食道がんの治療にあたっては、食道がんのステージ(病期)に応じ、「食道癌診断・治療ガイドライン(日本食道学会)」などを参考にして、医師とよく相談したうえで、治療方針を決めていくのが一般的です。
がんの深達度が浅いものは、内視鏡を使ってにがんを切除することが可能です。そのほか、手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法の三本柱を選択し、あるいは組み合わせて「集学的治療(複合的な治療)」を行っていきます。
ステージ0の食道がんに対する内視鏡治療
がんが粘膜内にとどまり、リンパ節転移がないものは、内視鏡治療が適応されます。ただし、がんが食道内腔の3分の2以上に及ぶものは、内視鏡的に切除したあとの食道狭窄の可能性が高く、そのほかの治療を選択することもありえます。
また、がんが粘膜下層まで及ぶもののうち、粘膜下層の浅い部分までしか達していないもので、リンパ節転移のないものも、内視鏡治療の対象とすることがあります。
食道がんは、ほかの消化器がんに比べて、深達度の浅い状態でもリンパ節転移を起こしやすいため、リンパ節転移の有無についてきちんと診断することが必要です。そして、リンパ節転移を認めた場合は、基本的にはリンパ節郭清(かくせい。転移の可能性のあるリンパ節を手術で取り除くこと)が求められます。
ステージーⅠ、Ⅱ、Ⅲの食道がんに対する手術
食道がんの標準的な手術は、食道の切除および頸部・胸部・腹部3領域のリンパ節郭清です。食道がんの存在する部位によって、食道の切除の方法や、食道切除のあとに、食べものの通り道を再建する方法が変わってきます。化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法を行ってから手術を行う場合もあります。
あるいは、手術可能な場合でも、手術に耐えられる全身状態ではない場合や、食道を残すことで機能の温存やQOL(生活の質)の維持を図りたい場合などは、化学放射線療法が選択される場合もあります。
また、リンパ節転移を認めた食道がんは、術後補助療法として、再発予防のために化学療法(抗がん剤治療)が行われることがあります。
ステージⅢ、Ⅳの食道がんに対する化学療法・放射線療法
進行した食道がんの場合、遠く離れたリンパ節にまでがんが入り込んでいたり、食道周囲の気管や大動脈、心臓などの臓器にがんが浸潤していたりして、手術ではがんが取り切れない場合があります。
その際、化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法、あるいはその療法を組み合わせた化学放射線療法が行われることが一般的です。治療の途中で、治療の効果を判定し、手術に移行する場合もありますし、根治を目指して化学療法や放射線療法が継続される場合もあります。
放射線はがん細胞を攻撃しますが、正常の組織も攻撃します。そのため、人間のからだの1か所にあてられる放射線の量には限りがあります。そのため、放射線をこれ以上あてられないという量まで達してしまったあとに、がんが残ってしまった場合、もしくは1度消えたがんが再び顔を出した場合(再発)、有効な治療は手術のみとなります。
これを「サルベージ(救済)手術」といいます。通常の手術に比べると肺炎などの合併症の頻度が高く、手術による死亡率が通常の手術に比べて高いことが知られています。
治療を行えるかどうかには、体力的なことや、食道がん以外の病気の有無など、全身状態を診ることが重要となります。がんの広がり具合や全身状態によっては、「緩和医療」が望ましいこともあります。
化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法も、からだには負担がかかるものです。1度の治療で、がんが消えてくれるということは、通常ではあまりないため、治療を繰り返す必要も出てきますので、自分が何を希望するのかをよく考え、治療方針について担当の医師と納得いくまで話し合うことが大切です。
以上、食道がんに関する解説でした。