
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
四国地方でサイバーナイフやトモセラピーといった高精度放射線治療を検討されている患者さんから、「どこで受けられるのか」「どのような違いがあるのか」といったご相談を多くいただきます。
高精度放射線治療は、がん細胞に集中的に放射線を照射し、周囲の正常組織へのダメージを最小限に抑えることができる治療法です。四国地方では治療を受けられる施設が限られているため、事前に施設の情報を把握しておくことが重要です。
サイバーナイフとは
サイバーナイフは、ロボットアームを用いた定位放射線治療装置です。巡航ミサイルの追尾システムを応用した技術により、腫瘍の位置を0.1mm単位で追跡しながら、多方向から放射線を集中照射します。
治療中に患者さんの呼吸などで腫瘍が動いても、リアルタイムで位置を補正しながら照射できることが大きな特徴です。従来のガンマナイフのように頭蓋骨にネジを固定する必要がなく、プラスチック製のマスクでの固定で済むため、患者さんの負担が軽減されます。
治療時間は1回あたり30分から1時間程度で、通常は1日から5日間程度で治療が完了します。通院での治療が可能なため、日常生活を続けながら治療を受けられます。
トモセラピーとは
トモセラピーは、CT装置と放射線治療装置を一体化させた強度変調放射線治療(IMRT)専用装置です。CT検査のようにベッドがスライドしながら、放射線が360度回転して照射されます。
腫瘍の形状に合わせて放射線の強度を細かく調整しながら照射できるため、複雑な形状のがんや、広範囲に及ぶ病変にも対応可能です。治療直前にCT撮影を行い、腫瘍の位置を確認してから照射するため、高い精度での治療が実現できます。
1回の治療で複数の病巣に同時に照射することもできるため、転移が複数ある場合にも有効です。治療時間は1回あたり15分から30分程度で、多くの場合、通院での治療が可能です。
四国でサイバーナイフが受けられる病院
四国地方では、現在のところ愛媛県の1施設のみでサイバーナイフ治療が実施可能です。
済生会今治病院(愛媛県)
所在地:愛媛県今治市喜田村7丁目1-6
済生会今治病院では、2002年にサイバーナイフ棟を増築し、2004年4月から治療を開始しました。2017年2月には最新型の定位放射線治療装置サイバーナイフへと更新され、より高精度な治療が可能となっています。
当初は脳神経外科を中心とした脳腫瘍や頭頸部がんの治療が主でしたが、現在では体幹部の治療にも対応しており、前立腺がんや脊椎腫瘍、肺がん、肝臓がんなど、幅広いがん種に対して治療を実施しています。
対象となる主な疾患は以下の通りです。
| 部位 | 対象疾患 |
|---|---|
| 頭蓋内 | 髄膜腫、下垂体腺腫、聴神経鞘腫、転移性脳腫瘍、悪性神経膠腫、脳動静脈奇形 |
| 頭頸部 | 耳鼻科領域腫瘍、口腔外科領域腫瘍、眼科領域腫瘍、頸部リンパ節転移 |
| 脊椎 | 原発性脊髄・脊椎腫瘍、転移性脊椎腫瘍、脊椎近傍腫瘍、脊髄動静脈奇形 |
| 体幹部 | 肺がん、肝臓がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん |
治療は基本的に外来通院で行われます。治療計画の作成に1週間程度を要し、実際の治療期間は病状により1日から5日間程度です。
四国でトモセラピーが受けられる病院
四国地方では、香川県の1施設のみでトモセラピー治療が実施可能です。
滝宮総合病院(香川県)
所在地:香川県綾歌郡綾川町滝宮486番地
滝宮総合病院では、2012年9月にトモセラピー(TomoHDシステム)を導入しました。四国地方では唯一のトモセラピー設置施設として、地域のがん放射線治療の拠点となっています。
トモセラピーの対象部位は、頭頸部から体幹部まで、ほぼ全てのがんとされています。特に前立腺がんを最も良い適応疾患としており、乳がんの術後照射や多発転移に対しての照射実績があります。
トモセラピーは大きく複雑な形状の病変に対しても精密な照射が可能なため、以下のような症例に対して効果を発揮します。
- 前立腺がん
- 乳がん術後照射
- 頭頸部がん
