
千葉県の高精度放射線治療施設について
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
がん治療において放射線療法は手術、薬物療法と並ぶ重要な選択肢です。近年、放射線治療の技術は飛躍的に進歩しており、サイバーナイフ、トモセラピー、重粒子線治療、陽子線治療といった高精度放射線治療が実用化されています。
これらの治療法は、がんの病巣にピンポイントで放射線を集中させることで、周囲の正常組織へのダメージを抑えながら治療効果を高めることができます。千葉県内でこれらの高精度放射線治療を受けられる施設は限られているため、患者さんやご家族が適切な治療を選択するための情報整理が重要です。
この記事では、千葉県で受けられる高精度放射線治療の施設情報、各治療法の特徴、適応となるがんの種類、治療費用などについて詳しく解説します。
千葉県でサイバーナイフが受けられる病院
塩田記念病院(長生郡長柄町)
千葉県内でサイバーナイフ治療を実施している施設は、2024年4月時点で塩田記念病院のみとなっています。
【所在地】千葉県長生郡長柄町国府里550-1
【導入状況】2024年4月現在、千葉県で唯一のサイバーナイフ施設として稼働中
サイバーナイフの特徴と仕組み
サイバーナイフは、ロボットアームを用いた定位放射線治療装置です。産業用ロボット技術と画像解析技術を組み合わせることで、1mm未満の精度でがん病巣をピンポイントに狙い撃ちすることができます。
治療中は患者さんの体の動きや呼吸による腫瘍の位置変化を自動的に追尾し、照射位置をリアルタイムで補正します。この病変追尾システムにより、呼吸で動く肺がんや肝臓がんに対しても正確な照射が可能です。
従来の定位放射線治療では頭部をフレーム(金属製固定具)で固定する必要がありましたが、サイバーナイフではメッシュ状のシェル(お面)を使用するため、患者さんの負担が少なく、痛みを伴わない治療が実現しています。
サイバーナイフの適応疾患
塩田記念病院では、2024年4月現在、ほぼすべてのがん種に保険適応があります。具体的な保険適用の対象は以下の通りです。
- 頭頸部腫瘍(脳腫瘍、頭頸部がん、脳動静脈奇形を含む)
- 原発病巣が直径5cm以下で転移のない原発性肺がん、肝がん、腎がん
- 3個以内の転移性肺がん、転移性肝がん
- 転移のない限局性の前立腺がん、膵がん
- 直径5cm以下の転移性脊椎腫瘍
- 5個以内のオリゴ転移(少数転移)
- 脊髄動静脈奇形(頸部を含む)
塩田記念病院では、他の医療機関で治療を断られた症例に対しても、予後改善やQOL(生活の質)の向上が期待できる場合は積極的にサイバーナイフ治療を実施しています。根治的治療だけでなく、骨転移に対する緩和照射など姑息的治療としても有効性が認められています。
サイバーナイフの治療期間と実績
治療は1回あたり約30分で、病状に応じて1回から5回程度(1日1回)で完結します。入院の必要はなく、基本的に外来通院で治療を受けることができます。
千葉県でトモセラピーが受けられる病院
順天堂大学医学部附属浦安病院(浦安市)
千葉県内でトモセラピー治療を実施している施設は、順天堂大学医学部附属浦安病院です。
【所在地】千葉県浦安市富岡2丁目1番1号
【導入時期】2016年1月
【治療体制】放射線科専門医、放射線治療専門技師、品質管理士、医学物理士で構成された専門チームによる治療
トモセラピーの特徴と仕組み
トモセラピーは、CT(コンピュータ断層撮影装置)とリニアック(放射線治療装置)を一体化させた装置です。見た目はCT装置に似たドーナツ型の構造をしており、治療台が移動しながら360度方向から連続的に照射を行います。
トモセラピーの最大の特徴は、IMRT(強度変調放射線治療)とIGRT(画像誘導放射線治療)という2つの技術を標準装備していることです。IMRTにより放射線の強度を細かく調整し、複雑な形状のがんにも正確に照射できます。IGRTでは治療直前にCT撮影を行い、位置のずれを補正してから照射するため、高い精度が保たれます。
トモセラピーの適応疾患と治療の実際
順天堂大学医学部附属浦安病院では、前立腺がん、脳腫瘍をはじめとした多くの悪性腫瘍に対してトモセラピーを実施しています。保険適用の範囲は広く、以下のような疾患が対象となります。
