がん専門のアドバイザー、本村です。
メシマコブは、1968年に日本の研究者が動物実験でがん抑制作用を報告したことから、抗がん効果が期待されはじめたキノコの一種です。
漢方としては古来より用いられており、東洋医学では止汗・利尿作用があるとされています。ただし、多量に摂取した場合、下痢や嘔吐を引き起こす可能性がある、とされています。
人間の癌(がん)に対するメシマコブ摂取の臨床試験の報告
世界的に信頼性があると認められている論文データベース「pubmed(パプメド)」でメシマコブに関する論文を調べてみると、実際にがん患者さんがメシマコブを摂取し、その臨床経過を報告している症例が3件ありました。
その3件の内容をみていきたいと思います。
がん患者さんによるメシマコブ摂取 「症例報告」その1
1つめは前立腺がんの症例です。ホルモン療法や放射線療法など抗がん治療の効果がなくなり治療が中止されたのに伴い、患者が自己判断でメシマコブを摂取したところ、数か月後の画像検査で腫瘍が消失し腫瘍マーカーも正常になったと報告されています。
がん患者さんによるメシマコブ摂取 「症例報告」その2
2つめは、肝細胞がんから骨転移が生じた症例です。頭蓋骨への骨転移に対して放射線治療を行うも効果がなく、その後無治療で経過を観察していたところ、放射線治療の10か月後に頭蓋骨の病変と肝臓にもともとあった肝細胞がんの病変が一緒に縮小したと報告があります。
この患者さんが放射線治療開始前からメシマコブを摂取していたことから、メシマコブの抗がん効果の可能性について言及されています。
がん患者さんによるメシマコブ摂取 「症例報告」その3
3つめは肝細胞がんから肺転移を生じた症例です。病期が進行していたため手術や化学療法などの治療を受けることができず、未治療のまま自己判断でメシマコブを一か月間摂取していたところ、6か月後の画像検査で肝臓と肺の腫瘍が消失したと報告されています。
症例報告とは
がんが消えるなんてすごい!、と考える前にこの「症例報告」というのは何か、を知っておくことが大切です。
症例報告とはその名のとおり「ある人に、こういうことが起きた」という報告です。
ある治療法がよく効いた症例や非常に稀な症例が報告され、その後、類似の病態を示した患者の診断・治療の情報源として役立てられています。
症例報告が契機となって新治療法が発見されることもあります。
ですが、症例報告で得られる情報からは、どれくらいの確率でどれくらいの効果があるのか全体像を判断することはできません。
メシマコブを摂取しても何もならなかった人はたくさんいるはずですが、その点は報告には記載されませんし、メシマコブ以外に何かに取り組んでいたのかも不明です。
症例報告の最も大きな問題は、偶然起きた現象を過大に評価してしまう可能性があることです。
例えば、肝細胞がんは6万~10万例に1例の割合で自然にがんが消失することが過去の調査でわかっています。ですから、今回紹介した症例報告の治療経過は、メシマコブを摂取しなくても起こった現象かもしれない、と慎重に判断することが求められます。
抗がん剤などの薬の効果、成分の効果というのは、数百人くらいの人を対象に「薬を摂取したグループ」と「摂取しないグループ」に分け、それぞれどのくらい差があるか、などを分析し、明らかに差があり効果がある、というものだけ市場に登場します。
メシマコブに関しては、こういった人間に対する規模の大きい臨床試験は行われていないので、どのくらいの確率なのか、何の成分がどうなってがんに影響するのか、などは全く分かっていません。
メシマコブは癌(がん)に効果あるのか?まとめ
【QOL(生活の質)を改善するか?】
メシマコブを摂取することによって、QOL(生活の質)を改善することを人間に対する臨床試験で証明した報告は、現段階ではありません。
【抗がん剤などの副作用を軽減するか?】
メシマコブを摂取することによって、抗がん剤、放射線治療などのの副作用の軽減を人間に対する臨床試験で証明した報告は、現段階ではありません。
【再発を予防したり、生存期間を延長したりするか?】
前立腺がん、肝細胞がん患者さんにおいて、メシマコブを摂取することによって、がんが縮小したという症例報告がありますが、あくまで症例報告であり、臨床試験など形式にのっとって調査、分析した報告はありません。
【気を付ける点】
大量に摂取した場合、下痢や嘔吐に注意が必要です。