- 食道がん
- 肺がん
- 肝臓がん
- 膵臓がん
- 直腸がん術後再発
- 多発転移病巣
治療は通院で受けることができ、患者さんの状況に応じて入院での対応も可能です。
サイバーナイフとトモセラピーの使い分け
サイバーナイフとトモセラピーは、どちらも体の外から放射線を照射してがんを治療する装置ですが、それぞれに得意とする領域があります。
| 項目 | サイバーナイフ | トモセラピー |
|---|---|---|
| 得意な病変 | 直径5cm以下の小さな病変 | 大きく複雑な形状の病変 |
| 照射方法 | 極細ビームで狙い撃ち | 360度回転しながら照射 |
| 治療回数 | 1〜5回程度 | 数週間にわたることもある |
| 1回の治療時間 | 30分〜1時間 | 15分〜30分 |
| 適した部位 | 脳腫瘍、転移性脳腫瘍、小さな肺がん・肝臓がん | 前立腺がん、乳がん術後、広範囲の照射が必要な病変 |
例えば、乳がん手術後の再発予防のための照射では、乳房全体という広い範囲に照射が必要なため、トモセラピーが適しています。一方、1cm程度の転移性脳腫瘍であれば、サイバーナイフで1回の治療で完結できます。
四国における重粒子線治療・陽子線治療の状況
重粒子線治療や陽子線治療は、粒子線と呼ばれる特殊な放射線を使用する治療法です。体の表面近くでは弱いエネルギーで入り、腫瘍の位置で急激にエネルギーを放出する「ブラッグピーク」という特性を持っています。
この特性により、がん病巣に高線量を集中させながら、がんの奥にある正常組織への影響を最小限に抑えることができます。
しかし現在、四国地方には重粒子線治療施設も陽子線治療施設も存在しません。これらの治療を希望される場合は、四国外の施設を受診する必要があります。
中四国地方で最も近い陽子線治療施設
四国から最も近い陽子線治療施設は、岡山県津山市にある岡山大学・津山中央病院共同運用がん陽子線治療センターです。
所在地:岡山県津山市川崎1756番地
2016年4月より治療を開始した中四国地方初の陽子線治療施設で、総合病院内に設置されているため、がん以外の疾患への対応も可能です。
主な対象疾患:
- 小児腫瘍
- 脳腫瘍
- 前立腺がん
- 頭頸部がん
- 肝がん
- 早期肺がん、局所進行肺がん
- 胆管がん
- 膵がん
- 食道がん
- 直腸がん術後局所再発
- 肺転移、肝臓転移、リンパ節転移(単発性)
治療費については、小児腫瘍、頭頸部がんの一部、骨軟部腫瘍の一部、前立腺がんは保険診療が適用されます。その他の疾患については先進医療として、陽子線治療の技術料288.3万円が自己負担となりますが、その他の入院・薬剤・検査等には保険が適用されます。
重粒子線治療が可能な施設
四国から比較的近い重粒子線治療施設としては、以下があります。
- 兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市):重粒子線・陽子線の両方に対応
- 大阪重粒子線センター(大阪府大阪市):重粒子線治療専門
- QST病院(千葉県千葉市):国内最大規模の重粒子線治療施設
これらの施設では、骨軟部腫瘍や頭頸部がんなど、重粒子線治療が効果的とされる特定のがんに対して治療を行っています。
高精度放射線治療の費用について
高精度放射線治療の費用は、治療法や疾患により異なります。
サイバーナイフ
サイバーナイフ治療は保険適用の治療です。保険で認められている疾患をピンポイント照射で治療する場合、照射回数や期間に関わらず、3割負担で約19万円となります。
保険適用となる主な疾患:
- 原発性肺がん、肝がん、腎がん(直径5cm以下、転移なし)
- 転移性肺がん、肝がん(3個以内)
- 限局性前立腺がん、膵がん
- 転移性脊椎腫瘍(直径5cm以下)
- 5個以内の転移病変
- 脊髄動静脈奇形
高額療養費制度を利用すると、所得に応じてさらに自己負担を軽減できます。また、限度額適用認定証を事前に申請しておくことで、窓口での支払いを軽減することも可能です。
トモセラピー
トモセラピーも2010年に保険適用となっています。治療する部位や回数によって費用は変動しますが、多くの場合、保険診療の範囲内で治療を受けることができます。
