埼玉県内で乳がん同時乳房再建手術を実施している主な病院
乳がんの治療において、乳房切除術と同時に乳房再建を行う「同時乳房再建手術」は、患者さんにとって心身の負担を軽減できる選択肢の一つです。埼玉県内には、この同時再建手術に対応できる施設がいくつか存在します。
この記事では、埼玉県で同時乳房再建手術が受けられる医療機関について、2025年の最新情報をもとに解説します。
埼玉県の主要な対応施設
埼玉県内で乳がん同時乳房再建手術を実施している主な病院には以下があります。
医療機関名 | 所在地 | 特徴 |
---|---|---|
埼玉県立がんセンター | 伊奈町 | 県内のがん診療の中核施設。形成外科との連携体制が整備されている |
埼玉医科大学国際医療センター | 日高市 | 包括的がんセンターとして乳腺外科と形成外科が協力して治療を実施 |
さいたま赤十字病院 | さいたま市中央区 | 地域の基幹病院として乳腺外科の診療実績が豊富 |
獨協医科大学埼玉医療センター | 越谷市 | 大学病院として専門的な治療を提供 |
これらの施設では、乳腺外科医と形成外科医が連携して治療にあたる体制が構築されています。
同時乳房再建手術とはどのような治療か
同時乳房再建手術は、乳がんによる乳房切除術(乳房全摘術)を行うと同時に、失われた乳房の形を再建する手術です。乳房切除と再建を一度の手術で行うため、患者さんの身体的・精神的な負担を軽減できる可能性があります。
同時再建のメリット
同時再建には次のような利点があります。手術回数が減ることで入院期間が短縮される、麻酔を受ける回数が一度で済む、乳房を失った状態の期間がないため心理的な負担が少ない、などが挙げられます。
ただし、すべての患者さんに同時再建が適しているわけではありません。がんの進行度、患者さんの全身状態、治療計画などを総合的に判断して、実施の可否が決定されます。
再建方法の種類
乳房再建には大きく分けて「自家組織再建」と「人工物(インプラント)再建」の二つの方法があります。
自家組織再建は、患者さん自身の腹部や背部の組織を用いて乳房を再建する方法です。自然な仕上がりが期待できますが、手術時間が長く、組織を採取した部位に傷が残ります。
人工物再建は、シリコン製のインプラントを用いる方法です。手術時間が比較的短く、身体への侵襲が少ない一方で、異物を体内に入れることになります。多くの場合、まずティッシュエキスパンダー(皮膚拡張器)を挿入して皮膚を伸ばし、後日インプラントに入れ替える二段階の手術が行われます。
埼玉県内の施設選びで確認すべきポイント
同時乳房再建手術を受ける病院を選ぶ際には、いくつかの確認すべきポイントがあります。
診療科間の連携体制
乳がん治療と乳房再建を同時に行うには、乳腺外科と形成外科が緊密に連携する必要があります。両科の医師が治療計画を共有し、協力して手術を行える体制が整っているかを確認しましょう。
症例数と実績
乳がん手術の年間実施件数や、同時再建の実績数は施設を選ぶ際の重要な指標となります。多くの症例を扱っている施設では、医療スタッフの経験も豊富で、さまざまな状況に対応できる可能性が高まります。
提供される再建方法の選択肢
施設によって、対応できる再建方法が異なる場合があります。自家組織再建、インプラント再建の両方に対応しているか、どのような再建技術を提供しているかを確認することが大切です。
サポート体制
乳がん治療では、手術だけでなく術後のケアやリハビリテーション、心理的なサポートも重要です。看護師、理学療法士、カウンセラーなどの専門スタッフが配置されているか、患者支援センターなどの相談窓口があるかも確認しておきましょう。
保険適用と費用について
2013年7月から、乳房再建用のシリコンインプラントが保険適用となり、同時再建手術も保険診療で受けられるようになりました。これにより、経済的な負担が軽減され、より多くの患者さんが再建手術を選択できるようになっています。
保険適用の条件
保険適用で同時再建を受けるには、いくつかの条件があります。乳がんの治療として乳房切除術が必要であること、実施施設が所定の基準を満たしていること、使用するインプラントが承認されたものであることなどです。
自家組織再建も保険適用の対象となります。ただし、手術の内容や入院期間によって費用は変動します。高額療養費制度を利用することで、自己負担額を一定額に抑えることができます。
