
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
前立腺がんと診断されたとき、多くの患者さんが最初に知りたいと思うのが「自分はどのくらい生きられるのか」という予後の見通しです。
医療機関で説明を受ける際、「5年生存率」という言葉を耳にすることが多いと思いますが、この数字が具体的に何を意味し、自分の状況にどう当てはまるのかを正確に理解することは、今後の治療方針を考えるうえで重要になります。
この記事では、前立腺がんのステージ別生存率、5年生存率と10年生存率の違い、再発率のデータなど、統計情報を整理してお伝えします。
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前立腺がんの生存率とは何を示す数字なのか
5年生存率の定義と意味
5年生存率は、初回の治療(手術や放射線治療など)を受けてから5年が経過した時点で、治療を受けた患者さん全体のうち何%が生存しているかを示す統計データです。
たとえば「前立腺がんの5年生存率が80%」という場合、治療を終えてから5年後に100人中80人が生存していることを意味します。残りの20人は5年以内に何らかの原因で亡くなったということになります。
ここで注意したいのは、この80%という数字に含まれる患者さんの状態は様々だということです。完全に治癒して健康に過ごしている方もいれば、再発して治療を継続している方、初回治療でがんを完全に取り切れず経過観察や追加治療を受けている方なども含まれています。
つまり、5年生存率は「5年後に元気でいられる確率」ではなく、「5年後に生きている確率」を示す数字だと理解する必要があります。
なぜ「5年」が区切りとされるのか
がん医療において5年という期間が重要視される理由は、多くのがんで再発や転移が起こりやすい期間が治療後5年以内であることが統計的に示されているためです。
5年を経過しても再発がなければ、その後の再発リスクは大きく低下する傾向にあります。そのため、5年生存率は治療の有効性を評価する重要な指標として世界中で使用されています。
ただし、前立腺がんの場合は進行が比較的緩やかなため、5年を過ぎてから再発するケースも存在します。このため、10年生存率や15年生存率といった長期的なデータも参考にする必要があります。
前立腺がんのステージ別5年生存率
前立腺がんの生存率は、診断時のステージ(病期)によって大きく異なります。日本泌尿器科学会や国立がん研究センターが公表しているデータをもとに、ステージ別の5年生存率を整理すると以下のようになります。
| 病期分類 | がんの広がり | 5年生存率の目安 |
|---|---|---|
| 限局性前立腺がん | がんが前立腺内にとどまっている | 80~100% |
| 局所進行性前立腺がん | がんが前立腺の被膜を越えて周囲組織に広がっている | 60~85% |
| リンパ節転移あり | 骨盤内のリンパ節に転移がある | 50~70% |
| 遠隔転移あり | 骨や肺など離れた臓器に転移がある | 30~60% |
限局性前立腺がんの予後
がんが前立腺内に限局している早期の段階では、5年生存率は80~100%と高い数値を示します。特に低リスク群(PSA値が低く、グリーソンスコアが6以下、臨床病期がT1~T2a)の場合、適切な治療を受けることで10年生存率も90%以上となるデータが報告されています。
この段階では、根治的前立腺全摘除術や放射線治療(外照射療法、小線源療法)によって、がんを完全に取り除ける可能性が高くなります。
局所進行性前立腺がんの予後
がんが前立腺の被膜を越えて精嚢や周囲組織に浸潤している局所進行性の段階では、5年生存率は60~85%程度となります。
この段階でも、放射線治療とホルモン療法の併用、あるいは手術後の補助療法により、良好な予後が期待できるケースが多くあります。治療方法の選択や患者さんの年齢、全身状態によって生存率には幅が生じます。
転移を伴う前立腺がんの予後
リンパ節転移がある場合の5年生存率は50~70%、骨や肺などへの遠隔転移がある場合は30~60%程度となります。
転移がある段階では根治を目指すことは難しくなりますが、ホルモン療法や化学療法、新しい薬物療法によって、がんの進行を抑えながら長期間にわたって生活の質を維持することが可能になっています。
特に近年では、新規ホルモン薬(エンザルタミド、アビラテロンなど)や抗がん剤(ドセタキセル、カバジタキセル)、放射性医薬品などの治療選択肢が増え、転移性前立腺がんの予後は以前と比べて改善傾向にあります。
