
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
卵巣がんの診断は、婦人科がんの中でも特に難しいとされています。卵巣という臓器の特性上、いくつかの課題があるからです。
この記事では、卵巣がんの検査方法について、エコー検査を中心に、どのようなプロセスで診断が行われるのかを詳しく説明します。
卵巣がんの診断が難しい理由
卵巣がんの診断は次のような理由で、婦人科がんの中でも特に厄介とされています。
まず、卵巣は表層上皮から卵細胞まで何種類もの組織があり、そのどこにできたかによって性質がそれぞれ異なるため、腫瘍の種類が多いという特徴があります。
さらに、卵巣腫瘍は「良性」、「悪性」、「境界悪性」に区分され、診断の複雑さを増しています。境界悪性というのは、悪性と良性の中間的な性質をもつもので、若い世代での発症が多いという特徴があります。
次に、卵巣は骨盤内の深いところにあるため、腹部の皮膚から針を刺して組織や細胞を採取することができません。子宮頸がんのように、膣を経由した細胞診で簡単に検査できないのです。
このため、手術前の検査では、腫瘍が良性か悪性か、悪性ならばがんの種類や広がり具合はどうかなど、確実な診断が困難です。
卵巣腫瘍の検査手順と各検査の役割
卵巣がんの疑いがある場合、段階的に検査が進められます。検査の流れと各検査でわかることを説明します。
内診・触診による初期評価
まず最初に行われるのが内診です。膣から指を入れて子宮や卵巣の状態を調べます。卵巣の大きさ、形状、癒着の有無などを確認します。
また、必要に応じて直腸診も行われることがあります。肛門から指を入れて、直腸やその周囲に異常がないかを調べます。
これらの検査では、腫瘍の硬さや動きやすさなども確認でき、良性・悪性の推測に役立つ情報を得ることができます。
エコー検査(超音波検査)の役割
診断の中心となるのがエコー検査です。卵巣がんの検査では、主に経腟超音波検査が用いられます。
経腟超音波検査では、膣の中から超音波機器を挿入して調べるため、腹部からの超音波検査よりも卵巣に近い位置から詳細な画像を得ることができます。検査時間は1〜2分程度で、痛みもほとんどありません。
エコー検査では、卵巣の大きさや形を調べ、卵巣の内部にがんらしき影がないかどうかを識別します。腫瘍の状態や大きさ、周囲の臓器との位置関係も観察できます。
また、腹水の有無や量も確認できるため、がんの広がりを推測する重要な情報となります。
エコー検査で重要な「充実部」の有無
画像診断でもっとも注目するのは、腫瘍の内部に組織のかたまり(充実部といいます)があるかどうかです。
できものが水風船のように見える場合(「のう胞」や「のう腫」と呼びます)は、多くの場合良性腫瘍です。
一方、できものがソフトボールのように全体が充実性の場合や、充実性部分とのう胞性部分が混在する場合などでは、悪性腫瘍や境界悪性腫瘍を疑います。
充実部がありそうだということになると、悪性の疑いが強くなります。
| 腫瘍の特徴 | 良性の可能性 | 悪性の疑い |
|---|---|---|
| 内部の状態 | 液体のみ(水風船状) | 充実部分あり |
| 腫瘍の構造 | 単純なのう胞 | 複雑な構造・混在型 |
| 境界 | 明瞭で滑らか | 不明瞭・不規則 |
CT・MRI検査による詳細な評価
腫瘍がありそうだということになると、CTやMRIで得られた写真を読みとり、良性・悪性の識別や組織型の推定をします。
MRIの方が、より正確な診断ができるとされています。MRI検査では、骨盤の内部を細かいところまで調べることができます。子宮や膀胱、直腸などの関係や、腫瘍内部の状態、リンパ節が腫れて大きくなっていないかなどを観察し、がんかどうかを推測します。
CT検査は、卵巣以外の場所やリンパ節への転移があるかを調べるために行われます。遠隔転移の有無を確認する際にも重要な検査です。
腫瘍マーカー検査(CA125)の意義と限界
卵巣がんの診断では、血液検査で腫瘍マーカーCA125を測定します。
CA125は糖タンパクの一種で、卵巣がんや子宮がんなど婦人科系の病気があると産生されるようになり、血液中のCA125の値が上昇します。卵巣がんでは約80%、特に漿液性のう胞腺がんでは100%に近い陽性率を示します。
