21世紀に入ってから、肺がんや大腸がんなどの部位では多くの分子標的薬の開発が成功し、近年ではオプジーボ、キイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害剤の開発が活況を帯びています。
胃がんに対する分子標的薬
胃がんに対しても多くの分子標的薬がテストされてきましたが、承認されているのは「Her2遺伝子変異陽性胃がん」に対するハーセプチン(トラスツズマブ)と、VEGFR(血管内皮増殖因子受容体)に対するサイラムザ(ラムシルマブ)のみです。
ただし、これらの分子標的薬の効果も「とても期待できる」というレベルではないです。
胃がんに対して分子標的薬の効果が示しにくい要因は、胃がんの発がん過程が複雑であることが関係していると思われます。
たとえば大腸がんでは、腺腫から癌化への過程で高頻度にRAS遺伝子やp53、APC遺伝子などの変異が関与していることが知られていますが、これに対して胃がんの発がん過程に関連する主な遺伝子を挙げることができません。
分子標的薬は遺伝子変異の特徴に対して作用する薬なので、遺伝子変異が明らかでないとそれに対する薬剤の開発も難しい、ということです。
胃がんに対する免疫チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイント阻害剤はノーベル賞受賞で大きな話題になりましたが、受賞の数年前からメラノーマ、肺がん、腎臓がん、頭頸部がんなどで免疫チェックポイント阻害剤の有効性が報告されてきました。
胃がんにおいても、従来の抗がん剤治療との比較試験や抗がん剤との併用についてのテストなど様々な臨床試験が行われています。
抗PD-1抗体薬であるキイトルーダの第1相試験の拡大コホート研究では、PD-L1陽性(発現率1%以上)の胃がんにおいて奏効率が22%でしたが、半分以上の症例においてわずかでも何らかの腫瘍縮小効果が得られました。
なお、この試験では奏功期間が長いことも分かり、生存期間の中央値は11.4ヶ月という結果でした。
また、オプジーボにおいてはプラゼボ(偽薬)に対する第3相試験において優越性が証明され(奏効率11%など)、2以上の化学療法のあとに増悪した場合において、標準的治療になりました。
その他の免疫チェックポイント阻害剤も含めて、今後は手術前後の化学療法にも臨床試験が行われており、胃がんの化学療法へのインパクトが期待されています。