査することでどんな薬が効きやすいか判断することができます。
患者がかかった病気の遺伝子の状態(変異の有無や標的分子の発現など)を調べる医薬品のことを、「コンパニオン診断薬」といいます。
最近では遺伝子変異を標的にする分子標的薬(抗がん剤ではなく、がん細胞特有の特徴に作用する薬)が多く開発されるのにともなって、その重要度が増してきました。国内でもすでにいくつかの診断薬が承認されています。代表的なのが、乳がん治療薬のトラスツズマブやラパチニブの診断薬です。
投与前にHER2という遺伝子が過剰に発現しているかどうかを調べるために用いられます。トラスツズマブは胃がんにも適応拡大されたので、現在は胃がんの人にもこの診断薬が欠かせなくなりました。
また、大腸がん治療薬のセツキシマブやパニツムマブは、KRAS遺伝子に変異がない(野生型)と治療効果が高いことが分かり、その診断薬も承認されました。
その後、CCR4陽性の成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の治療薬モガムリズマブ(ポテリジオ)とその診断薬(ポテリジオテスト)が同時に承認、さらに肺がんの治療薬クリゾチニブの診断薬も承認されました。
こうした診断薬を治療薬とセットで用いることによって、一人ひとりに合った薬を使う「個別化医療」が進んでいる状況です。
以上、コンパニオン診断薬についての解説でした。