
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
ウコンはインドや沖縄で古くから利用されてきた植物で、特に日本では「二日酔い防止」や「肝臓に良い」といった効能が広く知られています。近年では、がんに対する効果を期待して摂取される方も少なくありません。
しかし、ウコンががんに対して本当に効果があるのかについては、科学的な検証が必要です。この記事では、2026年の最新情報をもとに、ウコン(その主成分であるクルクミン)のがんへの効果を、科学的根拠に基づいて客観的に検証していきます。
ウコンとクルクミンの基礎知識
ウコンは、ショウガ科の多年草植物で、東南アジアを中心に分布しています。カレー粉の黄色い色素「ターメリック」として広く知られており、香辛料や着色料として使用されています。
日本で流通しているウコンには主に3種類あります。
| 種類 | 特徴 | クルクミン含有量 |
|---|---|---|
| 秋ウコン | クルクミンの含有量が多い。二日酔い対策として市販 | 高い |
| 春ウコン | 沖縄で薬草として多用。精油成分が豊富 | やや低い |
| 紫ウコン | 薬用として利用 | 低い |
ウコンの主要な有効成分とされるのがクルクミンです。クルクミンはポリフェノールの一種であり、抗酸化作用や抗炎症作用があるとされています。
PubMedでの検索結果と科学的根拠の現状
ウコンやクルクミンに関する科学的な研究は数多く行われています。世界的な論文掲載機関であるアメリカ国立衛生研究所(NIH)のアメリカ国立医学図書館(NLM)が提供するPubMed(パブメド)で調べると、クルクミンに関する論文は数千件以上あり、がんに関する研究論文も多数存在します。
しかし、これらの研究の大部分は、培養細胞を用いた実験(in vitro研究)や動物を対象とした実験(in vivo研究)です。
人間を対象とした臨床試験で、ウコンやクルクミンががん患者さんに対して次のような効果を示したという確実な証拠は、2026年1月時点では十分に確立されていません。
- QOL(生活の質)を向上させる
- 手術、抗がん剤、放射線治療の副作用を軽減させる
- がんの再発を予防する
- 生存期間を延長させる
米国国立がん研究所(NCI)のPDQ(Physician Data Query)がん情報要約でも、「クルクミン製品ががんを予防または治療できるかどうかを判断する十分な証拠はありません」と明記されています(2025年3月更新版)。
通常のウコン摂取の課題:吸収率の低さ
ウコンやクルクミンが効果を発揮するためには、体内に十分な量が吸収される必要があります。しかし、クルクミンは脂溶性(水に溶けにくい性質)であり、経口摂取した場合の体内への吸収率が低いという課題があります。
具体的には、次のような問題点が指摘されています。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 腸管での吸収率が低い | クルクミン原末をそのまま経口摂取しても、多くは腸管で吸収されず排泄される |
| 血中濃度が上がらない | 吸収されにくいため、抗がん作用を発揮するのに十分な血中濃度が得られない |
| 体内での半減期が短い | 仮に吸収されても、体内で速やかに代謝されてしまう |
実際に、進行した結直腸がん患者さんを対象とした第I相臨床試験では、クルクミンを1日3.6グラムまで4ヶ月間経口投与しても良好な許容性は示されましたが、血中濃度の上昇は限定的でした。
この吸収率の低さが、ウコンやクルクミンの効果が臨床的に確認されにくい大きな要因となっています。
2025年から2026年の最新研究動向
クルクミンの吸収率の問題を解決するため、日本を含む各国の研究機関で新しいクルクミン製剤の開発が進んでいます。
水溶性プロドラッグ型クルクミンの開発
京都大学医学研究科と薬学研究科の研究グループは、株式会社セラバイオファーマと共同で、クルクミンの吸収率を高めた「水溶性プロドラッグ型クルクミン」を開発しています。
この製剤は、TBP1901(クルクミンモノグルクロニド)と呼ばれ、体内でクルクミンに変換されるプロドラッグ(前駆薬)として設計されています。静脈投与により、従来のクルクミン原末の経口投与と比較して約1000倍以上の血中濃度が得られることが確認されています。
動物実験では、次のような結果が報告されています。
- 大腸がんの標準治療薬オキサリプラチンが効かなくなった治療抵抗性大腸がんに対して、顕著な抗腫瘍効果を示した(2020年)
- 標準治療薬ボルテゾミブに抵抗性を示す多発性骨髄腫マウスモデルにおいて、体重減少などの副作用を伴わず顕著な抗腫瘍効果を示した(2022年)
