16.前立腺がん

【2026年更新】前立腺がんでホルモン治療が効かなくなったら?その後の治療選択肢|新薬と治療計画を解説

分子標的薬カボザンチニブ

こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。

前立腺がんの治療では、まず副作用が比較的少ないホルモン療法が選択されることが多いです。

ゾラデックスやリュープリンといった薬を使った治療が中心となりますが、治療を続けているうちに、これらの薬が効かなくなってしまうことがあります。

この状態を「去勢抵抗性前立腺がん」といい、患者さんやご家族にとって大きな不安となる場面です。

しかし近年、治療選択肢は大きく広がっており、2014年以降に承認された新規ホルモン薬や抗がん剤、さらに2025年には新たな放射性医薬品も登場しています。

この記事では、ホルモン療法が効かなくなる要因と、その後の治療計画について、最新の情報を整理してお伝えします。


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ホルモン療法が効かなくなる理由

前立腺がんは、男性ホルモン(アンドロゲン)の刺激を受けて増殖する性質があります。そのため、ホルモン療法では男性ホルモンの分泌を抑えたり、前立腺内への取り込みを阻害したりすることで、がんの進行を抑えます。

ホルモン療法を開始した当初は、多くの前立腺がん細胞が男性ホルモンの低下によって弱っていきます。PSA値が下がり、症状が改善する患者さんも少なくありません。

しかし、前立腺がんの細胞には異なる性質を持つものが混在しています。ホルモン療法が効きやすいタイプの細胞もあれば、効きにくいタイプの細胞も存在します。

治療を続けているうちに、ホルモン療法が効きにくい細胞が生き残り、さらに性質を変化させて、男性ホルモンがほとんど存在しない状態(去勢状態)でも生き延びる力を獲得していくのです。

その結果、血液中の男性ホルモン値が非常に低いにもかかわらず、がん細胞が再び増殖を始めます。この状態が「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration-resistant prostate cancer)」です。

ホルモン療法の効果持続期間

初回のホルモン療法が効果を示す期間には個人差がありますが、平均的には2年から3年程度といわれています。

早い方では数ヶ月で効果が薄れるケースもあれば、10年近く効果が持続する方もいます。効果の持続期間は、がんの悪性度や広がり、患者さんの年齢、使用する薬剤の組み合わせなどによって変わってきます。

効果の判定には、腫瘍マーカーであるPSA値が重要な指標となります。PSA値が十分に下がっていれば治療効果があると判断されますが、値が上昇してきた場合は治療方針の見直しが必要です。


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去勢抵抗性前立腺がんの定義

医学的には、以下の条件を満たす状態を去勢抵抗性前立腺がんと定義しています。

  • 外科的または内科的な去勢療法が行われている
  • 血液中の男性ホルモン(血清テストステロン)値が50ng/dL未満と非常に低い
  • にもかかわらず、PSA値が上昇したり、病状が悪化したりしている

去勢抵抗性前立腺がんと診断された時点で、約8割の患者さんに他の臓器への転移が認められるといわれており、治療方針の決定には慎重な検討が必要です。

新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬による治療

去勢抵抗性前立腺がんに対して、2014年以降、複数の新規ホルモン薬が承認され、治療の選択肢が広がっています。

これらの薬剤は、従来のホルモン療法よりも強力に男性ホルモンの働きを抑える仕組みを持っており、去勢抵抗性前立腺がんに対しても効果を示すことが確認されています。

イクスタンジ(エンザルタミド)

2014年に承認された新しいタイプの抗アンドロゲン薬です。従来のカソデックスよりも優れた効果を示し、カソデックスが効かなくなった前立腺がんにも効果があることが報告されています。

アンドロゲン受容体への結合を阻害し、受容体の核内移行やDNAとの結合を妨げることで、がん細胞の増殖を抑えます。

1日1回160mgを内服する薬で、外来通院での治療が可能です。主な副作用として、高血圧、便秘、疲労感、食欲減少などが報告されています。

ザイティガ(アビラテロン酢酸エステル)

同じく2014年に承認された薬で、アンドロゲンの生成に関係する酵素(CYP17)を阻害する働きがあります。

精巣や副腎から分泌される男性ホルモンの合成を抑えることで、前立腺がんの進行を抑制します。

1日1回、空腹時に服用します。副腎皮質ホルモンであるプレドニゾロンとの併用が必須となっています。

アーリーダ(アパルタミド)

2019年に承認された薬剤で、イクスタンジとほぼ同様の作用機序を持つアンドロゲン受容体阻害薬です。

遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がんに対して使用されます。1日1回240mgを内服します。

ニュベクオ(ダロルタミド)

2020年に承認された薬剤で、アーリーダと同様に遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がんを適応としています。

1日2回、600mgずつ服用します。他の薬剤と比較して、一部の副作用が少ないという特徴があります。

薬剤名 一般名 承認年 投与方法 主な適応
イクスタンジ エンザルタミド 2014年 1日1回160mg内服 去勢抵抗性前立腺がん、遠隔転移を有する前立腺がん
ザイティガ アビラテロン酢酸エステル 2014年 1日1回内服(プレドニゾロン併用) 去勢抵抗性前立腺がん、内分泌療法未治療のハイリスク前立腺がん
アーリーダ アパルタミド 2019年 1日1回240mg内服 遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がん
ニュベクオ ダロルタミド 2020年 1日2回600mg内服 遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がん