基準値は通常35U/mL以下です。ただし、月経周期によって変動し、月経時や妊娠初期で上昇する一方、閉経後は低下します。
CA125が100U/mLを超える場合、卵巣がんなどの悪性疾患の可能性が高くなりますが、それでもがん以外の要因で上昇することがあるため、必ずしもがんの診断に直結するわけではありません。
CA125が上昇する良性の病気
CA125は卵巣がん以外でも上昇することがあります。
子宮内膜症の50〜65%程度、卵巣のう腫の20%程度でも高値を示すことがあります。また、肝硬変、膵炎などでも一過性に上昇が見られます。
このため、CA125だけでがんの確率を正確に示すことはできません。CA125は腫瘍マーカーの一つであり、主に卵巣がん診断に使われますが、初期段階では感度が低いことが知られています。
| CA125の値 | 考えられる状態 |
|---|---|
| 35U/mL以下 | 正常範囲内(ただし早期がんでも正常値のことあり) |
| 35〜100U/mL | 良性疾患の可能性が高いが精密検査が必要 |
| 100U/mL超 | 悪性疾患の可能性が高い |
近年、卵巣明細胞がんに対して、CA125より特異度が高い新たな腫瘍マーカーTFPI2が開発されています。TFPI2は卵巣明細胞がんを特異的に検出でき、最適な手術方法や治療方針の選択への貢献が期待されています。
良性・悪性の総合判断
これらの検査に腫瘍マーカー、腹水や胸水があるかどうか、内診で感じられる腫瘍の硬さや動きやすさなどを考え合わせて悪性の可能性をはじき出します。
治療が始まる前に良性か悪性かがわかる確率は、8〜9割ぐらいだとされています。
卵巣がんの診断、確定はまず「推定」から
ある程度は前もって推測できるので、医師は「卵巣が腫れています。取ってみないとわからないですが、確率的には5割ぐらい良性でしょう」とか「たぶん大丈夫でしょう」とか「非常に危険です」というような説明をするでしょう。
とはいえ、卵巣がんは手術前にがんの確定診断が困難なため、手術前に内診、超音波(エコー)検査、CT、MRIといった画像診断に加え、腫瘍マーカーの測定を行い、それらの結果を総合判断して、良性か悪性かを「推定」する方法が一般的です。
悪性腫瘍、つまり卵巣がんである可能性が濃厚である場合、患者さんとの十分な話し合いを経た後、手術が行われます。
エコー(経腟超音波法)で早期卵巣がんは発見できる
卵巣は子宮と違って、直接細胞を採取して検査することができません。子宮体がん(子宮内膜がん)の検査を吸引法で行うと、卵巣表面の細胞が採取される場合がありますが、確実な検査結果は得られません。
近年は婦人科検診の際に経腟超音波法が用いられるようになり、これによってⅠ期の卵巣がんを発見することが可能になりました。
技術の高い婦人科医であれば、MRI検査をしなくても経腟超音波のみで、卵巣がんを早期に診断することが可能です。
婦人科検診を受ける際に、経腟超音波検査も含まれているか確認しましょう。定期的な経腟超音波検査は、卵巣がんの早期発見に有用とされています。
卵巣がんの確定診断は手術をすること
卵巣がんであるかは、手術で摘出された卵巣を、顕微鏡で観察して得た病理学的組織診断によって、はじめて確定します。
手術中に行う組織診検査のことを「術中迅速病理検査」といい、この結果をもとに手術で切除する範囲を定めます。また、手術で採取した組織から良性・悪性・境界悪性の最終的な判定も行いますが、検査結果が出るまでには2〜3週間かかります。
手術とステージ分類
進行期(ステージ)確定は、手術後の治療方法を決定する際の重要な判断基準の一つとされます。
卵巣がんでは手術でお腹の状態を詳しく観察し、摘出した腫瘍の永久標本病理検査を行ったうえで、がんの進行期を判定します。
卵巣がんの広がり方を評価する方法としては、国際産科婦人科連合(FIGO)による「国際進行期分類」がよく使われます。両側の卵巣にがんが広がっているか、お腹の中にがんが散らばっているか、リンパ節やほかの臓器に転移しているか、といった観点から進行期の評価が行われます。
大きくはⅠ期からⅣ期までの4つの段階、細かくはⅠA期からⅣB期の13段階に分類されます。
| ステージ | がんの広がり |