2025年から2026年にかけて、多発性骨髄腫患者さんを対象とした第I相臨床試験が継続されています。この試験では、有効性や安全性の確認が進められており、将来的な第II相臨床試験の準備も計画されています。
クルクミン関連化合物の開発
奈良先端科学技術大学院大学の研究グループは、クルクミンの約60倍以上の抗腫瘍効果を持つ化合物「PGV-1」を開発しました。
この化合物は、マウスを用いた動物実験において、経口投与でも高い腫瘍抑制能を示し、副作用の兆候がまったく認められなかったと報告されています。
免疫療法との併用研究
東北大学大学院医学系研究科の研究グループは、クルクミン類縁体GO-Y030が免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)と併用することで、抗腫瘍効果を増強する可能性を動物実験で示しました(2021年)。
GO-Y030は、がん細胞の周囲に集まる制御性T細胞の機能を抑制することで、がん免疫療法の効果を高める可能性が示唆されています。
現段階での評価
これらの研究は、クルクミンおよびその関連化合物の抗がん作用の可能性を示すものですが、あくまでも動物実験や第I相臨床試験の段階です。
人間のがん患者さんに対して、実際の治療効果があるかどうかは、さらなる臨床試験の結果を待つ必要があります。
がん患者さんへの影響について
QOL(生活の質)を改善するか
通常のウコンやクルクミンを経口摂取することによって、がん患者さんのQOL(生活の質)を改善することを、人間を対象とした大規模な臨床試験で明確に証明した報告は、2026年1月時点では確認されていません。
ただし、一部の小規模な研究では、クルクミン点滴製剤が化学療法や放射線療法の副作用軽減に寄与する可能性が報告されています。例えば、進行乳がん患者さんを対象としたランダム化比較試験では、パクリタキセル治療にクルクミン点滴を併用した場合の安全性と有効性が報告されています。
手術、抗がん剤、放射線治療の副作用や後遺症を軽減するか
通常のウコンやクルクミンの経口摂取によって、手術、抗がん剤、放射線治療の副作用や後遺症の軽減を、人間の大規模な臨床試験で証明した報告は、現段階では十分ではありません。
一部の研究では、放射線治療における皮膚障害や倦怠感などの副作用軽減効果についての報告がありますが、これらは限定的な臨床試験の結果です。
再発を予防したり、生存期間を延長したりするか
通常のウコンやクルクミンを経口摂取することによって、がんの再発を予防したり、生存期間を延長したりすることを、人間を対象とした臨床試験で明確に証明した報告は、現段階ではありません。
進行したすい臓がん患者さんによるクルクミンの第II相臨床試験では、21人の患者さんのうち2人で何らかの抗がん作用を示したという報告がありますが、クルクミンの生物学的利用性(吸収率)は極端に低いと評価されています。
ウコンによる副作用や健康被害
ウコンは古くから香辛料や薬草として使用されてきた歴史があり、通常の食事に含まれる程度の量であれば、一般的には安全と考えられています。
しかし、サプリメントとして長期間にわたって大量に摂取する場合には、健康被害のリスクがあることが報告されています。
肝障害のリスク
日本肝臓学会が2005年に実施した調査では、1994年から2003年に発生した民間薬および健康食品による薬物性肝障害の原因として、ウコンが全体の24.8%を占め、最も多かったことが報告されています。
この調査では、死亡例も3件報告されており、そのうちの1つは、ウコンによる急性肝炎から多臓器不全に至り死亡したケースです。
具体的な事例として、2004年に東京逓信病院が報告した症例では、肝硬変の治療中だった女性患者さんが粉末ウコンを毎日スプーン1杯飲み始めたところ、約2週間後に症状が悪化し、約3ヶ月後に死亡しました。
肝障害が起こる原因
ウコンによる肝障害のメカニズムについては、いくつかの説があります。
| 原因 | 説明 |
|---|---|
| ウコンに含まれる鉄分 | 慢性肝炎や肝硬変の患者さんは肝臓に鉄が蓄積しやすい。ウコンに含まれる鉄分が過剰になり、酸化促進作用で肝炎を悪化させる可能性がある |
| 肝臓への刺激作用 | ウコンの作用そのものが肝臓を刺激することで肝機能を高めるが、肝硬変が進んでいる患者さんには刺激が強すぎる可能性がある |
| クルクミンの酸化促進作用 | クルクミンは抗酸化物質として作用する一方で、鉄と同様に酸化促進作用も持つ「両刃の剣」との指摘がある |
| アレルギー反応 | ウコンの成分によるアレルギー反応が起こる場合がある |
その他の副作用
独立行政法人「国立健康・栄養研究所」のホームページ内にある素材情報データベースでは、ウコンの安全性について次のように記載されています。
