がんの死亡者数の中で最も多いのは肺がんですが、次いで多いのが胃がんです。
2010年の数字では、肺がん死亡者数は6万9813人、胃がんは5万136人です。昔から世界的にみると日本人には胃がん患者が多いということが特徴で、罹患者数は2006年の数字で胃がんが11万6911人、次いで大腸がんが10万7815人、3番目にくるのが肺がんで8万5477人です。
肺がんの場合、82%の人が肺がんがもとで亡くなっていますが、胃がんではそれは43%と少なくなります。胃がんで亡くなる人が肺がんより少ないのは最近の「がん対策」の傾向からみてとれます。
つまり、胃がんの罹患者数が未だに多いのは、高齢化社会が進んでいるからであり、それにもかかわらず死亡者数が着実に減少してきているのは「早期発見、早期治療」が行われているからだといえます。加えて、胃がんの一因となっているヘリコバクターピロリ菌の感染者が、若い人の間では激減しているため、死亡者は今後もっと減るだろうと予想できます。
さて、このピロリ菌というのは、胃の出口である幽門側に住みついて粘膜に炎症を起こし、胃潰瘍の原因となるばかりか、胃がんの主要原因なる菌です。日本人の60歳以上だけをみると、80%がピロリ菌に感染し、全人口でみると感染者は50%となっています。
ただし、10代では10%以下、20代でも10%台とピロリ菌感染者は急激に減少しています。その結果、胃がんが減少することのほかに、胃がんの発生する場所にも変化が生じてくるようになりました。
今はピロリ菌のいる幽門側にがんができやすいといえますが、ピロリ菌感染がないと、食道と胃の接合部にできやすくなり、がんの発生状況はより欧米型に近くなります。これはピロリ菌がいないことで胃の健康度がアップし、胃の酸度がアップするからです。
つまり、逆流性食道炎、もしくはそれに近い状態の人が増えてくると予想され、実際にそのような傾向がみられます。逆流性食道炎は数年前まで耳慣れない病気でしたが、TVのコマーシャルでも言葉が出てくるようになりました。
だからといって、ピロリ菌の除菌に待ったをかけるものではなく、ピロリ菌が陽性の人はしっかり除菌したほうがよいといえます。除菌は現状の胃がんを30%抑制することが分かっているからです。
以上、胃がんに関するお話でした。