- 脳腫瘍(脳転移を含む)
- 頭頸部腫瘍
- 肺がん、食道がん
- 肝がん、膵がん、腎がん
- 前立腺がん、膀胱がん
- 子宮頸がん
- 各種転移(肺転移、肝転移、骨転移、リンパ節転移)
治療は1回あたり約20分前後で、通常は月曜日から金曜日まで週5日間の照射を数週間にわたって行います。照射回数はがんの種類や部位によって異なります。
サイバーナイフとトモセラピーの違い
どちらも高精度放射線治療装置ですが、それぞれに得意とする領域があります。以下の表で主な違いを整理しました。
| 項目 | サイバーナイフ | トモセラピー |
|---|---|---|
| 得意な治療 | ピンポイント照射(ピンポン球程度までの小さな病巣) | 大きく複雑な形状の病巣、広範囲の照射 |
| 動体追尾機能 | あり(呼吸で動く肺がん・肝がんに対応) | 動きの少ない部位に適している |
| 照射方法 | ロボットアームによる最大1200方向からの照射 | 360度回転しながららせん状に照射 |
| 治療回数 | 1回から5回程度で完結することが多い | 数週間にわたり20回以上の分割照射が一般的 |
| 1回の治療時間 | 約30分 | 約20分 |
| 固定方法 | メッシュ状のシェル(痛みなし) | 体位固定具を使用 |
| 複数病巣の同時治療 | 可能(5個以内のオリゴ転移など) | 得意(全身の複数病巣を一度に治療可能) |
実際の治療では、がんの種類、大きさ、位置、個数などを総合的に判断して、どちらの装置を使用するかを放射線治療専門医が決定します。例えば、乳がん手術後の乳房全体への予防照射のように広範囲に照射が必要な場合はトモセラピーが適していますが、小さな脳転移や肺転移にピンポイントで照射する場合はサイバーナイフが適しています。
千葉県で重粒子線治療が受けられる施設
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 QST病院(千葉市稲毛区)
千葉県で重粒子線治療を実施しているのは、千葉市稲毛区にあるQST病院です。
【所在地】千葉県千葉市稲毛区穴川4-9-1
【治療開始】1994年より重粒子線治療を開始
【実績】2019年3月時点で治療を受けた患者数は国内最多の11,834人
QST病院は、日本で最初の重粒子線照射施設「HIMAC」を備えた放射線診療に特化した研究病院です。重粒子線治療とともに、X線治療や小線源治療も実施しています。外来予約は全て予約制となっており、電話相談窓口も設けられています。
重粒子線治療の保険適用
2022年4月から、以下の疾患に対する重粒子線治療が新たに保険適用となりました。
- 切除非適応の骨軟部腫瘍
- 頭頸部腫瘍
- 限局性の前立腺がん
- 大型の肝細胞がん
- 肝内胆管がん
- 局所進行性膵がん
- 手術後に局所再発した大腸がん
- 局所進行性子宮頸部腺がん
保険適用外の疾患については先進医療として治療を受けることができます。この場合、技術料は自己負担となりますが、それ以外の入院費や検査料などは健康保険が適用されます。
千葉県で陽子線治療が受けられる施設
国立がん研究センター東病院(柏市)
千葉県で陽子線治療を実施しているのは、柏市にある国立がん研究センター東病院です。
【所在地】千葉県柏市柏の葉6-5-1
【特徴】臨床研究中核病院として陽子線治療と低侵襲手術を積極的に導入
同病院は、がん診療連携拠点病院として充実した検査・治療設備を整備しており、希少がんの症例も受け入れています。陽子線治療に関する適応の確認や予約は、医事課を通じて診療情報提供書をファックスで送付する形で行われます。
陽子線治療の保険適用
2022年4月時点で、以下の疾患に対する陽子線治療が保険適用となっています。
- 小児腫瘍(限局性の固形悪性腫瘍)
- 骨軟部腫瘍
- 頭頸部腫瘍
- 前立腺がん
保険適用疾患は厚生労働省の告示により追加・変更される可能性があるため、受診を検討される場合は最新の情報を確認することが重要です。
粒子線治療(重粒子線・陽子線)の特徴
粒子線治療とは