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10年生存率から見る長期予後
前立腺がんは進行が緩やかながんであるため、5年生存率だけでなく10年、15年といった長期的な予後データも重要な参考情報となります。
| 病期 | 5年生存率 | 10年生存率 |
|---|---|---|
| 限局性前立腺がん | 80~100% | 70~95% |
| 局所進行性前立腺がん | 60~85% | 50~75% |
| 転移性前立腺がん | 30~60% | 20~40% |
長期生存における課題
前立腺がんの治療後、長期にわたって経過観察を続けることで、晩期再発(治療後5年以上経過してからの再発)や、治療に伴う後遺症の影響が明らかになってきます。
手術後の尿失禁や性機能障害、放射線治療後の直腸障害、ホルモン療法による骨粗鬆症や心血管系への影響など、生存率の数字には表れない生活の質に関わる問題も考慮する必要があります。
前立腺がんの再発率とPSA再発
生化学的再発(PSA再発)とは
前立腺がんの治療後、画像検査では再発が確認できないものの、血液検査でPSA値の上昇が認められる状態を「生化学的再発」または「PSA再発」と呼びます。
根治的前立腺全摘除術後の場合、PSA値が0.2ng/ml以上に上昇した状態、放射線治療後の場合は最低値から2ng/ml以上上昇した状態が、PSA再発の基準とされています。
治療法別の再発率
前立腺がんの再発率は、治療方法や診断時のリスク分類によって異なります。
| 治療方法 | リスク分類 | 10年PSA非再発率 |
|---|---|---|
| 根治的前立腺全摘除術 | 低リスク | 85~95% |
| 中リスク | 70~85% | |
| 高リスク | 40~65% | |
| 放射線治療(外照射+ホルモン療法) | 低リスク | 80~90% |
| 中リスク | 65~80% | |
| 高リスク | 50~70% |
再発後の治療と予後
PSA再発が確認された場合でも、すぐに生命に関わる状況になるわけではありません。PSA値の上昇スピード(PSA倍加時間)や、初回治療から再発までの期間などを総合的に評価し、経過観察を続けるか、追加治療を行うかを判断します。
手術後のPSA再発に対しては救済放射線治療、放射線治療後のPSA再発に対しては救済手術やホルモン療法などが選択肢となります。
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生存率に影響を与える要因
診断時の病期と悪性度
前立腺がんの予後を左右する最も重要な要因は、診断時の病期(ステージ)とがんの悪性度です。
悪性度はグリーソンスコアという指標で評価されます。グリーソンスコアは2~10の範囲で表され、数値が高いほど悪性度が高く、進行が速い傾向にあります。グリーソンスコア6以下は低悪性度、7は中悪性度、8~10は高悪性度に分類されます。
年齢と全身状態
診断時の年齢も予後に影響します。前立腺がんは高齢者に多いがんですが、高齢であっても全身状態が良好であれば、積極的な治療によって良好な予後が期待できます。
一方で、高齢で他の疾患(心疾患、糖尿病、腎疾患など)を併存している場合、がんそのものよりも合併症が予後に影響することもあります。このため、治療方針の決定には、がんの状態だけでなく全身状態の総合的な評価が必要です。
治療方法の選択
どの治療法を選択するかも、その後の予後に影響します。限局性前立腺がんの場合、手術、放射線治療、監視療法など複数の選択肢があり、それぞれに長所と短所があります。
患者さんの年齢、がんの悪性度、ライフスタイル、治療後の生活の質への希望などを総合的に考慮して、最適な治療法を選択することが重要です。
治療施設による違い
公表されている生存率データは、治療施設や医療機関によって差が生じることがあります。これは、各施設が治療する患者さんの背景(年齢、合併症の有無、がんの進行度など)が異なるためです。
合併症を持つ患者さんが多い病院、高齢者が多い病院、進行がんの患者さんを多く受け入れている病院などでは、統計上の生存率が低くなる傾向があります。このため、施設間の生存率を単純に比較することには注意が必要です。
前立腺がんの生存率中央値とは
生存率とは別に「生存期間中央値」という指標も用いられることがあります。これは、治療を受けた患者さん全体のうち、ちょうど半数が生存している期間を示す数値です。