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抗がん剤による治療

新規ホルモン薬が効かなくなった場合や、病状によっては抗がん剤による治療が選択されます。

ドセタキセル(タキソテール)

2008年に前立腺がんへの使用が承認された薬で、去勢抵抗性前立腺がんに対して最も早く有効性が確認された抗がん剤です。

微小管阻害薬と呼ばれるタイプの薬で、がん細胞の分裂に必要な微小管の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑えます。

3週から4週ごとに1回、点滴で投与します。投与量は体表面積あたり70mg/m²が標準的です。

海外の大規模臨床試験では、ドセタキセルを使用した群の生存期間中央値は19.2ヶ月で、対照群の16.3ヶ月と比べて延長が確認されています。

抗がん剤の中では副作用が比較的軽いとされていますが、好中球減少(白血球の一種が減少すること)、手足のしびれ、むくみ、疲労感、脱毛などが起こることがあります。

好中球が減少すると感染症にかかりやすくなるため、投与後約1週間後に白血球を増やす薬(G-CSF製剤)を使用することが一般的です。

カバジタキセル(ジェブタナ)

2014年に承認された薬で、ドセタキセルと同じタキサン系の抗がん剤です。

ドセタキセルによる治療後に効果が認められなくなった患者さんに対して使用できる薬剤として位置づけられています。

ドセタキセルと同様に3週から4週ごとに点滴で投与します。プレドニゾロンとの併用が必須です。

副作用としては、好中球減少が必発といわれており、発熱性好中球減少症のリスクが高いため、通常は投与翌日にペグフィルグラスチム(ジーラスタ)を投与して予防します。

その他、悪心、下痢、疲労感、肝機能障害などが報告されています。

骨転移に対する治療

前立腺がんは骨に転移しやすい性質があり、骨転移が起こると痛みや骨折のリスクが高まります。

ゾーフィゴ(塩化ラジウム-223)

骨転移があり、内臓転移がない去勢抵抗性前立腺がんの患者さんに対して使用される放射性医薬品です。

ラジウム-223はカルシウムと同じように骨に集まりやすい性質があり、骨転移部位に運ばれてアルファ線を放出し、がん細胞の増殖を抑えます。

4週間ごとに1回、静脈注射で投与し、最大6回まで治療を行います。

プルヴィクト(ルテチウムビピボチドテトラキセタン)

2025年11月に薬価収載された新しい放射性医薬品です。

PSMA(前立腺特異的膜抗原)陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに対して使用されます。

6週間間隔で最大6回、静脈内投与します。既存の治療に抵抗性を示す患者さんに対する新たな選択肢として注目されています。

PARP阻害薬による治療

がん遺伝子検査または遺伝子パネル検査でBRCA1またはBRCA2遺伝子変異が認められた転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者さんには、PARP阻害薬が使用できる場合があります。

PARP阻害薬は、がん細胞内のDNA修復に関わる酵素の働きを抑える薬で、特定の遺伝子変異を持つ患者さんに効果が期待されます。

治療の選択と計画

去勢抵抗性前立腺がんの治療では、どの薬剤をどの順番で使用するかが重要な課題となっています。

現時点では、これらの薬剤を直接比較した大規模な試験データがないため、どの薬が最も効果的か、どの順番で使うべきかという明確な答えは出ていません。

実際の治療では、以下のような要素を総合的に考慮して薬剤が選択されます。

  • 転移の有無と部位(骨転移、内臓転移など)
  • PSAの上昇速度
  • 症状の有無(痛みなど)
  • 患者さんの年齢と全身状態
  • 合併症の有無
  • 以前に使用した薬剤の治療歴
  • 副作用への耐性
  • 患者さんの希望と生活スタイル

最近の研究では、これらの薬剤の間に交差耐性(1種類の薬に耐性ができると、別の薬にも耐性を示すこと)があることがわかっており、2回目以降に使用する薬剤は効果が弱くなる傾向があります。

また、新規ホルモン薬を使用した後にドセタキセルを使用する場合と、ドセタキセル使用後に新規ホルモン薬を使用する場合とで、効果に差が出る可能性も指摘されています。

診断時にすでに転移が多い場合や悪性度が高い場合には、従来は去勢抵抗性になってから使用していたドセタキセルを、早期から併用する治療戦略も検討されるようになっています。

副作用への対応

どの治療薬にも副作用はつきものですが、適切な対策を取ることで、多くの副作用は軽減できます。

薬剤の種類 主な副作用 対策
新規ホルモン薬 高血圧、疲労感、便秘、食欲減少、ほてり 血圧管理、適度な運動、食事の工夫、十分な水分摂取
ドセタキセル 好中球減少、手足のしびれ、むくみ、脱毛 G-CSF製剤の使用、感染予防、適切な栄養管理
カバジタキセル 好中球減少、悪心、下痢、疲労感 ペグフィルグラスチムの予防投与、制吐剤の使用
ザイティガ 肝機能障害、高血圧、低カリウム血症 定期的な血液検査、血圧管理、必要に応じてカリウム補充