粒子線治療は、陽子や重粒子(炭素イオン)といった粒子放射線のビームを病巣に照射してがんを治療する方法です。従来のX線やγ線を用いた放射線治療の臨床経験を基礎として開発されており、がん治療に適した特徴を持つ治療法として期待されています。
粒子線治療の利点
粒子線は、体内の一定の深さで放射線量が最大となり、それより深い部分では急速に線量が減少する「ブラッグピーク」という物理的特性を持っています。この特性により、がんの病巣に効率的に放射線を集中させ、病巣の奥にある正常組織への影響を抑えることができます。
また、重粒子線は陽子線よりも生物学的効果が高く、従来の放射線治療が効きにくいとされるがんに対しても効果が期待できます。早期の固形がんに対して効果があり、体への負担が少なく、副作用も少ないという利点があります。
粒子線治療の治療期間
粒子線治療は通常、短期間で完結します。治療期間はがんの種類や部位によって異なりますが、多くの場合1週間から数週間程度です。治療は外来通院で受けることができるケースも多く、日常生活への影響を最小限に抑えながら治療を継続できます。
高精度放射線治療の費用と保険適用について
サイバーナイフの治療費
サイバーナイフによる定位放射線治療は保険適用の治療です。治療する部位の数や治療回数に関わらず、3割負担の場合で約19万円が目安となります。ただし、高額療養費制度を利用すれば、月ごとの自己負担上限額(所得区分によって異なる)を超えた分の払い戻しが受けられます。
例えば、年収370万円未満の場合、高額療養費制度による月額上限は約5万7,600円(2025年現在)となります。事前に限度額適用認定証を取得しておくと、窓口での支払いを上限額までに抑えることができます。
トモセラピーの治療費
トモセラピーによる治療が保険適用となる場合、1回の照射につき約3万円(3割負担の場合)が目安です。これに放射線治療管理費などが加わります。
例えば、35回の治療が必要な場合、3割負担での自己負担額は約40万円が目安となりますが、高額療養費制度を利用することで実際の負担額は大幅に軽減されます。
一方、保険適用外の自由診療でトモセラピーを受ける場合は全額自己負担となります。東京都内の自由診療クリニックの例では、トモセラピー治療費が定額制で約220万円、治療計画費が約66万円となっており、初診料や再診料も別途必要です。
粒子線治療の治療費
重粒子線治療および陽子線治療が保険適用となる疾患の場合、通常の保険診療として受けることができます。保険適用外の疾患に対して先進医療として受ける場合、技術料の自己負担額は約294万円から314万円程度です。ただし、技術料以外の入院費、検査料などは健康保険の適用対象となります。
高額療養費制度の活用
高精度放射線治療は高額になることがありますが、高額療養費制度を利用することで自己負担額を抑えることができます。この制度は、1ヶ月(月初から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分が払い戻される仕組みです。
自己負担の上限額は年齢や所得区分によって異なります。事前に限度額適用認定証を取得しておくことで、医療機関での支払い時点から上限額までの負担で済むため、一時的な支払いの負担を軽減できます。
まとめにかえて:高精度放射線治療の選択について
千葉県内で受けられる高精度放射線治療の施設は限られていますが、それぞれの治療法には明確な特徴と適応があります。サイバーナイフは小さな病巣へのピンポイント照射、トモセラピーは複雑な形状や広範囲の病巣、重粒子線と陽子線は放射線抵抗性のがんや周囲に重要臓器がある場合に適しています。
治療法の選択は、がんの種類、大きさ、位置、進行度、患者さんの全身状態、これまでの治療歴など、多くの要素を総合的に判断して決定されます。主治医や放射線治療専門医とよく相談し、それぞれの治療法のメリットとデメリットを理解した上で、自分に最適な治療を選択することが重要です。
また、セカンドオピニオンを活用することで、より多角的な視点から治療選択を検討することも有効です。千葉県内の施設だけでなく、必要に応じて東京都内や近隣県の専門施設への受診も視野に入れながら、最善の治療を受けられるよう情報収集を進めてください。