たとえば、転移性去勢抵抗性前立腺がん(ホルモン療法が効かなくなった進行がん)の生存期間中央値は、治療法によって異なりますが、新規ホルモン薬を使用した場合で30~40か月程度とされています。
生存期間中央値は、特に進行がんにおいて治療効果を評価する際に用いられる指標です。ただし、これはあくまで集団の中央値であり、個々の患者さんの予後は様々な要因によって大きく異なります。
統計データの正しい解釈と向き合い方
生存率はあくまで目安
ここまで様々な生存率データを示してきましたが、これらの数字はあくまで過去の統計に基づく目安であり、個々の患者さんの予後を正確に予測するものではありません。
同じステージ、同じ治療法であっても、患者さんごとに予後は異なります。がんの遺伝子変異の種類、免疫状態、生活習慣、治療への反応性など、統計には表れない個別の要因が予後に影響するためです。
医療の進歩による予後の改善
現在公表されている生存率データの多くは、数年前から10年以上前に治療を受けた患者さんのデータに基づいています。
前立腺がんの治療は近年めざましく進歩しており、新しい薬剤の登場、放射線治療技術の向上、手術手技の改善などにより、予後は確実に改善しています。特に転移性前立腺がんの分野では、2010年代以降に複数の新薬が承認され、治療成績が向上しています。
このため、現在治療を受ける患者さんの予後は、過去のデータよりも良好である可能性があります。
データを治療選択の材料として活用する
生存率データは、「自分がどのくらい生きられるか」を知るためだけでなく、治療方針を考える際の材料として活用することが重要です。
たとえば、低リスクの限局性前立腺がんで10年生存率が90%以上期待できる場合、すぐに積極的治療を行わず、監視療法(PSA監視療法)を選択して、治療に伴う副作用を避けるという判断もあります。
一方、高リスクの局所進行がんであれば、複数の治療を組み合わせて積極的に治療することで、より良い予後を目指す選択もあります。
主治医とよく相談し、自分の状況に合った治療方針を一緒に考えていくことが大切です。
前立腺がんが「予後の良いがん」とされる理由
前立腺がんは、他のがんと比較して「予後が良い」とされることが多いがんです。その理由として、以下の特徴が挙げられます。
進行が緩やか
前立腺がんの多くは、他の臓器のがんと比べて進行速度が遅く、診断から何年も経過してようやく症状が現れるケースも少なくありません。特に高齢者の前立腺がんでは、生涯にわたってがんが進行せず、他の原因で寿命を迎えることもあります。
ホルモン療法の有効性
前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)に依存して増殖する性質があります。このため、男性ホルモンの働きを抑えるホルモン療法が高い効果を示します。
進行がんや転移がんであっても、ホルモン療法によってがんの進行を長期間にわたって抑えることが可能です。近年では、従来のホルモン療法が効かなくなった場合でも、新規ホルモン薬が効果を発揮するケースが増えています。
早期発見の機会
PSA検査の普及により、症状が現れる前の早期段階で前立腺がんが発見されるケースが増えています。早期発見によって根治的治療を受けられる可能性が高まり、全体的な生存率の向上につながっています。
生存率データを見る際の注意点
生存率データを読み解く際には、いくつかの注意点があります。
相対生存率と実測生存率の違い
生存率には「実測生存率」と「相対生存率」の2種類があります。実測生存率は、がん以外の原因による死亡も含めた全体の生存率です。一方、相対生存率は、一般人口の死亡率を考慮して、がんがなかった場合と比較した生存率を示します。
高齢者が多い前立腺がんでは、がん以外の原因(心疾患、脳血管疾患など)で亡くなる方も多いため、相対生存率のほうが実際のがんの予後をより正確に反映すると考えられています。
データの更新時期
公表されている生存率データは、数年から10年程度前のデータに基づいていることが多く、現在の治療成績を完全には反映していません。医療技術の進歩を考慮すると、最新の治療を受ける場合の予後は、公表データよりも良好である可能性があります。
個別の状況による違い
統計データは集団全体の傾向を示すものであり、個々の患者さんの予後を正確に予測するものではありません。同じステージ、同じ治療法であっても、年齢、全身状態、併存疾患、がんの遺伝子特性などによって予後は大きく異なります。