前立腺がんの標準的な治療では、3割負担で30万円から50万円程度が目安となります。ただし、転移したがんへの照射など、治療の内容によっては保険適用外となる場合もありますので、事前に医療機関に確認することをお勧めします。
陽子線治療
陽子線治療の費用は、保険診療か先進医療かによって大きく異なります。
保険診療(小児腫瘍、前立腺がん、頭頸部がんの一部、骨軟部腫瘍の一部)の場合、通常の放射線治療と同様の負担となります。
先進医療の場合、陽子線治療の技術料として約288万円の自己負担が必要です(津山中央病院の場合)。その他の入院費、薬剤費、検査費などには保険が適用されます。
重粒子線治療
重粒子線治療も陽子線治療と同様、保険診療と先進医療があります。先進医療の場合、治療費として約288万円の自己負担が必要となります。
放射線治療施設を選ぶ際のポイント
高精度放射線治療を受ける施設を選ぶ際には、以下の点を考慮することが重要です。
1. 治療機器の性能
サイバーナイフ、トモセラピー、ノバリスなど、高性能な放射線治療機器を備えているかを確認します。これらの装置があれば、機器の性能という点では心配ありません。
2. 放射線治療医の経験と技術
放射線治療の成功は、治療計画を立てる医師の技量に大きく依存します。経験豊富な放射線治療専門医が在籍し、個々の患者さんの状態に応じた最適な治療計画を立てられる施設を選ぶことが大切です。
3. 対象疾患と治療実績
自分のがんの種類や病期に対する治療実績が豊富な施設を選びます。施設によって得意とする疾患が異なるため、事前に確認しておきましょう。
4. アクセスと通院の利便性
放射線治療は複数回の通院が必要な場合が多いため、自宅からのアクセスや交通手段を考慮する必要があります。遠方の場合は、入院での治療が可能かどうかも確認しておきましょう。
5. 総合的な治療体制
放射線治療だけでなく、手術や薬物療法など、他の治療法と組み合わせた集学的治療が必要になる場合もあります。総合病院など、様々な診療科が連携できる施設であれば、状況の変化にも柔軟に対応できます。
四国から他県の施設を受診する場合の注意点
四国地方には重粒子線治療や陽子線治療の施設がないため、これらの治療を希望する場合は他県の施設を受診することになります。
紹介状の準備
ほとんどの高度医療施設では、かかりつけ医や現在の主治医からの紹介状が必要です。紹介状には、診断内容、これまでの治療経過、画像データ(CT、MRI、PETなど)、血液検査データなどを添付してもらいます。
宿泊施設の確保
遠方の施設で治療を受ける場合、治療期間中の宿泊施設を確保する必要があります。病院によっては患者さん用の宿泊施設を備えている場合もあるので、事前に相談してみましょう。
治療後のフォローアップ
治療後の経過観察をどこで行うかについても、事前に確認しておくことが重要です。治療施設で行う場合と、地元の医療機関で行う場合があります。
放射線治療と他の治療法の組み合わせ
がん治療では、手術、化学療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療が行われることが一般的です。
放射線治療は、以下のような場面で活用されます。
- 手術前治療:腫瘍を縮小させてから手術を行う
- 手術後治療:残存した可能性のあるがん細胞を死滅させる
- 化学療法との併用:放射線治療の効果を高める
- 緩和治療:痛みなどの症状を和らげる
- 根治治療:手術が困難な場合の主治療として
主治医とよく相談し、自分のがんの状態に最も適した治療法を選択することが大切です。
まとめ
四国地方での高精度放射線治療は、愛媛県の済生会今治病院(サイバーナイフ)と香川県の滝宮総合病院(トモセラピー)の2施設で受けることができます。
重粒子線治療や陽子線治療を希望される場合は、岡山県の津山中央病院や兵庫県、大阪府などの施設を受診する必要があります。
治療法や施設を選ぶ際は、がんの種類、病期、全身状態、通院の利便性、費用など、様々な要素を総合的に考慮することが重要です。まずは現在の主治医に相談し、必要に応じて放射線治療専門医のセカンドオピニオンを検討しましょう。

