ステージ4、あるいは再発子宮頸がんの治療方針
ステージ4、あるいは再発となると局所的な治療法である手術や放射線治療は適応する治療法とはいえません。
いわゆる「がんを殲滅する」ような根治的な治療はできず、症状の緩和やQOL(生活の質)の向上を目指す場合が多いのが現状です。
治療をするならTP療法、TC療法などの化学療法(抗がん剤治療)
手術や放射線が適応とならないステージ4や再発転移の子宮頸がん。おのずと選択肢は化学療法(抗がん剤治療)のみとなります。
1980年代頃からずっと行われてきたのがシスプラチンという薬を使う方法です。
1990年代に入ってからは卵巣がんでも有効だった「シスプラチン+タキソール併用治療(TP療法)」が行われるようになりました。
シスプラチン単独よりも効果が高いことが臨床試験などで認められ、以後は子宮頸がんにおいて標準治療となりました。
しかしTP療法のシスプラチンは、腎毒性や消化器毒性が強く副作用の症状が厳しいという特徴があります。
そのため治療が継続できず途中で治療を止めてしまうケースが頻発しました。
そこでシスプラチンの代わりに、同じプラチナ製剤のカルボプラチンを使う治療法(TC療法)が試みられるようになりました。現在ではこのTC療法もよく用いられる治療法の1つです。
カルボプラチンはシスプラチンよりも腎毒性が低いため腎臓に大きな負担がかからず、通院での治療もできます。
とはいえ別の副作用があり、手足がしびれる神経毒性が強く出ます。
TPとTCではどちらが効果があるのか?
TP療法とTC療法の比較試験ではTC療法の有効性が裏付けられています。
そのため2016年時点ではTC療法が第一選択、場合によってはTP療法も活用するというのが標準的な治療です。
分子標的薬のアバスチンを追加する方法も
アバスチンは2013年に卵巣がんで適応になった分子標的薬です。
毒性をもってがん細胞を殺す「抗がん剤」ではなく、アバスチンは「血管新生阻害薬」に分類され、がん細胞への栄養補給を遮断する作用によりがんを抑制します。
進行再発子宮頸がんの患者を対象に、抗がん薬とアバスチンを併用した場合の比較試験が行われた結果、アバスチンを追加したケースでOS中央値17.0カ月、PFS中央値8.2カ月、RR48%となり、すべての項目で「抗がん剤のみ」よりも効果が高いことが報告されました。
アバスチンの追加には副作用と治療費に課題も
抗がん剤にも副作用があるように、分子標的薬であるアバスチンにも副作用があります。
併用すると使った薬の分だけ副作用も増えるため、アバスチンを追加することで副作用も追加されてしまいます。
アバスチンの副作用として挙げられるのが出血、血栓塞栓症、消化管瘻(消化管に穴が開くこと)、泌尿生殖器瘻などです。
これらの症状は1%前後と稀ですが尿管や膀胱に孔があく副作用が臨床試験時には10.6%程度あり、アバスチンを使わなかった群よりも5倍近く多かったという報告があります。
ステージ4あるいは再発子宮頸がんの患者さんは、すでに放射線治療や抗がん剤治療を受けている場合が多いため、ダメージを負っている人がほとんどです。
アバスチンの副作用で尿管の瘻孔(孔があくこと)が生じると尿漏れを起こしてしまうことになり、生活上に大きな影響を与えます。
さらには治療費の問題もあります。
分子標的薬はいずれも高額ですが、アバスチンも高額です。
患者さんの負担が大きいだけでなく国の医療費も膨大になります。社会的負担とのバランスを考慮し、この治療が本当に必要な患者さんに提供されるよう、慎重に対応していくべきだといわれています。
このほかの化学療法については、TS-1+シスプラチンの併用療法や、アクプラ+トポテシンの併用療法などが、有効な治療法となる可能性があります。
以上、ステージ4および再発子宮頸がんについての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。