- 通常の食事中に含まれる量の摂取であれば、おそらく安全と思われる
- 過剰または長期摂取では消化管障害(下痢、腹痛など)を起こすことがある
- 秋ウコンは胃潰瘍または胃酸過多、胆道閉鎖症の人には禁忌とされる
- 胆石の人は医師に相談する必要がある
また、国民生活センターも2017年8月に「健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがある」と注意喚起を行っています。
がん患者さんが気をつけるべきこと
現段階では、通常のウコンやクルクミンのサプリメントを、がん治療や予防を目的として大量に摂取することは推奨できません。
特に注意が必要な方
| 対象 | 注意事項 |
|---|---|
| 肝疾患のある方 | 肝硬変、慢性肝炎、B型・C型肝炎などの肝疾患がある方は、ウコンの摂取により肝障害が悪化するリスクがある。使用を控えるか、必ず主治医に相談する |
| 胃潰瘍・胃酸過多の方 | 秋ウコンは胃への刺激が強いため、胃潰瘍や胃酸過多の方は使用を控える |
| 胆道閉鎖症の方 | 禁忌とされているため使用しない |
| 胆石のある方 | 医師に相談してから使用する |
| 抗凝固薬を服用中の方 | ウコンは血液凝固に影響を与える可能性があるため、ワーファリンなどの抗凝固薬を服用中の方は医師に相談する |
安全に利用するための原則
もしウコンやクルクミンを摂取する場合は、次の点に注意してください。
- 長期間にわたって大量に摂取せず、適量を守る
- 通常の食事として香辛料程度に摂取する分には問題ないが、サプリメントとして高濃度で摂取する場合は慎重になる
- 全身倦怠感、発熱、かゆみ、黄疸などの症状が現れた場合は、速やかに摂取を中止し医師の診察を受ける
- がん治療中の方は、必ず主治医に相談してから使用する
- 健康食品を摂取する際は、製品の品質や製造元を確認する
将来的な可能性について
現在開発が進んでいる水溶性プロドラッグ型クルクミンやクルクミン関連化合物は、従来のウコンやクルクミンサプリメントとは異なり、吸収率や効果が改善された医薬品としての開発が目指されています。
これらが臨床試験で有効性と安全性が確認され、将来的に実用化されれば、がん治療における新しい選択肢となる可能性があります。
しかし、現時点では臨床試験の段階であり、一般のがん患者さんが使用できる状況ではありません。
まとめ
ウコンやその主成分であるクルクミンについては、動物実験や培養細胞を用いた研究では抗がん作用が報告されています。しかし、人間のがん患者さんに対して、QOLの改善、副作用の軽減、再発予防、生存期間の延長といった効果を示す十分な臨床的証拠は、2026年1月時点では確立されていません。
その主な理由は、通常のウコンやクルクミンは経口摂取した場合の体内への吸収率が低く、十分な血中濃度が得られないためです。
2025年から2026年にかけて、日本の研究機関では吸収率を改善した新しいクルクミン製剤の開発と臨床試験が進められています。これらの研究が進展すれば、将来的にがん治療における新しい選択肢となる可能性がありますが、現時点では研究段階です。
一方で、ウコンのサプリメントを長期間大量に摂取した場合、肝障害などの健康被害が報告されています。特に肝疾患のある方、胃潰瘍や胆道疾患のある方は注意が必要です。
がん患者さんがウコンやクルクミンのサプリメントを使用する場合は、必ず主治医に相談し、適量を守って使用してください。また、異常を感じた場合は速やかに摂取を中止し、医師の診察を受けましょう。
参考文献・出典情報
- がん情報サイト クルクミン(ウコン、ターメリック)とがん(PDQ) - 神戸大学医学部附属病院がん情報サイト
- プロドラッグ型クルクミン注射製剤の抗腫瘍効果及び治療標的の包括的な解析 - 京都大学
- 水溶性プロドラッグ型抗がん剤CMGの治療抵抗性大腸がんに対する抗腫瘍効果を解明 - 京都大学
- クルクミンの抗腫瘍効果を60倍以上高めた化合物を開発 - 奈良先端科学技術大学院大学
- がんが免疫から逃げるのを許さない クルクミン類縁体 - 東北大学
- 健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて - 厚生労働省
- くすりの話 ウコン - 全日本民医連
- ウコンと肝障害について - 東邦大学医療センター大森病院 臨床検査部
- クルクミン - Linus Pauling Institute オレゴン州立大学
- がん、生活習慣病への切り札"クルクミン"の高吸収率を実現する京都大学発バイオベンチャー - FUNDINNO
※この記事の情報は2026年1月時点のものです。最新の治療法や研究成果については、医療機関や主治医にご確認ください。

