人工肛門(ストーマ)とは、腸の一部をおなかの壁を通してからだの外に出し、肛門に代わる便の出口としたものです。
1~2cmほど皮膚から腸が突き出た形になります腸の内側部分(粘膜)が表にくるように裏返して、皮膚と縫い合わせています。
表面は口の中と同じような粘膜なので、皮膚に比べてやわらかく、強くこすると出血することもあります。出血は軽く押さえておくと止まります。
腸の粘膜の表面には神経はないので、軽くこすったり、装具をつけるときにあたる程度では、痛みを感じることはありません。
人工肛門には大きく分けて2種類あります。
「直腸切断術」のときの人工肛門(永久人工肛門)以外に、大腸が詰まって便が通らずにひどい腸閉塞を起こしたときや、大腸の手術後に縫合不全が起こったときなどに、一時的に人工肛門をつくる場合(一時的人工肛門)があります。
永久人工肛門のときは単孔式が、一時的な人工肛門のときは双孔式が多いですが、病状に合わせて選択されます。
人工肛門の管理
人工肛門(ストーマ)をつけている人のことを「オストメイト」といいます。
肛門から排便するのとはまったく異なる新しい排便習慣に、慣れなければならないということは大変なことです。
しかし、人工肛門があることで、口から食事をとることができ、排便も可能になります。人工肛門には、括約筋がないため、本来の肛門のように、"締める・緩める"ことによる排便をコントロールすることができません。
そのため、便やガスがいつ出るかわかりません。
そこで、便の受け皿として、常に専用の袋状の装具(パウチ)を人工肛門につけておくことで排便を管理します。ガスや便がたまったら、パウチの下の口からトイレに捨てます。
便は常にだらだらと出てくるのではなく、排便は1日2~3回程度(S状結腸人工肛門の場合)です。パウチは数日に1回交換します。
人工肛門(ストーマ)つけたときの日常生活
人工肛門があることによる、日常生活の「制限」はほとんどありません。
うつぶせになって寝ても、お風呂に入っても、スポーツをしても、旅行に行くこともできます。
温泉や銭湯に入る際には、人工肛門の上に目立たない肌色のパッチを貼っておくなどの工夫をする人が多いです。
便を受ける袋(パウチ)は改良が進んでおり、密着性に優れて漏れにくいもの、色が目立ちにくいもの、脱臭フィルターの付いたにおいを抑えるものなど、いろいろな種類のものが発売されています。
装具をはがしやすくする溶剤や消臭剤、装具用の固定具など、専用器具も開発されています。
便が漏れたり、装具のサイズが合わなかったりすると、人工肛門の周囲の肌が荒れたり、粘膜が傷ついたりすることがあります。
これらの"ストーマ・トラブル"は、装具の工夫やコツをつかむことで解決できます。
大きな専門病院では、専用の「ストーマ外来」を設けるところが増えています。
そこでは、日本看護協会が認定した、ストーマ管理の専門資格を持った看護師が、それぞれの患者さんの人工肛門の状態に合わせたアドバイスをしてくれます。
何か人工肛門のトラブルがあれば、積極的にストーマ外来に行って相談してみましょう。
自分が通院している病院にストーマ外来がない場合でも、ほかの病院のストーマ外来の受診が可能です。
また、永久人工肛門になった患者さんは、通常、身体障害者福祉法による障害等級(4級)に該当し、身体障害者手帳を取得することができます。
これによって、装具の給付、税の控除などのサービスを受けることができます。
人工肛門をつけている人が受けられる助成
永久人工肛門になった患者さんは、通常、「直腸膀胱機能障害」(通常は4級)として身体障害者認定の対象となり、身体障害者手帳を取得することができます。
これによって、ストーマ用の装具の給付、税の控除などのサービスを受けることができます。
この助成は、患者さん自身(またはご家族)が申請しなければ受けられないものであり、また申請時以降に助成が開始されるので、永久人工肛門になった患者さん、あるいは永久人工肛門をつくることを予定している患者さんは、早目に申請の手続き(準備)をしましょう。
問合せ先は市区町村の福祉担当窓口や、管轄の社会保険事務所になります。