副作用が強く出た場合には、薬剤の減量や休薬、他の薬剤への変更などが検討されます。我慢せず、早めに医療スタッフに相談することが大切です。

治療費について

これらの薬剤は高額なものが多く、治療費の負担が心配になる方も多いでしょう。

日本では健康保険が適用されるため、窓口での自己負担は3割(または1割、2割)となります。さらに、高額療養費制度を利用することで、月々の医療費負担に上限が設けられます。

例えば、70歳未満で年収約370万円から約770万円の方の場合、月の自己負担上限額は約8万円程度となります(多数回該当の場合は約4万4千円)。

ドセタキセルの点滴は、1回あたりの薬剤費の自己負担が約3万円程度(3割負担の場合)ですが、高額療養費制度を利用することで実質的な負担を軽減できます。

新規ホルモン薬は内服薬ですが、1ヶ月の薬価が高額なため、高額療養費制度の活用が重要です。治療を開始する前に、医療ソーシャルワーカーや相談窓口で費用についても相談することをお勧めします。

治療を受ける際のポイント

去勢抵抗性前立腺がんの治療は、がんを完治させることは難しいものの、進行を抑え、症状を緩和し、生活の質を維持しながら、できるだけ長く生きることを目指します。

すでに痛みなどの症状がある場合には、治療によって症状の緩和やQOL(生活の質)の改善が期待できます。

一方、PSA値の上昇のみで症状がない場合には、治療の副作用によってかえってQOLが低下する可能性もあるため、治療のタイミングや方法について、主治医とよく話し合うことが重要です。

治療を受ける際は、最新の化学療法について知識と経験が豊富な医師のもとで、計画的に進めることが大切です。

担当医に以下のような点を確認しておくとよいでしょう。

  • 現在の病状と治療の目標
  • 推奨される治療法とその理由
  • 期待される効果と予想される副作用
  • 他にどのような治療選択肢があるか
  • 治療スケジュールと通院の頻度
  • 治療費用の概算
  • セカンドオピニオンの可能性

また、治療中は定期的な検査でPSA値や画像検査の結果を確認し、治療効果を評価していきます。効果が不十分な場合や副作用が強い場合には、治療方針の見直しを検討します。

今後の展望

前立腺がんの治療は日々進歩しており、新しい薬剤や治療法の開発が続いています。

免疫チェックポイント阻害薬、PARP阻害薬、新たな放射性医薬品など、次々と新しい治療選択肢が登場しています。

また、遺伝子検査に基づいた個別化医療も進んでおり、患者さんごとに最適な治療を選択できる時代が近づいています。

2014年頃までは「ホルモン療法が効かなくなったら抗がん剤(ドセタキセル)しか選択肢がない」という状況でしたが、現在では複数の薬剤を組み合わせながら、長期にわたって治療を継続できるようになっています。

最新の治療情報を把握し、適切なタイミングで適切な治療を受けることが、より良い治療成績につながります。

参考文献・出典情報

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん 治療」
    https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/treatment.html
  2. 四国がんセンター「去勢抵抗性(ホルモン抵抗性)前立腺がんの治療について」
    https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/learn/results25/zenritusen/hormone/
  3. バイエル薬品「去勢抵抗性前立腺がん・病態と治療の解説」
    https://betterl.bayer.jp/zenritsusengan/know/crpc/pathological_treatment
  4. 日経メディカル「PSMA陽性の転移性去勢抵抗性前立腺癌に新たな放射性医薬品」2025年12月
    https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/202512/591215.html
  5. 順天堂大学医学部附属順天堂医院 泌尿器科「前立腺がんの薬物療法」
    https://juntendo-urology.jp/treatment/pharmacotherapy/
  6. 日経メディカル処方薬事典「イクスタンジ錠の基本情報」2026年1月更新
    https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/42/4291031F1025.html
  7. 看護roo!「カバジタキセル療法(化学療法のポイント)/前立腺がん」
    https://www.kango-roo.com/learning/4129/
  8. 江戸川病院 泌尿器科「去勢抵抗性前立腺癌」
    https://www.edogawa.or.jp/診療科・部門/泌尿器科/主な疾患と治療方法/去勢抵抗性前立腺癌
  9. What's? 前立腺がん「CRPC(去勢抵抗性前立腺がん)とは」
    https://www.zenritsusen.jp/about/crpc/
  10. 新薬情報オンライン「イクスタンジ(エンザルタミド)の作用機序と副作用【前立腺がん】」2025年11月更新
    https://passmed.co.jp/di/archives/117

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本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

「腰がすこし痛むだけで、再発か?転移か?と不安で一睡もできなくなる」

「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

こんな苦しみに溢れています。

年齢を重ねると、たとえ健康であっても、つらいことはたくさんありますよね。

それに加えて「がん」は私たちから、家族との時間や、積み重ねたキャリア、将来の夢や希望を奪おうとするのです。

なんと理不尽で、容赦のないことでしょうか。

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