卵巣摘出手術によって、卵巣機能を残すことができなければ、女性ホルモンの分泌が減少し、のぽせや異常発汗など、さまざまな症状に悩まされる更年期障害に似た症状が起こりやすくなります。
これを「卵巣欠落症状(らんそうけつらくしょうじょう)」と言います。
手術する前にこの症状について理解するとともに、少しでも緩和できるよう対応策を医師から提供してもらう必要があります。
女性ホルモンが減少する、卵巣がん手術後の卵巣欠落症状
手術によって両方の卵巣を摘出した場合、あるいは卵巣が残っていても放射線療法や化学療法の影響で卵巣の機能が消失した場合、女性ホルモンの分泌量が減り、更年期障害と同様の症状が起こることがあります。
卵巣欠落症状によって起きる症状
卵巣欠落症状の現れ方には個人差があります。
症状もいろいろですし、症状の出方もさまざまです。
代表的な症状には、顔のほてりやのぼせ(ホットフラッシュ)、冬でも汗をかくといった自律神経失調症状、イライラする、憂うつになる、睡眠障害、体がだるい、疲れやすいといった精神症状、そのほか、頭痛や関節痛などが起こることもあります。
また、エストロゲンは膣の分泌物を多くし、膣内を酸性に保ち、細菌から守っています。これが低下することで、膣内が中性、アルカリ性へと傾き、カンジダ膣炎や細菌性膣炎が発生しやすくなります。
性交痛なども出てきますので、性生活でも工夫が必要になります。
そのほか、エストロゲンは、動脈硬化や骨粗しょう症を防ぐ役割を果たしており、高脂血症、動脈硬化、高血圧症にもなりやすいので、注意する必要があります。
卵巣欠落症状には、ストレスも関係しており、ストレスを強く感じるタイプの人はとくに症状が強く出やすいようです。
卵巣欠落症状の対処方法(女性ホルモンの補充)
卵巣欠落症状に最も効果のある治療法として考えられるのは、欠落したエストロゲンを補うHRT(ホルモン補充療法)です。
エストロゲンと黄体ホルモン(プロゲステロン)を併用すれば、子宮体がん(子宮内膜がん)のリスクはありません。
しかし、2つのホルモンを併用すると乳がんのリスクは高まりますので、HRTを行う場合は、婦人科医でも乳がんの知識ももち合わせた医師に相談する必要があります。
そのほか、イライラや憂うつ感が強い場合は、抗うつ薬や抗不安薬などが処方されることもあります。
また、効果が出るまで数か月かかりますが、漢方薬が有効なケースもあります。