大腸がんは肺に転移することがしばしばあります。10年間なにもなくて、突然肺に影が出るケースもあります。肝臓への肝転移と同様で、転移の数が単独か2~3個で左右のいずれかの肺に限局している場合は手術での摘出が行われます。
肺の左右両葉にまたがって転移があるときは、切除しても1年も経たないうちに肺に再発が見られ、成績は良くありません。せっかく手術をしてもすぐ新しい転移が出てくれば無意味なので、転移が見つかったときに2~3ヵ月かけて慎重に検査し、他に出てこないことを確認してから手術することもあります。
近年では開胸しないで胸腔鏡で内視鏡を使って切除する方法が開発され、簡単でストレスも少ないので、手術後すぐ退院できるようになりました。
肝臓転移の場合は化学療法がおこなわれますが、肺転移への化学療法はなかなか効きめがありません。
転移性肺がんに対する手術ができるのは、患者が手術に耐えうること、大腸の原発巣が治療されていること、肺以外に遠隔転移巣がないこと、肺転移がX線写真上で左右の片側に限られていることです。
大腸の肺転移巣切除後の5年生存率は47.5パーセントです。さらに近年では左右両側に転移があっても、胸腔鏡下で積極的に肺切除を行い、5年生存率は30~45パーセントという結果を残しています。
肺転移に対する手術以外の治療
切除不能な肺転移には化学療法を行うことになりますが、化学療法は全身化学療法に頼らざるをえません。進行・再発大腸がんに対する全身化学療法の抗腫瘍効果は低く、肺転移巣への奏功率は0~1Oパーセントと厳しい結果になっています。
大量の5-FUの経口投与とマイトマイシンCの併用療法が、大腸がんの肺転移に対して有効だという報告もありますが当然副作用は厳しくなります。いずれの報告も、結びの言葉として「新しい薬の出現を期待する」と述べているのが現状です。
以上、大腸がん手術後の肺臓転移についての解説でした。