全国からがん患者さんが訪れる理由
この神社の正式名称は石切劔箭(いしきりつるぎや)神社。
創建は平安時代にさかのぼり、「刀剣の神」「病気平癒の神」として古くから信仰を集めてきました。
とくに「でんぼ(腫れ物)の神様」として知られ、
がん患者さんやそのご家族が全国から祈祷を求めて訪れます。
境内では、病衣や包帯を身につけた方や、ご家族が並んで祈る姿も珍しくありません。
その多くは、「癌封じ」や「がん治癒」「再発防止」「手術の成功」など、
個別の願いを書いて申し込んでいます。
これらは祈祷受付で神職に伝えられ、祝詞の中で「本人または代理者」の名前と願意が読み上げられます。
がん封じ祈祷とはどんなもの?
当日祈祷は社務所で受付ができ、初穂料は5,000円程度。神職による祝詞奏上、
御神符(お札)や御守りの授与が含まれた正式な儀式です。
本人が参拝できない場合でも、家族が代理申請でき、
御神符には頼んだ本人の名前が記されます。
参加者からは「お札を見て心が強くなった」「治療前に心が安定した」という声も多く聞かれます。
境内の“見える祈り”水神社とがん封じ水
石切神社には「水神社」という社があり、
ご神水を自由に汲み取れるようになっています。
参拝者がペットボトルなどを持参し「がん封じの水」として自身で汲んで帰る姿が見られます。
これは自発的な行為で、公式の授与品ではありません。
ご神水に手を浸す、ご祈祷後に患部にかける、といった使い方を実践する人も多く
心に安心感を与える効果があるかと思います。
お百度参り──歩く祈りの儀式
境内には「お百度石」が2つ設置されており、信者が同じ石を何度も往復しながら祈ります。
これは「お百度参り」と呼ばれる伝統的な祈りの様式で、
石には年季によって溝が刻まれています。
多い人では百回、千回単位で歩き切ることもあり、
肉体の苦痛と祈りが重なることで深い精神浄化が感じられると言われます。
あるがん患者さんは、術前に百回以上回って気力を補った、と話していました。
歩みを通じて自己との向き合いが生まれ、治療に立ち向かう覚悟が整ったという実感を得る方も少なくありません。
願い亀 小さな祈りを託す存在
水神社の池には、「願い亀」と呼ばれる小さな亀の腹部に願いを書いて放す習慣があります。
甲羅干し中の亀がひと息つく姿も見られ、参拝者との穏やかな交流が生まれています。
がん封じの願いを託した亀を、病が癒えたあとは「御礼亀」として奉納しに来る方もいます。
御守り・根付け・チャーム
がん封じに訪れる多くの方が選ぶのが「病気平癒御守」です。
袋タイプのほか、バッグや衣類に付けやすい根付け、小さなチャーム型も人気。
中には水晶や鏡飾りが埋め込まれたものもあります。
御守りの価格は500~1,500円と幅があり、
参拝者が「これだ」という形を選ぶことで、祈りの意志がより濃くなります。
がんと向き合う人には、この「選ぶ行為」自体が心の確認になるようです。
願いランプと祈願絵馬─
本殿前には小さな「願いランプ」が点ぜられ、がん患者さんはそこに絵馬を掛け、心願を書き残します。
多くの人々の願いが重なり、祈りの「重み」が感じられる場所です。
絵馬に書かれるメッセージは「がん治癒」「再発防止」「手術成功」「家族と元気な時間を」など多様ですが、
ひとつひとつが祈る人の覚悟を示しています。
願い絵馬を見ることで、がん患者同士の連帯感や安心感が芽生えるかもしれません。
■ 回復後のお礼参り
がんと長い闘いを経た後、多くの方が再び石切神社を訪れ、お礼参りをします。
その際、御神符や御守りは授与所に返納し、新たな御神符を授かる場合もあります。
この一連の動作は「心の清算」「新たなる出発」を象徴しています。
旅行記サイトでは「友人のがんが小康状態になり、お礼参りに涙を流した」という報告もあり、
現実の変化へ希望をつなげていることがよくわかります。
アクセスと参拝環境に関する配慮
石切劔箭神社は、近鉄奈良線「石切駅」から徒歩5分ほど、車でもアクセスしやすい立地です。
専用駐車場もあり、土日は混雑するものの、平日午前中であれば参拝しやすい環境です。
ただし、境内には石段も多く、車椅子の方や歩行に不安のある方は付き添いをおすすめします。
杖や補助具があると参拝がさらに楽になります。
祈祷受付は通常9時〜16時30分。混雑状況によっては待ち時間が発生するため、
体調が不安定な場合は午後より午前中の参拝が望ましいでしょう。