費用の目安
保険適用での同時再建手術の費用は、3割負担の場合で概ね30万円から50万円程度となることが多いです。ただし、手術の方法、入院日数、個室の利用などによって金額は変わります。事前に医療機関の相談窓口で見積もりを取ることをお勧めします。
受診から手術までの流れ
同時乳房再建手術を検討する場合、通常は次のような流れで進みます。
初診と診断
まず乳腺外科を受診し、乳がんの診断を受けます。画像検査や生検などを通じて、がんの進行度や性質が調べられます。
治療方針の決定
検査結果をもとに、医師から治療方針の提案があります。乳房温存療法が可能か、全摘術が必要か、化学療法や放射線療法が必要かなどが検討されます。この段階で、同時再建の希望を伝えることが重要です。
形成外科との相談
同時再建を希望する場合、形成外科医との相談が設けられます。再建方法の選択肢、それぞれのメリットとデメリット、手術の詳細、術後の経過などについて説明を受けます。
手術日の決定
乳腺外科医と形成外科医が協議し、手術計画が立てられます。患者さんの体調、がんの状態、医療機関のスケジュールなどを考慮して手術日が決まります。
術前検査と準備
手術前には、血液検査、心電図、胸部レントゲンなどの術前検査が行われます。麻酔科医との面談もあり、麻酔のリスクや注意事項について説明を受けます。
術後の経過とケア
同時乳房再建手術後は、通常の乳がん手術よりも入院期間が長くなることがあります。再建方法によって異なりますが、インプラント再建の場合は1週間から10日程度、自家組織再建の場合は2週間から3週間程度の入院が必要となることが一般的です。
術後の注意点
退院後は、定期的な外来受診が必要です。創部の状態確認、ドレーンの管理(留置されている場合)、感染の有無などをチェックします。インプラント再建でティッシュエキスパンダーを使用している場合は、外来で生理食塩水を注入して徐々に皮膚を伸ばしていきます。
日常生活では、重いものを持つ、激しい運動をするなどの行為は一定期間制限されます。医師の指示に従って、段階的に活動範囲を広げていきます。
リハビリテーション
手術後は腕や肩の動きが制限されることがあります。理学療法士の指導のもと、適切なリハビリテーションを行うことで、機能回復を促します。自家組織再建の場合は、組織を採取した部位のケアも必要です。
セカンドオピニオンの活用
乳がん治療や乳房再建について、複数の医師の意見を聞くことは患者さんの権利です。埼玉県内の施設で提案された治療方針について、他の施設の専門医に意見を求めることもできます。
セカンドオピニオンを受ける際は、現在の主治医に診療情報提供書や検査データを準備してもらう必要があります。多くの病院では、セカンドオピニオン外来を設けており、予約制で対応しています。
患者会や相談窓口の利用
乳がん治療を経験した方々との交流や、専門家への相談は、治療を進める上で心強い支えとなります。埼玉県内には、乳がん患者さんやその家族を対象とした患者会や相談窓口があります。
埼玉県立がんセンターや主要な病院には、がん相談支援センターが設置されており、治療に関する疑問や不安、生活上の悩みなどについて相談できます。また、乳がん患者会では、実際に同時再建を経験された方の体験談を聞くことができる場合もあります。
2025年の最新動向
乳房再建の技術は年々進歩しています。2025年現在、脂肪注入による再建や、より自然な形態を実現する新しいインプラントの開発なども進められています。
また、手術支援ロボットを活用した再建手術の研究も進んでおり、将来的にはより精密で低侵襲な手術が可能になることが期待されています。埼玉県内の施設でも、新しい技術や治療法の導入が検討されています。
乳がん治療における個別化医療の進展により、患者さん一人ひとりの状況に応じた最適な治療と再建方法の選択が可能になってきています。遺伝子検査の結果や腫瘍の性質を考慮した治療計画の立案が、より一般的になっています。
まとめに代えて
埼玉県内には、乳がん同時乳房再建手術に対応できる病院や施設が複数あります。それぞれの施設に特徴があり、提供される医療の内容も異なります。
同時再建を検討する際は、ご自身の病状、希望する再建方法、通院の利便性などを総合的に考えて、納得できる施設を選ぶことが大切です。