|---|---|
| Ⅰ期 | がんが片側か両側の卵巣だけにとどまっている状態 |
| ⅠA期 | 一側の卵巣に限局し、被膜破綻がなく、卵巣表面に腫瘍がない |
| ⅠB期 | 両側の卵巣に限局し、被膜破綻がなく、卵巣表面に腫瘍がない |
| ⅠC期 | 一側または両側の卵巣に限局するが、被膜破綻、卵巣表面の腫瘍、または腹水中にがん細胞がある |
| Ⅱ期 | がんが骨盤内にあって卵巣周囲の卵管や子宮、直腸、膀胱などの腹膜に広がっている状態 |
| Ⅲ期 | がんが骨盤内を越え、上腹部臓器の腹膜に転移しているか、後腹膜リンパ節に転移している状態 |
| Ⅳ期 | がんが遠隔転移している状態 |
卵巣がんは自覚症状に乏しく、適切な検診法がないために早期発見が難しいがんの一つです。そのため、卵巣がんの40%以上はⅢ期、Ⅳ期の進行した状態で見つかっています。
卵巣がんで細胞診が行われる場合
卵巣がんの検査は、子宮のように外から細胞を採取できません。そのため、通常は卵巣がんの細胞診というのは行われません。
ただし、卵巣がんがすでに子宮に浸潤していたり、卵巣がん細胞が卵管を経由して子宮内膜などに及んでいるときは、子宮内膜の細胞診(とくに吸引法)で卵巣がん細胞が採取されることがあります。
また、卵巣がんが進行して腹水や胸水が多量にあるときは、これらを吸引すると卵巣がん細胞が採取されることもあります。胸水や腹水がたまっていることが手術前にわかった場合は、皮膚から針を刺して採取して調べることがあります。
「境界悪性」と「悪性」の違いと治療
「境界悪性」というのは、悪性と良性の中間に位置づけられています。つまり、度合いが軽いがんということです。治療は卵巣がんと同様に、手術が基本です。
患者さんの多くは20〜30歳代の若い女性です。妊娠を希望する場合は、悪い側の卵巣のみを摘出します。術後5年間は厳重な管理が必要です。この管理期間中でも妊娠、出産は可能です。
大切なのは片側の卵巣摘出をきちんと行うことのできる、技術の高い医師の手術を受けることです。不完全な摘出では再発する可能性があります。
卵巣がん検査を受けるべき人
卵巣がんには指針として定められている検診はありません。ただし、以下のような方は積極的に検査を受けることが推奨されます。
40歳以上の女性。卵巣がんは40歳前後から急速に増え始め、50代から70代が最も多くなります。
下腹部の違和感や腹部のしこり、腹部膨満感、頻尿、便秘などの症状がある方。これらの症状がある場合は、早めに婦人科を受診しましょう。
家系内に卵巣がんや乳がんの人がいる場合。卵巣がんの約10%は遺伝性といわれています。BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子と呼ばれる遺伝子に変異がある場合、卵巣がんにかかるリスクが高まります。
妊娠・出産経験のない方。女性ホルモンであるエストロゲンにさらされている期間が長いことがリスクになります。
まとめ
卵巣がんの診断は、エコー検査を中心とした画像診断、腫瘍マーカー検査、内診などを組み合わせて行われます。最終的な確定診断は手術による病理検査でしか行えないという特徴があります。
早期発見のためには、定期的な婦人科検診で経腟超音波検査を受けることが重要です。気になる症状がある場合は、早めに婦人科を受診しましょう。
参考文献・出典情報
- 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん 検査」
- NPO法人キャンサーネットジャパン「卵巣がんの病期(ステージ)」
- メディカルノート「卵巣がんの検査~検査の種類や受けたほうがよい場合の目安~」
- 人間ドックの予約ならマーソ「腫瘍マーカー - CA125」
- スマート脳ドック「卵巣がんはエコー検査で発見できる?検査方法と有効性について」
- メディカルドック「卵巣がんはエコー検査で調べられる?検査費用や他の検査も医師が解説!」
- QLife「卵巣がんの検査・診断」
- がんプラス「卵巣明細胞がんの新たな診断用腫瘍マーカーを開発」
- MSDマニュアル「卵巣がん,卵管癌,および腹膜癌のFIGO外科的進行期分類」
- 日本癌治療学会「卵巣がん治療ガイドライン」
