早期の胃がんは手術をすることが前提ですが、再発したり、切除不能なほど進行したり、転移していたりする場合は化学療法(薬を使った治療)が軸になります。
では、胃がんで行われている標準的な化学療法(2014年時点)はどういったものなのでしょうか。
胃がんの化学療法は1次~3次治療まであるといえます。1次治療で行うことがガイドラインで推奨されているのはTS-1とシスプラチンの併用です。TS-1は単独でも使われることのある、昔から使われてきた薬ですが、これにシスプラチンを併せることで単独よりも抗腫瘍効果があることが認められています。
ただし、シスプラチンは腎臓に対する毒性が強いため、大量の水分が必要など患者にとっては負担の大きい薬です。そのためTS-1単独で行われる場合もあります。
2次治療では「これを使うべき」といった明確な指針はありませんが、現場ではタキソール、タキソテール、イリノテカン、アブラキサンなどのうちどれかを使う治療が一般的です。また、2014年からは大腸がんで使われていたエルプラット(オキサリプラチン)も使われるようになりました。
3次的な要素として定着しつつあるのが、抗がん剤よりも比較的副作用が軽微とされる分子標的薬です。特に乳がんで使われてきたハーセプチン(トラスツブマブ)が使用されるケースが増えてきました。
ハーセプチンはがん細胞の表面にHER2タンパクが存在している場合(HER2陽性の場合)、これを標的としてがん細胞の増殖・増大を阻害するための薬です。
胃がんでもHER2陽性である場合が15%程度あります。胃がんの細胞を検査してHER2陽性であれば、ハーセプチンの投与対象になります。基本的には単独で使用されることはなく、がんを直接攻撃する抗がん剤とハーセプチンが併用されます。
ハーセプチンが胃がんに適用されるようになったのは2011年のことですが、それ以来、あまり新薬として使われる薬が増えていません。昨今の薬剤研究の中心はハーセプチンのような分子標的薬です。がん細胞がもつ何らかの特徴を調べ、正常細胞にはできるだけダメージを与えないようにする薬が望まれているからです。しかし、胃がんには特徴となる要素が他のがんと比べて見つけにくく、欧米で胃がんが少なく研究対象として上位になっていないことで開発が遅いのです。
したがって、現在は従来の抗がん剤をいくつか使う方法と、HER2陽性であればハーセプチンを使う、という化学療法の進め方になっています。新しい要素としてはニモツズマブやラムシルマブなどの分子標的薬を従来の抗がん剤と併用することがテストされています。
以上、胃がんの化学療法についての解説でした。
ステージ3、4と進行してくると、病院でできる治療法の選択肢は少なくなります。しかし、病院で受ける治療法は、がんと闘うための手段の一部にすぎません。
胃がんを克服するためには、病院での治療より重要なことがあります。