慢性骨髄性白血病では長い間、インターフェロン製剤が標準的な治療でしたが、完全寛解となる患者さんは2割もいませんでした。
しかし、分子標的薬のイマチニブ(グリベック)が登場したことで、治療成績が向上しました。イマチニブを毎日飲みつづけた場合、5年後の生存率は約95%と高率です。現在はイマチニブが慢性骨髄性白血病治療の第1選択となっています。
イマチニブは、造血幹細胞を増殖させる異常なタンパクを標的にした飲み薬で、チロシンキナーゼ阻害薬に分類されます。この薬は、フィラデルフィア染色体(人がもっている46本の染色体のうち、細胞の中で隣り合わせに位置する9番目と22番目の染色体が途中から切れて入れ替わり、つながった染色体)をもっている人に有効ですが、慢性骨髄性白血病の患者さんの約95%が陽性です。
イマチニブは長く使っていると耐性ができ、効きにくくなってくることが問題ですが、09年に同じチロシンキナーゼ阻害薬のニロチニブ(タシグナ)とダサチニブ(スプリセル)が、イマチニブが効かない(抵抗性)、あるいはイマチニブの効果が不十分、または難治性の慢性骨髄性白血病の患者さんの治療薬として承認され、治療の選択肢が広がりました。
ニロチニブはイマチニブよりも約30倍有効性が高く、効果がより早く出るとされます。ただし、心臓病をもっている患者さんに投与すると、心臓の病状が悪化するおそれがあります。
ダサチニブは再発または難治性のフィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病にも使用できます。イマチニブより約300倍の効果があるとされますが、その分、副作用も強いのが難点です。
エロチニブとダサチニブは国際的な臨床試験で、イマチニブを上回る効果が確認され、エロチニブは10年12月、ダサチニブは11年6月に、慢性骨髄性白血病初発の患者さんの1次治療薬として適応拡大が認められました。
※急性前骨髄球性白血病
急性白血病の1つです。このタイプはレチノイン酸(活性型ビタミンA)のトレチノインという分子標的薬が有効です。約90%が完全寛解に入ります。また、寛解後に再発することも少なくないのですが、その場合は三酸化ヒ素(亜ヒ酸)が有効とされます。