口の中の粘膜にできるがんを総称して口腔がんと呼びます。
頭頸部のがんの中では喉頭がんと並んで多いがんです。
発生部位によって、舌がん、口腔底がん、歯肉(歯茎)がん、頬粘膜がん、硬口蓋がんなどがあります。最も多く過半数を占めるのが舌がんで、好発部位は舌の側縁部、舌の下面、舌のつけ根の順です。
年間1000人強の人が亡くなっています。
口腔がん全体での死亡者数は年間約3500人です。
早期の段階では80%以上に根治が期待でき全体でも60%前後と比較的良好です。好発年齢は40~60歳代ですが、20歳代でもかかることがあります。男性に多くみられます。
原因
完全に解明されていませんが、飲酒と喫煙の量が多くなるほど発がんの危険性が高まるといわれます。
また、口腔の不衛生、むし歯や入れ歯による刺激、アスベストや化学薬品などとの長期間の接触も、危険因子とされています。
口腔がんの症状
小さな潰瘍やかたいしこりが徐々に大きくなっていく型と、白いまだらの病変からやがてがん化していく型があります。
自覚症状は、飲食物がいつもしみる場所がある、ヒリヒリする痛みを感じる、などです。首のリンパ節に転移すると、首にしこりができます。
口腔がんの検査と診断
耳鼻咽喉科、がん専門病院などにある頭頸科、口腔外科を受診します。視診と触診でほぼ診断がつきます。
組織の一部を切除して調べる組織検査で診断が確定します。
さらに、腫瘍の深部への広がりやリンパ節・肺への転移を調べるためにX線CT、MRI、超音波などの画像検査が行なわれます。
病期は、がんの広がり、リンパ節や遠隔臓器への転移の有無によって、Ⅰ期~Ⅳ期に分類されます。
口腔がんの経過と転移
口腔がんは、あごの下や首のリンパ節に転移しやすいのが特徴です。
とりわけ舌がんは、舌がリンパ管に富むため、診断時にはすでに半数近い患者さんがリンパ節転移を起こしています。
口腔がんの治療と手術
早期なら放射線療法単独か化学療法との併用、あるいはレーザー療法で治癒が期待できる場合もありますが、治療の基本は手術です。
化学療法は通常、術後の補助的療法や、遠隔転移した場合の治療に用いられます。
最も多い舌がんでは、食事や会話で重要な役割を担う舌の機能を温存し、かつ根治させるために、さまざまな工夫がされています。
歯肉がんは早期から周辺組織に浸潤するので、外科療法が行なわれます。
外科療法と化学療法の併用で、良好な治療成績が得られています。
動注療法や放射線療法が追加されることもあります。
口腔底がんと口唇がんは、早期は放射線療法または外科療法、進行がんには外科療法が行なわれます。
口腔がんの予後
2cm以下の舌がんでは、80~90%は舌を残したまま完全に治すことができます。
歯肉がんは、隣接するあごの骨に転移が起こりやすく、予後不良です。
口腔がんでは、再発以外にも、新しいがん(2次がん)が発生する確率が高いと報告されています。とくに喫煙や飲酒を原因とする食道がんが多いようです。
口腔がん手術後の生活の注意点として、再発の早期発見と治療のために、定期的な診察が必要です。
手術後、咀嚼や嚥下、会話の機能が低下した場合はリハビリテーションが必要となります。
放射線療法を受けたあとは、唾液の分泌が悪くなり、口腔内が乾燥します。うがいをして乾燥を防ぎましょう。人工唾液を用いることもあります。